ストーリーパールヴァティ

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だれでも歓迎! 編集
無から生まれ行くのならば、私の大地は何処へと続いているのだろう……。
放浪の旅、幾つも見続けた滴りは、儚さを持って悠遠を悟る。

ふと見えた妖艶である甘美な果実は、樹から生まれ大地へと落ちる。
そう、全ては万有引力。
雄大である物ではなく、私の想像を凌駕する程の、圧倒的なグラビティ……。
膨大な音を発して空を描く、通り過ぎる情景は大地だけでは無いのだと知る。

ならば、今居るこの場所こそが、唯一見える透明の闇との対極。

妄想より生まれし物語を記憶する場所……
甘美な暗黒に飲み込まれないようにな……ククク……。

第三の使徒:パールヴァティ ◆oG81KKLCao

+ ...
  • あやめ序章
舞台は地方都市
あやめと癒衣は友人たちと地味だけども
充実した中学生活を満喫していた

7月 隣町の駅前広場で若い女の遺体が見つかる
遺体は顔を剥がされており、猟奇殺人として警察は捜査を始める

翌週、あやめの友人の祖母が同様の手口で殺害されていたのが発見される

連続殺人が発生した時期
それは、「ベニイロカガミとアシオトおばけ」という
ある都市伝説が蔓延し始めた頃と一致した事に癒衣は気づくも
友人らは関連は薄いという

事件から数日後
誰もが普通の生活に戻りつつあった

明日から夏休みだというのに宿題を校舎に忘れてきたので
取りに行くというあやめに付き合う癒衣

薄暗い夕方の校舎の廊下を歩いていく
曲がり角を曲がっても曲がっても教室に着かない
そのうちに、本当にここは自分たちの学び舎なのかという錯覚に陥る

体感時間に反し、一向に暗くならない外の景色
いくら夏だからといってこれはおかしいのではないだろうか
癒衣と違って体力のないあやめが駄々をこね、
諦めて友人に宿題を見せてもらおうと携帯を取り出す

デジタル時計は、正門から入った時間から動いていなかった

瞳に涙を浮かべるあやめ
寡黙な癒衣も泣きたいような気分だった

自分たちの住む場所ではない世界
ふと、ベニイロカガミの事を思い出す

「自分の産まれた時刻に一人で鏡の前に立つ」
「すると、運命の人や自分の死に顔が浮かぶ」
そういったありふれたゴシップ

だが、ベニイロカガミはもっとおぞましい、違う真実があるのではないか
下駄箱付近の大鏡、そもそもはあそこから違和感を感じていた

ぐずるあやめをおぶさり、下駄箱へ引き返す
だが、一向に廊下から抜けることができない

鏡な階段の踊り場にもあったはずだというあやめ
彼女をおいて、言われた通りなんとか階段を見つけて鏡の前に立つ

鏡は鮮血のように真っ赤に染まっていた
-汝ら 罪なし ようこそ-

浮かんだ意味深な言葉に癒衣は身震いした
その恐怖をかき消し、耳をつんざくような悲鳴 あやめのものだ
癒衣はあやめの名を叫び、彼女の元へ向かう

死んだはずの、友人の祖母がいた
顔の部分が鏡のようになっていた
老婆の顔は、あやめを写し続けた

足元がおぼつかない老婆
徐々に腰の抜けたあやめへと歩を進めていく

歯の根ががちがち震えるのを感じた
こいつは「危険」だ、と
考えるより先に癒衣の鍛えられた脚はあやめを目指した
老婆がこちらに反応し、何らかのアクションをとるより早く
癒衣の腕はあやめを抱きかかえた

あやめを抱いたまま、ガムシャラに走り続ける癒衣
「顔は無かったけど、あれはばーちゃんだよ」
そうだな、と相槌を返してやる

4回曲がったところで、新たな人影を見つけた
癒衣も話したことのある、新米の警備会社の人間だ
あやめは歓喜の声を上げるも、癒衣は警戒を解かない
「オレがいない オレがうつってない オレはどこどこ」

