厨二オリキャラサラスヴァティ @ ウィキ
http://w.atwiki.jp/saraswati/
厨二オリキャラサラスヴァティ @ ウィキ
ja
2024-01-20T22:50:35+09:00
1705758635
-
無亥 ハク
https://w.atwiki.jp/saraswati/pages/614.html
*概要
名前 無亥 ハク(むがい はく)
性別 女
年齢 23
***味方
種族 悪魔 棒人間
酒に弱い
**主な声(?)
***いつもの時 可不の声
***覚醒時 可不と初音ミク(少し低め)の声を合わせたもの
***能力:時止め、朽ちたモノクロの世界 (この能力を発動すると、一時的無敵になるがその間一才回復ができない。その上能力の発動が終わると気絶してしまい、暫く起きない)
23なのにすっごく美人。
**服装
&image(1D8A377A-D785-43BD-AD73-CA9517D9953F.webp)
職業 殺し屋 殺し屋と仲間にバレては行けないので普段は修行している。
***異名血濡れた天使(意味:そこには凄く美人な女性が居た。だがその女性は天使の羽を生やしていて血濡れだった。)
*リア主からの伝言
どうも!新規です!よろしくお願いします!多分もう活動してないと思いますが取り合えず()本当に謝罪しないといけないことがあり、儀式にあんまりいけ無いんです(´༎ຶོρ༎ຶོ`)
*色々な設定
ミメル・ヴァルティスは昔、実験体にされていた。無理矢理色々な事をされ、今のような姿になる。13歳のある日、ミメルの中で何かが吹っ切れて、凶暴化した。施設から抜け出し、今のような生活を送っている。
彼氏:募集中(はじゅい)
好きなタイプ:大人しい 清楚系
ミメルは大人しいがお酒には弱いためすぐバタンキューする
*ステータス
攻撃力 100000
防御力 9802
HP 8763
MP9743
*とある研究日記
1日目
研究は順調だ。
二日目
ハクが特別な成績を出している。素晴らしい。
???日目。
今日は最終日。殺し合いをする日。
途中経過の写真
&image(04C7E4A4-1923-43E9-AB3A-0E83643B1E6B.png)
wjshjhs日目
この戦いはハクが勝利。
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*雑談用コメント欄
- よろしく -- ミメル (2023-11-19 00:45:00)
#comment()
2024-01-20T22:50:35+09:00
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多世界:基礎設定
https://w.atwiki.jp/saraswati/pages/608.html
コンセプト:多世界ファンタジー、異種物理法則、認識が物理に優越する/というか物理法則すら神の主観でしかない、クソ強人間原理、RPG的ステータス&スキル、三~四人ぐらいのハーレム
*&ruby(ウム・ヴェルト){環領域}
&ruby(エピステミック・イラ){人智暦}において、無数に存在する小世界群。神の見る夢。世界殻。箱庭。法則インフラ。
一文字短縮して、『領域』とも。
それぞれが固有の法則、風土、環境、技術体系、文明、文化などを持ちつつも、今までに発見されている環領域は、そのすべてが純正人類の存在を許容し、かつその感覚系をすべて満たせるだけの情報のフォーマットを持つ。
すなわち、『人間』を成立させられる程度には複雑なミクロ法則が存在し、その眼には光が映り、耳では音が聴こえ、鼻では微小粒子のいくらかを嗅ぎ分けられるということ。
むろん細部まで見ていけば、環領域ごとに『光』の定義は領域ごとにまったく異なる。
旧世界に近しい電磁波、太陽神の権能が無質量の輝塵となったもの、万物を構成する無色の魔力に〝光〟の属性を書き加えたもの、
物理的には存在しない、領域内全生物が接続・同期している所与の外形情報取得システム……etc.、根本的にまったく異なるものばかりだが、そのすべてが『光として』『ヒトの目に映る』。
同様ヒトそのもの、純正人類の肉体も、細部まで見ていけば、物理法則が異なる以上は当然、環領域ごとにまったくの別物。しかし機能と外形、抽象的・巨視的な域においては、共通して『ヒト』の枠を維持している。