虚ろな眼でぶつぶつ呟く男
そもそも、こんな世界にいる事自体が不可解だ
「下がっていろ」
癒衣があやめにそう言おうとした瞬間
男は癒衣の傍に既に立っていた かっと見開いた目で癒衣をにらみつけた
後ずさるよりも早く、男は癒衣の腹を殴りつける
うずくまる癒衣を更に蹴りを入れる

壁に強く叩きつけられる癒衣 痛みと恐怖で混濁する意識の中、癒衣は叫んだ
「逃げてくれ」

癒衣を殴った男の手首は折れていた
くにゃくにゃしているのをあやめは見た

後方にはあの老婆がいる
最寄の教室を見つけ、ドアのガラスを携帯で力任せに叩き割るあやめ
教室に入る際、ガラスの残りが彼女の腹や肩を少し切った

社会科資料室
入り口には机やイスでバリケードを作り、あやめ本人は準備室へ隠れる
あの異形の二人に通づるわけがないと思っていたが
何かしていないと不安で押しつぶされそうだった
癒衣を見捨てたか弱い自分がいやになる

準備室にも鏡はあった
やはり真っ赤に染まっていた

物音一つしない中、あやめは聞いた
バリケードが破られた 机が床に落下し、大きな音を立てた
資料室に通じるドアから部屋覗こうとしたその時
ドアは勢いよく開け放たれた ばきりと金具ごとドアははぎ取られた

頭部と左肩、左腕が赤黒く異様に膨れた、さっきの男が立っていた
ぶつぶつと独り言をしゃべる男を前にするあやめの股からは小水が染みていた

男は肥大化した左腕であやめを横から殴りつけた
小柄な体が吹き飛び、金属の棚にぶつかった
棚に並んだ歴史ファイルをばら撒いた

ぎしぎしと背骨が音を立てて軋むのを聞いた
げほっと喀血し、痙攣する体に恐怖を覚えるあやめ

人間の死については小説や歴史の授業
それと、ゲームやマンガであやめは知っていた
自分には、あと80年近く経たないと訪れないだろう

そう思っていた
しかし、身近に迫る死にあやめは恐怖した
「ゆるして、ゆるして」
ひゅう、ひゅう と喉の奥から息が吹き抜けただけだった
いよいよ迫る自分の機能停止に意識が朦朧とする

緊張し、グッと手を握るも、掌に痛みが走る
掌には、さっき殴られた際に砕けた鏡の欠片があった
血だらけになった鏡の欠片は、さっきのようなベニイロカガミのように
赤黒くなっていなかった

それに移る蒼白い自分の顔が口を開く
「おわりにしますか つづけますか」
まるでゲームのような語りかけだった 
「おわり」というのはこのままあの男にくびり殺される事だろう

あやめにとっても死ぬ事は不本意であった
声の出ない口から、あやめは鏡に返した 「つづけます」

鏡の中のあやめは消え、代わりにメッセージが現れた
ようこそ ようこそ ようこそ ようこそ ようこそ
日本語のほかに、あやめの知らない言語で「ようこそ」が綴られていく

見知らぬ文字で埋め尽くされる鏡
最初の「ようこそ」は既に隠れてしまった
鉄の味をかみ締めながら鏡を見守るあやめは
男が既に腕を振り上げていることに気づくのが遅れた

あの丸太のような腕 もう一度殴られたら死ぬだろうな

グッと鏡を握り、寸前で授業の柔道で習った受身をとる
あの一撃はかわせたものの背中と肺に激痛が走り、再び喀血するあやめ
掌の皮もめくれて血が吹き出る

息が整わない
男が再び腕を振りあげた

鏡は、と 掌を見る
たくさんの文字の真ん中に、一つだけ白く輝く文字列があった
知らない言葉の一単語なのだとあやめは思った
そして、それを口にする

「ブリュンヒルデ」

鏡から白く眩い光があふれ、薄暗い資料室を照らした
男はよろめき、巨大な腕でバランスを崩して膝をついた

ブリュンヒルデ その女神はあやめの前に跪いていた
頭部をカブトで覆い、白の布やレース、リボンをはためかせていた
カブトの隙間から、ブルーに輝く瞳が見えた

細身の体を起こし、男を見据えて腰の剣を抜くブリュンヒルデ
彼女を見るあやめの体から痛みは消えていた

男は体を震わせ、バイクのエンジン音のような声で咆哮した
ミシミシと身体の容量が増加しているように見えた

頭髪は抜け落ち、上半身の筋肉が盛り上がっていく
眼球は落ち鼻はもげ、口は歪んで歯が抜ける
あの老婆の顔と同じように、鏡のノッペラボウのようになった

もう、ばけものだ
あやめは男の変異を見て、出掛けに食べた大福を吐きもどした

倍ほどにも膨れた腕を振りかざし、突進する男のばけもの
ブリュンヒルデは剣を下段に構え、スッと左前方に踏み込んだ

ばけものの左腕、肘から先が斬り飛ばされた
血の噴水を振りかざし、痛みに震えるそいつの背中を蹴飛ばす
か細い体躯からは考えられないほどに重い蹴りだった

蹲るばけものの膨れた左肩の皮を引き裂き、無数の触手が顔を現す
ブリュンヒルデは強く踏み込み、一気に距離をつめる
迫る触手を次々斬り伏せ、ばけものの背に剣を突き立てる
刃を腕近くから腰まで押し込むと、おびただしい量の血がべしゃりとカブトを汚した

ばけものは動かなくなった
血のりの着いた剣を白の腰布で拭き、鞘に収める

ブリュンヒルデはあやめの前に再び跪いた
『わたくしはそなたの鏡像 わたくしを用い、そなたの願いを遺せ』
そんな言葉が頭に響いた

鏡が再び強い光を放ち思わずあやめは目を覆った
また何か起こるのか そう思って目を開く

いつもの教室だった
風を受けてなびくカーテン、夕陽の差し込む教室
夏休み、と大きくカラフルにらくがきされた黒板
あやめは自分の席に座っていた 開け放されたドアの廊下側で
腹を押さえた癒衣が立ち尽くしていた
+ ...
  • あやめ終盤、癒衣vs祷子
暑くもなく、寒くもない気候
冷たくも、熱くもない。手に触れる鉄の質感

そして、鼻を突く血と錆のにおい
周りを覆う樹木の香りは、それらにかき消されている
樹木は、癒衣を不快へと誘うシチュエーションの一つとなっている

ワイシャツに匂いがついてしまわないだろうか、明日も学校があるのに
何度目の突入かな。この不可解さ、この灰色の空は未だに慣れない
自らの鏡像・剛毅なる英雄が自分にはついているとしても

胸クソ悪いな、と悪態をつき、癒衣はつばを吐いた

錆びた鉄板に唾液が付着し、てらてらと光る
鉄板には「新河山製鉄所」の文字が、鏡写しのように裏返って書かれていた


鏡面世界

ベニイロカガミの向こう側、無機質にして静寂なるサカサマの世界
鏡像を発現させた者のみが入ることを許される、怪異の園

こんな状況、考えても今更という気がするな。
鏡の中でモンスターと戦う。ファンタジーやメルヘンでもあるまいし、不条理すぎる
何千何万と繰り返してきた問答。無論、答えはこの癒衣の状況そのものである


再び五感を研ぎ澄ませ、「敵」の存在を探る
香澄を殺し、アリッサやあやめを傷つけた「敵」
そいつの事を考えると、自然と頭がクリアになる。単純思考にシフトするからか

考えを指先に集中させ、「魔法の杖」を展開させる
「敵」を撃ち貫く、ただそれだけ
癒衣の考えを読み取るように、「ジークフリート」の兜から覗く蒼の瞳が強く輝く
「Standing by」
機械音のように冷たい声が発せられると同時に、一瞬癒衣の掌を光の粒子が包んだ