現在、汎領域間通商協定に加盟している(※)環領域は約620、加盟はしていないが協会が存在を把握している環領域が約400。
環領域の(相互)発見や新規発生は今でも年に数回起こるため、未だ見知らぬ数多の環領域たちが、汎領域間通商協定以上に巨大な相互認識圏を築いている可能性も、ゼロではない。
(※一つの環領域内に複数の国家や政体が存在する場合は、そのうち一つでも加盟していればカウントされる)
理論上、予想されるウム・ヴェルトの総体、あるいはウム・ヴェルトすべてに共通する基盤法則を指して、&ruby(ウム・ヴェルトール){統環全域}と呼ぶことも。
*&ruby(テュフロス){無明}
数多の環領域を旧世界の天体に喩えた時、真空の宇宙に相当する、環領域の外側に在る────否、&ruby(・・){無い}もの。ありとあらゆる情報が欠落した真性虚無。
時空間が未定義どころか、何かが有る/無いの1bitの情報すら保持していないため、何も無い、という表現すら正確ではない。
通常規格の知性体が無明に曝露すれば、二秒と持たず(※)存在が希釈されて消失する。
&ruby(ウム・ヴェルト){環領域}という強固な世界殻と、それを展開する&ruby(テオーリア){主観照典}は、多くの知性体にとって、存在基盤を提供する必須インフラ、と言える。
(※この二秒、というのも、主観者が時間認識を保っていられる限界であり、無明に時間の流れはない。流れがない、ということすら無い)
*&ruby(テオーリア){主観照典}
人智暦の時代において、世界のすべては認識と情報で出来ている。
ならば落ち葉の裏、新月の月、世界そのものを運行させる背後法則、時間の流れそのもの、誰も見ていない/見ることの出来ないものを、なお観る者は、誰か?
その答えが、&ruby(テオーリア){主観照典}と呼ばれる神的存在。
無明を強固な主観によって照らし上げ・緻密な夢想により環領域を展開し・絶え間ない観測によって環領域を維持運営する、超知性たちである。
世界を想像し/創造する彼らにとって、主観(自分がそう感じた)と観照(世界の客観的真理を識る)ことはいっさい相反しない、どころか同義ですらある。
環領域が多様であるように、主観照典の在り方もまた多様。積極的に介入してくる者、基本的には見守るのみの者、そもそも自我があるのかすら不明な者。
基本的には一つの環領域に一柱の主観照典が対応するが、複数の環領域を持つ者や、逆に他の主観照典と協同で一つの環領域を運営するタイプも存在している。
なお、世界法則そのものでもある、という性質上、領域内に対して行使できる力の多寡や可干渉性はおろか、その人格や振る舞いまでもが法則化されている場合がある。
この場合、主観照典自身も自身を定義する法則の枠から外れることは出来ない。
*識子/識力
人智暦における情報の最小構成単位。
セマンティックピクセルや、&ruby(モナド){単子}、&ruby(イット){意子}とも呼称される。
個体が持つ識子の保有量・制御可能量の多寡を指して、『識力』と呼ぶことも。この単位は(SI接頭辞)イット。
*&ruby(ディターミニクス){識術}
世界のすべてが認識と情報で出来ており、完全な客観というものが存在しない人智暦において、十分に高い識子量に裏打ちされた『願望』や『思い込み』は、もはや現実に等しい。
この、識力を消費することで自身の主観を(ある程度の)客観に拡張する技術を、『識術』という。
主観で世界ひとつ、法則体系ひとつを丸ごと創り出す環領域は、最大最緻の識術と言える。
環領域を展開する主観照典の保有識力は、環領域内に住まう一般知性とは、桁が数億(つまり、10の数億乗)倍違う。
が、その力は環領域全体の維持に分散されているため、個人の識力を一点集中させれば、主観照典のそれを部分的・瞬間的に上回り、環領域(=神の見る夢)のごく一部を塗り替えることも可能。これが、一般に環領域内部で暮らす知性個体が使う『識術』である。
主観照典の観測強度が高い領域ほど、識術行使に求められる識力は大きくなり、逆に観測が緩い環領域では識術の抵抗は少ない。(そしてそもそも世界自体が不安定)。
なお、認識を根幹とする力であるため、起こしたい現象についての〝正しい〟認識が必要となる。