癒衣の大きな手には若干小さめだろうか彼女の「杖」が姿を現した

あやめと一緒にプレイしたホラーゲームの主人公が使用していた拳銃
ブローニング・ハイパワーを模している自らの「杖」
スライドを引き、「杖」をコッキングの状態へ持っていく。…殺す準備が整った

スマートな外見とは裏腹に、十分な殺傷性能を持つ癒衣の「杖」
ミリタリー関連に強い興味を持つ彼女ならではのものと言えよう

鏡像を展開してから、まだ15分。元々寡黙で頭の回転が早い癒衣だが、鏡像の効果による
思考の新皮質へのシフトにより、より的確に「敵」を迎撃できるだろう

来るなら来てみろ
「杖」を下段に構え、工場の裏手へ向かう。
気に入ってくれるのは嬉しいがこういうとき邪魔なんだ、と あやめに豊満な胸を撫でられた事を思い出す

敷地は全周200メートル。製鉄場内部へは「表の世界」で施錠されているため、入ることは不可能
だが、この付近に「敵」がいるのは間違いないのだ

かつて製鉄場に電力を供給していた送電施設がどこかにあったはずだ
幼少時に探検しに来た記憶を頼りに歩を進めていく
送電施設は製鉄場の北西にあり、「施設」とは名ばかりの小さなモルタル建造物である

あやめと共に、真夜中にここへ忍び込んで声優のラジオを聴いたり、携帯ゲームで対戦したりした
裏手口は施錠されていたが、小学生くらいの子供ならば容易に進入できる穴が
藪に隠されて口をあけていたので、一角は2人の寝床となっていた
どこからか拾ってきたタタミやポルノ雑誌、一日中山を駆けずり回って集めたものの
虫取りアミの中でツクダニ状態になってしまったトンボを詰め込んだビン
見れば、あやめとの思い出ばかりである

母親がいないことを父に問い詰め、つい過ぎたことを言ってしまいこっぴどく叱られたときにも
私にはあやめがいてくれたんだなあ。
少ない小遣いで駄菓子を買い集めて菓子折りを作り、父に一緒に謝りにいった
私も泣いたし父も泣いた。あやめも一緒にワンワン泣いた
あの頃から既に、私は「依存」していたんだろうか

「敵」の言った一言
「あのチビの事なんて考えちゃあいない、あんたが依存してるだけなんじゃないのか」
今まで考えたこともなかった。もしかしたら、あやめは内では私のことをウザいと感じていたのかもしれない
人間の心理は、海よりも深いのだから

だが、迷ってもいられなかった。あの神社で見せた狂気は、どのゴーストよりも強いものだった
人間とは思えないほどに
奴を泳がせておいてはいけない、奴のエゴを増大させ、好き勝手にさせるわけにはいかないのだ


送電施設を覆うブロック塀には、あの時の穴がまだ残っていた
ジークフリートは塀の上に備え付けられた鉄条網を引きちぎり、癒衣の道を作る

胸騒ぎが大きくなる
塀から内側へ飛び降りると、心の臓の鼓動が高鳴るのを感じた
いる、いるぞ。ここにいる

施設の窓ガラスは割れているものが殆どで、どこかから奴が見ているとさえ思える
どこ、どこだ。どこにいる

「ここだよ」

声の方向に反射的に銃口を向け、発砲した
ばちんと音がし、そいつは前方へ吹っ飛んだ

「It doesn't kill.」

相棒の無機質な声。あんなもので仕留めきれるとは思っていないさ

「頭に当てるなんて、何てことしてくれるのよ」

癒衣の右斜め後方、そいつは再び現れた

「お姉さまに合わせるこの顔に傷が付いたらどうするの、狂ってるわ、イカれてるわね」

「あんたほどイカれちゃあいないさ、湊祷子」

「どうかしらね」

「ドタマに鉛を叩き込んでもイカれない人間は狂っていないのかい」
あんたの方が、人間離れしてるよ、湊祷子

真新しい絹のように白い肌。湊祷子は聡明な顔を癒衣に向ける

「わざわざこんな所まで来るなんて。あんたのお友達にもってかれた右ヒジがやっと治ってきたのに」

左手でアピールするように摩ってみせる。瞬間、肉と皮でヒジから先が一瞬で再構築された

ほうらあんたらとはデキが違うの私はお姉さまと添い遂げる崇高な使命があるからこんな事ができるの
ふわふわしたマシマロみたいに幸せ気分で使命を全うしようとしたらあんたらが邪魔するんだものそんなの
ないわそんなのってないわないわないわないわそうしてあたしからヒジをもっていっていやがらせをするのね
あんたたちもあのクズとおんなじなのねそうねクズねクズクズクズカラスについばまれてクルミみたいに頭を割られて死んじゃいなさいよクズ

次第に早口になる祷子
支離滅裂になっていく口調にうんざりし、もう一発発砲する

弾丸は祷子の長髪を掠めて飛んでいった。当てるつもりの一発だった
苦虫を噛み潰した顔を見て、祷子が再び口を開く

「ねえ、あんたらは何がしたいの。戦いを止めるだなんて本気で言ってるわけじゃないでしょう」

「本気じゃなきゃこんな所まで追いかけないさ」

「あんたのだぁいすきなあやめちゃんも、あんたを裏切ってフェスを続行してるのよ」

「何度も言わせるな、本気だ。こんなのが正当化されてたまるか」
まして、お前の思い通りの世界なんてごめんだ

そう加えると、祷子は満面の笑みを浮かべて言った

「ああもう、たまんないわ 楽しいったらないわ」

なんて愉快な子たちなのかしら
素敵、素敵よ。そんな事考えて行動できるなんて素敵よぉ

「打ち所が悪かったか」

救急車でも警察でも何でも呼んでやる。大人しく裁かれろ

「警察、ねえ。 あたしはもうそんなの怖くないのよ。鏡像さえあれば何だってできるのよ」

「その勝手なエゴで、何人を殺めたんだ。ベニイロカガミを利用してまで、あんたは何を」

癒衣が言い終わるや否や、祷子は垂れ気味の目じりを吊り上げ、激昂する

「あたしよ、あたしが気持ちいいからするのよ。アホみたいにケラケラ笑ってる『他人』を見るとイライラするの。
そいつらみたいな肉袋がソーセージみたいにはじけるのを見るととってもすっきりするのよ」

あまりの覇気に思わず後ずさる癒衣。だが、祷子は続ける

「あたしをいじめた女たちをやった時は本当に気持ちよかったわ。
実際にイっちゃってたんだもの、換えの下着もビショビショになっちゃったの。
あたしとお姉さまの世界を作るために行動しているだけでこんなに気持ちがいいだなんて幸せなの
これはエゴなんかじゃないわ幸福追求よ何が悪いのねえ何が」

わるいのお


祷子の背後に巨大な黒いシルエットが浮かび上がる
二つの黄色いデュアルアイが発光し、その姿が露になる
徐々に姿がはっきりしていくにつれ、祷子がそれに合わせて喘ぎ、恍惚の表情を浮かべる

黒と灰を基調にしたボディ、黒光りする装甲。両腕は多段ロケットを連想させる巨大なハンマーのよう
こいつが、みんなを傷つけたあいつの鏡像

「あんたを殺せばもっと気持ちいいでしょうねえ」
祷子の手にはハンマーを模した彼女の「杖」が握られていた

「ひき肉って気持ちいいわよお」


ジークフリートが自らのレールガンを展開する
相棒、私の覚悟はできているぞ。地の底まで付いて来い

「Sir」

相棒の短い応答を聞くと、自然と怖くはなくなる
自己満足でも何でもいい、ヒトが生きる権利を奪うこいつを野放しにはできん
偽善でもいい あやめに実の私を今度こそ見てもらうんだ