炎が浄化の象徴として定義されている環領域で『ただの急速な酸化』という認識で炎の識術を使おうとしても上手くいかないし、
出身領域の雷が『天霊と地霊の交わる、瞬光の逢瀬』だったからといって、天霊も地霊もいない環領域にそのイメージを持ち込んでも、やはり識術の発動効率はひどく劣悪なものになる。認識を根幹とする識術において、解釈違いは最大の敵。
生まれた領域から出る気がない、出たとしても識術を使わない場合は『出身領域での正しい、仔細な認識』を持っていれば必要十分だが、
自身の識術に多領域間の互換性を持たせたいなら、細かい原理などは忘れて「メラメラ熱い」「ゴロゴロドーンビリビリ」という、『精密でない』がゆえに『どの領域でも間違いにはならない』、主観的・感覚的・抽象的・巨視的なクオリアのイメージをトリガーとした方がよい。
理想的には、今いる環領域に合わせて『正しく、かつ精密な認識』を自在にスイッチできるのが最善だが、現実的には困難である。
*&ruby(アーキタイプ・エレメンタル){原型八素}
ほぼすべての環領域において共通して存在する、八つの自然の象徴。【万物の尺度】たる純正人類の存在から敷衍される、原理を問わない巨視的な同義性。
人智暦436年現在、自然のイメージを参照する上で、もっともメジャーな系統分類である。
もっともメジャー、であって唯一ではなく、五行や四元素、元型“九”素なども、決して少なくはないシェアを握っている。
以下個別解説↓
『炎』──炎とはヒトが用いた原初の炉であり、また熱の、生命の象徴である。
ゆえにヒトが存在するなら、炎もまた存在する。
『水』──ヒトは水を飲みて生きる、湿潤な肉体を持つ存在である。
ゆえにヒトが存在するなら、水もまた存在する。
『風』──ヒトは呼吸をする存在である。呼吸は息吹であり、それは大気の動きであり、恒常する動。時間の流れそのものである。
ゆえにヒトが存在するなら、風もまた存在する。
『地』──ヒトは地を踏みしめ立つ存在である。地は空間の土台であると同時に、地層で、化石で、過去を遺す時間の基盤でもある。
ゆえにヒトが存在するなら、地もまた存在する。
『氷』──ヒトは、生まれた時から死を宿命づけられた存在である。死とは熱の消失であり、凍り付く静止である。
ゆえにヒトが存在するなら、氷もまた存在する。
『雷』──雷とは生物原初の情報であり、同時にヒトが生きる天地の狭間。そこを流れる力の象徴である。
ゆえにヒトが存在するなら、雷もまた存在する。
『光』──ヒトは、眼で光を捉えることで、モノを識る存在である。
ゆえに、ヒトが存在するなら、光もまた存在する。
『闇』──闇は、光と不可分である。
ゆえにヒトの存在が光の存在を保証する時、その不在たる闇もまた、存在を保証される。
*マテリアル体/エーテル体/アストラル体
人智暦において、多くの知性種族を構成する三要件。階層構造を成しており、マテリアル体がもっとも下、アストラル体がもっとも上。
ただし単純に最上位のアストラル体が下位二体をコントロールしている、というわけではなく、三体の複雑な相互作用の総体が、一つの知性を形作る。
マテリアル体は、当地の領域法則に準じた物理構造体。フィジカル体とも。
環領域内の共通法則に沿って存在しているため、良くも悪くも干渉・改変・操作しやすく、されやすい。
アストラル体は、まさしく精神の中核。魂。体積を持たない(ゼロではなくnull)、芯我にして真我。最小単位の環領域。
情報構造の型からして個体ごとにまったく別物であるため、侵入するのは極めて困難。
三次元上の形而下、共通・共有法則界に座標も体積も持たないため、直接に攻撃を仕掛けることも一切不可能。なのだが、アストラル体は極めて繊細であり、後述するエーテル体の器が失われれば勝手に自壊してしまう。
エーテル体は、マテリアル体とアストラル体を仲介するもの。魄、霊、氣、オーラ、プラーナ、その他色々の漠然とした生命エネルギー。
性質としてもマテリアルとアストラルの中間に当たり、マテリアル体ほど共通法則に縛られているわけではないが、アストラル体ほど独自固有というわけでもない。
同様、マテリアル体ほど敵対的な侵入や改変を受けやすいわけではないが、アストラル体ほど強固な防壁を持つわけでもない。