そのためには
こんな所で負けるわけにはいかん


深淵魔王アーリマン、吼ゆ
+ ...
  • 完全世界…全てのケリをつけた世界
向井 癒衣は逆らえない

夕陽の照らす畳敷きの自室には、既に彼女の愛する少女がいた
癒衣に比べてずいぶん小柄で痩せ型、スナック菓子をくわえてこちらを振り向くあやめ

「おかえんなさい」

「こぼすなよ」

おっす、わかっとるよ、と ハシで菓子をつまみ、再び口へ持っていく
もう片方の手でカチカチとせわしなくテレビのチャンネルを変える
割と間食もする方だし、食事の量も少ないわけではないのに、なぜこうも差が出るんだろうか
ちらりと癒衣の方を見るあやめ
制服のブレザーとネクタイを丁寧にハンガーにかけ、ワイシャツのボタンを外していく
中学生らしからぬ豊満な肢体が、布越しでもよく分かった


「ねえ お風呂、わいてるよ」

「そうか」

「先、入る?」

いいのか、と聞き返す癒衣にさらに入浴を促してみる
どうしてこうも謙虚なのか、幼馴染ながら感心してしまう

「だって、今日も疲れたでしょう。大変だよね、運動部の数合わせなんて」

「今月は私が出なければ大会に出場できなかったりした部活もあったしな」

その類まれなる運動能力は、菜摘市からも部活の勧誘が来るほどである
本人はそれほどでもないとの事ではあるが
現に、2週間前に夏祭りの経費の支払いをかけた町内対抗新河・菜摘合同草野球大会に
駆り出された時にも9-1という劣勢をその強肩と打率4割を誇るバッティングで覆してしまった
以前から癒衣の才色兼備ぶりは新河で有名であったが、この事がきっかけとなり
さらに知名度が増し、助っ人要請が増加してしまったのだ
さすがに全てに答えるのは無理だと断ったが、そこは面倒見のいい性格の癒衣
特に用事のない日には運動部や草野球チームの練習に付き合ってやっているという

「今日は、剣道部の稽古に付き合ってきた」

「よくそんなに体力もつね」

「体を動かすのは嫌いではないしな」

あやめも何か運動をしてみてはどうか。着替えの下着を小脇に抱え、聞いてみる
「やだな、ボクがヘタレなの知ってるでしょう。柔軟体操するだけで軽く疲れちゃうボクが
本格的に運動なんかしたら、全身バラバラになっちゃう」

「いつか見た君の体操着は、とても愛らしかったんだが」

「それが目当てでしょう」



ベッドに腰掛ける2人
まだ陽が長いのか、カーテンから差し込む西日はまだ眩しい

風呂から上がったばかりの上気し、火照った体をあやめの指が撫で回す
パジャマ越しからでも妖艶に、淫らに感じた

「いいにおい。癒衣ちゃん、フカフカ」

腰に腕を回し、乳房に顔を埋める。身長差が30cm近くあるためか、顔が丁度胸に来る
ぎゅっと抱きつく少し年上の親友に、癒衣は優しく笑いかけた

「同じ石鹸を使っているだろう あやめの方がいい香りだ」

「そうかなあ」

きっとそうだ、あやめはいつも私を想ってくれているから
想ってなかったらどうするの?
それでも私は君を想っているぞ、と。力を込めずにあやめの頭を抱える

「ひゃあ、恥ずかしいなあ」

どすんと倒れこみ、顔を向け合う2人
わざわざあやめが癒衣の高さまで移動して、じっと見つめあう
普段は鋭く切れ長な癒衣の目が、とろんと垂れていた 熱い吐息があやめの首筋に当たる

「…する?」

「う、うん」

男女問わず、多くを虜にしてきた癒衣の勇ましいハスキーボイスも
この時ばかりは萎縮し、弱気になってしまう
どこか不安そうな眼差しを見て、あやめははちきれんばかりの愛情を注いでやりたくなると同時に加虐心も掻き立てられる。意地悪く笑みを浮かべてやると、癒衣は視線をずらしてしまう
それがたまらなく愛おしく感じた