エーテル体のうち、アストラル体と接する最上部界面層。繊細脆弱なアストラル体を包み込む器の部分を、〝銀の揺り籠〟と呼ぶ。
なお、必ずしも三体すべてを全ての知性体が持つわけではない。
たとえば精霊種や妖精種などは、マテリアル体を持たず、エーテル体とアストラル体のみで構成される。
*魔法/魔術__Local-Law/Local-Logia
環領域固有の法則を『魔法』、ならびに魔法によって定義される領域固有のエネルギーや権限通貨を『魔力』、それらを扱う技術や技能を『魔術』と呼ぶ……ものの、そもそも数多の環領域で共通しているのは、あくまで巨視的、人間が直に感覚できるレベルのみ。
肉眼で見えるものが/得られる視覚クオリアが似通っていても、ひとたび顕微鏡を覗けば、それがまったく異なる原理で実装されていることはすぐに分かる。
そのため微視的・根元的な分野に立ち入れば、それは必然的に魔法化・魔術化してしまう。
たとえば物質の構成単位に『原子』を採用していない環領域から見れば、
原子の存在やその挙動を示す物理法則は『魔法』であり、
核力とはすなわち『魔力』、
それを利用する原子力発電所や原子力爆弾とは、『魔術炉』であり『魔術兵器』ということになる。
当然、魔術は他領域では基本、一切使えない。
多くの環領域を渡り歩く人間が、自身の肉体を使った体術、剣や棍棒、弓や投石といった原始的な、巨視的作用に頼る武器を好むのは、原始的・巨視的ゆえに魔術化しない=どの領域でも変わらず使えるため。
**&ruby(マゲイア){魔力型魔術}
領域固有のエネルギーを扱うもの。もっともポピュラーな魔術。
環領域によっては、エネルギーとしての実体を持たない、〝支払う〟ことで初めて形而下に影響を及ぼす『権限通貨』が内部の知性に発行されることがあり、これも魔力と呼ばれる。
**&ruby(ファルマケイア){化学型魔術}
魔力型にならび、もっともポピュラーな魔術。&ruby(アルケミー){錬金型魔術}と呼ばれることも。
エネルギーを扱うのが魔力型なら、化学型は物質を扱う魔術。領域固有の化学法則に沿い、物質の合成や変成を行う。
ただしどの領域でもエネルギーと物質は不可分であるため、魔力型と厳密な線引きがされているわけではない。
先の原子力関連で喩えるなら、ウラン濃縮技術などは化学型魔術。
生命(のマテリアル体)も物質であるため、医療や生化学などもファルマケイアに属する。
**&ruby(テウルギア){神働型魔術}
世界そのものである主観照典の力を借りる、最強至高の魔術体系。
しかし環領域の固有法則性から必然的に発生する前記二種とは異なり、使える領域自体が限られる。
たとえば、寡黙に平等に世界法則を敷くだけの主観照典では絶対に無理。
テウルギアの第一の発動条件は、その環領域の主観照典が、下界に積極的に干渉・介入するタイプであること。
これを満たした上でも、実際には感応値だったり、はたまた主観照典の『好み』『気分』などで振るいに掛けられたり出力が変動したりしてしまう。
そもそも定義論として、安定して平等に、法則として実装されている力は魔力であり魔力型魔術にカテゴライズされるので、
神働型に分類される時点でなんらかの依怙や贔屓があり、斉一性や安定性に欠ける、ということになる。
**&ruby(ゴエーテイア){不正実行型魔術}
各領域法則ごとに存在するバグや脆弱性を衝く、最悪の魔術体系。
オブジェクトが無限に倍々ゲームで増えていったり、左右にブレながら猛スピードで高速移動したり、発動者の手足がぐにゃぐにゃ伸びるが当人の体性感覚には変化なし、などの異常な挙動を引き起こす。
統治機構を持つすべての環領域で、一般環境下の研究・使用が厳に禁じられており、故意に使えば一切の酌量の余地なく極刑。
公に研究するには、十分に因果閉鎖された孤立時空が必要とされる。
なぜゴエーテイアがここまで嫌われるのかと言えば、引き起こされる異常な挙動の悪影響がどこまで波及するか、誰にも予想できないため。
内部環境が荒廃するだけならまだマシで、最悪の場合、環領域それ自体が&ruby(クラッシュ){破綻}する可能性すら存在する。今までゴエーテイアによって引き起こされた事件のうち、最悪のものでは環領域ひとつが半壊。二百万人以上のマテリアル体を巻き込んで、完全に&ruby(フリーズ){停止}してしまった。
しかしゴエーテイア自体の危険性や、その禁忌性を知ってなお、
それがもたらす無限の富や、統環全域への手掛かりに振れる可能性、単純な知識欲、あるいは禁忌であることそれ自体に惹かれて、ゴエーテイアという魔術体系に魅入られてしまう者は、常に少数、存在する。
*魔人/魔族/魔獣──Local-Race
魔法、すなわち領域固有の法則や概念に強く依存した存在形象を有するため、他の環領域で生きることが難しい種族や生物を指す言葉。
原子の存在そのものが魔法であり、核力が魔力であるのなら、核エネルギーによって駆動する怪獣は魔獣である。
とはいえ生まれた環領域から出ない限りでは「その領域の法則に準じた存在」という意味で特に他の生命と変わりはなく、『魔』に特段ネガティブな意味合いはない。
他の領域法則との互換性がないならば、チワワめいた愛くるしくか弱い小動物も魔獣。
逆におどろおどろしく凶暴な猛獣であっても、他の環領域で元気に活動できるなら、それは魔獣ではない。
定義としては、上記のように善悪はおろか強弱さえも関係ないが、実際の傾向としては、より深く領域固有法則に根を張り、その身をもって魔術を体現する魔族や魔獣は、互換性の高い種族よりも(地元の環領域の中では)強力である場合が多い。
あくまで何百と存在する他の環領域の中には、同一ではなくとも『似た』法則のものもあるうえ、
『共通鋳型』『擬似・万物の尺度』スキルなどの使用、識力量に任せた強引な形象維持、自身の体内に絞って魔法(=出身領域の法則)を張る────などの手段もなくもないので、生まれ育った領域以外では絶対に生きられない、というわけではない。
***純正人類と『魔』性について
種族スキル【万物の尺度】によって、あらゆる環領域下での存在を保証されている純正人類は、もっとも非・魔族的な種族であるが、
あくまで『魔人』や『魔族』、『魔獣』の定義は、異なる領域法則との互換性・可翻訳性の有無高低であり、存在のかたちが純正人類に似ているか否かは本質ではない。
しかし【万物の尺度】たる純正人類に近しい種族は、【万物の尺度】の分け前に預かれる可能性が高いため、
(純正人類の肉体構造や代謝系があらゆる法則下で必ず成立する以上、『純正人類に近しい肉体構造や代謝系』も高確率で成立する)
結果的には、純正人類との差異の大きさと、他法則への翻訳困難性(=『魔』性)は相関する傾向にある。
*龍──Local-Optimus
魔族の中の魔族。魔法をその身で体現するもの。
各環領域の、固有最強種に与えられる称号であり、生命の形態の一類型を指す『竜』とは、明確に区別される。
(相反するものではないので、『竜』型の生物が『龍』の座を占めている環領域も存在する)
龍の定義とは、当該環領域の固有法則=魔法に適するように、もっとも純化・先鋭化を果たし、その結果として最強の地位を得た種族であること。
一般的な魔族や魔獣が『核エネルギーによって駆動することをアイデンティティとする動物』の域なら、龍とは『生ける太陽、知性化した核融合プラズマ』のような存在である。
ある領域で最強の地位を占めていても、『魔法への先鋭化』という条件を満たしていないなら、それは龍とは見なされない。
生まれた領域法則に対して極限まで最適化され、完全に余剰と不足を排除された、魔族の究極であるからこそ、龍は己が環領域において冠絶した力を持ち、また他の環領域では、自己を維持するだけで著しい負荷を受けることとなる。
とはいえ、龍は例外なく圧倒的な基礎ステータスを有するため、甚大な環境デバフを背負ってなお、他の環領域でもかなりの力を発揮できてしまったりする。
他の種族の数十倍重いデバフを常時受け続けていても、素のステータスが百倍あれば相対的には強いまま、という理屈。
(もちろん、百倍のステータスでさらに環境バフを受ける当地の龍には、まったく歯が立たない)
*&ruby(トランスレイター){転移門}
環領域間を移動するのに使われる、高度かつ大掛かりな識的構造体。必ずしも『門』の形とは限らず、転移鍵や転移船、転移箱などもある。読みはいずれもトランスレイター。
機能はシンプルに二つ。領域間の空間転移と、それに伴うマテリアル体およびエーテル体下層の翻訳・変換・調律。行き先の環領域が持つ法則体系に適合させる。