伏し目がちになっている癒衣の唇を不意に奪ってみる
始めはぱっちりと目を見開き驚いた癒衣だったが、あやめが舌を奥歯まで絡ませると
段々と恍惚の表情が露になっていった。そのうち癒衣から舌を前歯に押し付けてくるようになる
唾液を流し込んでやると時折びくんと震える癒衣は、とても弱弱しく思えた
手と手を強く握り合い、その接吻はいつもより長く続いた

ゆっくりと唇が離れるのを感じた癒衣は、名残惜しそうに唾液で糸引く自らのそれを震わせる
そんなに良かったかな。癒衣ちゃんのえっちい。癒衣のパジャマのボタンを外しながら
これまた意地悪く言うあやめ。ボタンが一つ外れるたびに、押し込められた白い乳房の肉が
押さえを失って本来の形を為していく

「それとも、呼び捨ての方がいいかなあ。癒衣?」

友達という枠を取り払い、恋人へとシフトする。
2人の生まれの違いは9ヶ月程だが、根が真面目で年功を重んじる癒衣にとって
あやめは幼馴染以上の感情を抱かせるに足る存在だ
それ故、あやめに対しての尊敬は愛情に変わる

「…あや、すき」

消え入りそうな声で、そう呼んだ。たっぷりと広がる彼女の乳房を抱えながら
それを聞いたあやめは、癒衣の頬に口づけした
既にパジャマの上着のボタンは全て外され、その美しい半身が晒されていた
並の女性には見られない大きな胸、しなやかに鍛え上げられた腹筋

「ボクも好き、好きだよ癒衣」

その桜色の乳首を力を込めずに甘噛みすると、いちいち「ひゃん」と可愛く喘ぐ癒衣
乳房を優しく撫でながら、今度はそれを舌の上で蹂躙する
やめて、やめてと懇願する癒衣を無視して続けるあやめ。力が入らないらしく
あやめにねじ伏せられているも同然だ。パジャマのズボンにも手を突っ込まれている
自らの唾液を付けた指であやめに弄ばれ続ける癒衣の秘所は、与えられる快感と愛情で
真っ赤に充血しているだろう。瞳に薄く涙を浮かべる彼女を見ると、さらに興奮する

「ねえ、こっちは自分でかじかじしてみてよ」

そう言って、左の乳首を彼女の口元へ持っていく。癒衣位のサイズならでは芸当か
もはや逆らえない癒衣は、言われたとおりに震える口に自らのそれを含んだ

「右はボクが指でこねこねしてあげる」

気持ちいいの?自分で舐めて感じてるの?
被虐的なセリフが、癒衣に劣情を感じさせ大きな興奮を呼んだ
潤んだ瞳がぽろぽろ流した涙を、あやめが舐め取っていく

興奮が最高潮になり、癒衣は絶頂する。背筋を反らせて快感の波に耐える
やがて、力無くぐったりとする癒衣の耳元でこう囁いてやる

「まだだよ、癒衣のえっちい所は全部見てあげちゃうんだから」

ズボンを完全に脱がされ、嫌でも見せ付けられる下半身の状況
伸びやかに発達した大腿筋は愛液にまみれ、照かっていた
うっすらと滑らかな陰毛が生えたびしょびしょの性器を、あやめが軽く撫でている
勃起した陰核をわざと避けるように指でなぞっていく

「あ、あや、あやめぇ」

「ふぇ、どしたの」

「それ、それも触って欲しいよお」

代名詞じゃわかんないなあ
漫画でよく見る虐め方だ。あえて淫猥な単語を言わせてみる
耳たぶを舐めたり齧ったりしながら、返答を待つあやめ
ここで言えなくても、もちろんイかせてやるつもりである

「いいよ、言わなくてもぉ」

するりと下着を脱がしてやるあやめ
癒衣の股を縦に開き、性器同士をぴたりと密着させた。2人同時に喘ぎが漏れる
がっしりと太腿にしがみつくあやめを見て、再び高まっていく癒衣
にやっと笑い、おもむろに腰を動かすと2人の秘所がこすれ合い、強い快感が背筋を伝う

「ひゃあっ」

腰を機械的に振り始め、歯止めが利かなくなった2人
元々体力のないあやめだったが、この時ばかりは限界まで腰を打ち据えた
次第に、今度は癒衣があやめの腿を抱きしめる形になっていく

「こ、これ、ひゅごいよう」

長い黒髪を振り乱し、息を荒げる癒衣
呂律が回らなくなる、脳が蕩ける錯覚。だが、確実に幸せの中にいた
鏡像のない、魔法のない世界でも、愛情や快感、充足はそこにはあった
最後には、2人で一緒に登りつめた



「おはよう」

「おはようさぁん」

寝ボケ眼をこすりこすり、寝室から現れるあやめ
今日の汁物は赤味噌ダシですな

「父さんと義母さんは早くから出かけた。陸耶さんは午前中に部活が終わって帰ってくる」

あやめの前の食卓に食器を並べつつ、家族の情報を的確にあやめに伝えてゆく癒衣
エプロンで手を拭き、再びキッチンへ向かおうとした時
乳房を、後ろから持ち上げられた

「…」

「ふかふかー」

「…く、くそう」

向井 癒衣は逆らえない
+ ...
蒼天夢想さくらもち

1966年、地球外より飛来した寄生生物『被写体』による侵略を受け、
人類はその数を全盛期の3割にまで減少させられていた

人類の衰退は71年、東西アジア防衛線の陥落を皮切りとし、
2013年現在にはユーラシア大陸東部、北米・南米大陸北部を完全に制圧される

米国国防省を主体とする、核による殲滅作戦も失敗に終わり、
残された人々は正に満身創痍と言った面持であった

被写体による侵攻は現在でも続いており、
国連軍が本拠を構える英国・ロンドンの陥落も時間の問題とされる

30年来にもなるこの闘争だが、侵略者である被写体の生態は以下のものしか判明せず

1.生殖器官、消化器官を持たず、繁殖を目的とした行動を執らない
2.脳にあたる器官を持たず、統率行動を執る個体も見受けられない
3.ヒトの顔のような外殻を持つ個体の存在が確認されており、
 19種が現在まで目撃された(国連呼称ペルソナ)。
 この個体だけはレーダー類には探知されず、目視による目撃情報のみが寄せられる
4.人間を優先して襲撃するも、それぞれの個体が別々の行動を優先するため
 種族そのものの目的は不明
5.独自の拠点(国連呼称セフィロト)を地上に建設、運用することで行動範囲を広げていく
6.被写体そのものが寄生している有機体は、捕獲されたヒトを素体として生成される

高度経済成長期の日本を襲った被写体による地球侵略はその進化し続ける
技術力を兵器生産へとシフトさせるに十分なものだったのである
幸運なことに、被写体の侵略は日本へ向くことは今のところは無かった
技術向上を生かし兵器開発の中心となったカンザキ重工は
対被写体兵器たりえた重戦車、武装ヘリなどを外洋諸国に輸出した。

だが日本国内、特にカンザキ本社付近の日本海側では国民に対する大規模な
情報統制が行われ、「宇宙人との侵略戦争」という事実は伏せられた

1986年、カンザキ重工にはヒトの形を模した戦術兵器を開発
山岳地帯を走破、踏破可能なフレキシブルさを持ち得、搭乗者の脳波を
ダイレクトに人口筋肉へ弱電流として伝達し、従来の強化骨格の延長線上に位置する
ヒト型装甲攻撃機を開発。対被写体兵器開発のリードを他社より奪った

後にアメリカのボーイング社との提携により、量産型装攻機「フラッター」が国連に配備された


日本海沿岸部に位置する小規模都市「上新河」
一般的には田舎と称されるようなこの農村に、東京から一人の少年が帰ってきた
地球外生物との戦争という「現実」を知る少年は、閉鎖された故郷にどのような影響をもたらすのか

2013年、戦争は続いている

  • 話に題名をつけると見やすくていいかもしれません -- 名無しさん (2008-11-08 02:11:34)
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