基本的に環領域を渡るにはほぼ必須の代物。そのため全ての転移門は、領域国家によって厳に管理され、無許可での生産・所持・持ち込みなどはすべて違法。
ある程度発展している環領域には、大型の転移門を複数基揃えた、巨大な&ruby(トランスポート){転移港}が必ず存在する。
取締りの厳しさや、それ自体の製造難度も相まって、非正規の転移門の数は非常に少ない。それだけ一つ一つに価値がある、ということでもある。
また、イリーガル品すら使わない、完全な単独転移&自己翻訳も可能とする者も、極小数存在する。大抵は絶大な識力の持ち主でもあるため、国家でも縛るのは難しい。
*スキル
先天的な本能であれ、後天的な習熟であれ、とにかく特定のタスクを、表層意識という汎用処理を使わずとも、無意識下で高速・高効率でこなせる能力。ならびに、それを実現するための、特定タスクに特化した回路を指す。
マテリアル体であれば神経回路(という物理作用を演じる識子)であり、エーテル・アストラル体であれば識子回路。
リテラルには「普段の生活圏の中であれば、何も考えなくても正しい道順を歩ける」ことさえ、『オートナビゲートLv.2(発動条件:自宅より約3km圏内)』のようなスキルである。
どころか、ただ二足歩行できることすらも、『自動姿勢制御Lv.3』のようなスキルとして見做せる。
が、このような日常の範疇の能力まで含めていればキリがないため、実際にスキルとして扱われるのは、専門性の強い技能や識術のみ。
なお、スキルの本質が特定のタスクを無意識・高速・高効率でこなせる〝回路〟である以上、切除や移植、改変や編集も可能。
&ruby(マテリアル){共通法則}体依存のスキルは比較的たやすく弄れ、逆に&ruby(アストラル){芯我}体依存のスキルはほぼ無理。エーテル体はその中間。
しかし、たとえマテリアル体であろうとも、精神の一部を切り貼りする行為には、どうしても一定のリスクが伴うほか、相性や親和性の問題も常に発生する。
そのため公のスキル売買マーケットでは、買い手ともっとも相性がいいものを選び、また施術後のアフターケアが義務付けられている。
極めて稀少なスキルが長期保存される場合もあり、争奪戦になったり適合者探しが始まったりすることも。
(個々人との相性とか移植後のアフターケアとか、一番近いイメージはサイバネ部品?
扱うのは機械じゃないし実体すらない、自分の/誰かの無意識領域の一部なわけだけど、ヒトに対する人工的な機能追加や改造が市場化されてるって意味ではサイバーパンクっぽいかも)
(機械・実体の補助脳の追加は、マテリアル体依存のスキル追加、ということになるかな)
(補助脳として使えるレベルの物理コンピューター、必然的に魔術になるので他領域に持ち込むとただの重りにしかならない)
**HP/Homeostasis Persistence
人智暦において、ほぼすべての生命体が所持する自動発動型スキル。生存本能と直結した原始的識術。
自身を構成するマテリアル・エーテル・アストラル体に生じた外傷すべてを一瞬で復元し、正常な状態に戻す。再生限度は事前にプールしておいた変質識力が底を付くまで。
この、汎用識力から変質させた上で、HP用にプールされる識力もHPと呼ばれ、マテリアル体の全壊を一回、完治させられることをもって、HP量1とする。
すなわちHP量30とは、30回細切れにしてもまだ死なない、ということ(この時のHPはゼロであり、この状態で致命傷を受ければ死ぬ)。
なんら戦闘能力を持たない一般人でも数十のHPはあるため、人智暦において〝事故死〟は基本的に起こり得ない。
例外は火口や深海などの『死に続ける』環境であり、このような場所で働く人間には、多額の危険手当が払われることが多い。
**ATK/AnTi-Kernel aggresser
対霊核侵蝕体。
人智暦において、強力な知性体は数百、数千のHPを持つことも珍しくなく、まともにマテリアル体を壊しては直され壊しては直され……では埒が明かない。
ATKとは、効率的に、一撃で一気に再生限界を削り取るための、〝毒〟として作用する自律識術群と、それを精製する任意発動型スキルの呼称である。
干渉・改変しやすいマテリアル体やエーテル体下部などの、下位構造を損壊させても、容易く修復・再構成されるだけ。
効率よく多くの修復コストを払わせるには、自身にすら自在な操作は難しい、アストラル体とそれを保護するエーテル体最上部〝銀の揺り籠〟。合わせて&ruby(カーネル){霊核}と呼ばれる精神の中核/上位構造を叩くべき、なのだが、アストラル体やエーテル体は、&ruby(マテリアル){共通法則}界との直接的な入出力を持たない。
よって狙うのは間接攻撃。削れるHP自体は微々たるものでも、マテリアル体(と紐付けられたエーテル体下部)が損傷すれば、修復までの一瞬、情報的な隙ができる。
その傷口を侵入経路として流し込まれるのがATK────最上位のアストラル体を目指して敵情報構造内を駆け上がる、識術ウイルスである。
さながら刃に毒を塗るごとく、各種の攻撃にATKを〝載せる〟ことで、わずかな切り傷ひとつから一気にHPを数十、数百削ることが可能となる。
マテリアル体の損傷面積や体積が大きいほど、またその部位が脳や心臓などの重要部であるほど、そこから流し込めるATKの量も増えるので、『ATKの乗り物としての攻撃』も軽視はできない。
なお、ATKも識術の一種であるため、その載せやすさは自身の肉体を用いた殴蹴等がもっとも高い。ついで剣や槍などの手足を延長するもの。
飛び道具でも自身の認識そのものである識術や、己の腕で投げた礫などはそれなりのATKを付与できるが、銃火器や戦車・戦闘機といった、身体性や直感性が低いものにはATKを載せにくい。
(誰もがHPを持つ人智暦世界では、ただ頸動脈を切っただけ、脳天に針を刺しただけでは、人は死なない。よって人智暦世界の暗殺者には、一撃でターゲットのHPを超過するだけの、高いATK値が求められる)
(HP&ATKシステムによって強者に弱者が一矢報いることは不可能になってることが格差拡大の一因に……とか考えたけど銃社会のアメリカの格差を考えると殺傷可能性と格差にそう強い関連はないのか……?)
***ATKの〝属性〟
HP/Homeostasis Persistenceによってほぼ全生命が準不死と化した人智暦世界において、
なお敵や獲物に有効打を与えるための観念的・情報的な侵蝕毒ことATK。
その練り方・組み方には多種多様な系統や流派が存在するが、もっとも普遍的に使用されるのは、
【元型八素】から『生命に害を与えるもの』としての側面を抽出した、自然イメージ群である。
あくまでATKが各種攻撃に載せ・付与する『毒』である以上、攻撃の実体と載せるATKが一致しなければならない、というわけではない。
極論、実体としての氷の剣に、炎のATKを付与する、ということも不可能ではない。
が、認識を根幹とする識術において、『わかりやすい』『見たまま』であることは、何より強い力をもたらし、逆に直観に反する組み合わせはひどい効率の悪化を招く。
そのため、氷の剣には素直に氷のATKを載せるのが、正道であり常道。
『炎』──過剰で急速な反応による崩壊
『氷』──停滞と鈍麻による壊死
『風』──曝露と摩滅による風化
『土』──埋没と忘却による固化
『水』──絶縁と窒息による遮断
『雷』──伝導と短絡による亀裂
『光』──情報の上書きによる変質
『闇』──情報の消失による無化
**DEF/Diagnosis & Exclusion Filter
個人防壁。セキュリティ。免疫スキル。
ATKや、エーテルネット上の野良ウイルスなどの侵入体に対する、拒絶・防護機構。HPと同じく、程度の差はあれ(※)、あらゆる生命が所持する。
ATKによって削られるHPを大きく軽減できるが、あくまで注意しなければならないのは、DEFはATKに侵入されたあとに効果を発揮するもの。そもそも侵入させないための、物理的な強度や回避能力などは、また別の問題である。
(※HPと同じく、普通に数百数千数万倍の差が発生することも。ありすぎ。)
**AGI/Acceleration Gear of Intrinsic time
主観変速。任意発動型スキル。
あらゆる事象が認識によって形作られる人智暦において、『自身の主観速度の加速』と『自身の加速』は同義である。
思考のみにとどまらず、あらゆる動作が高速化し、かつ音速などの壁に阻まれることも、基本的にはない。
ただし、環領域の標準時間速度から外れすぎると、世界から〝振り落とされる〟あるいは、自分が世界を置き去りにしてしまい、
環領域という世界殻から落下。無明に放り出され、数秒と持たず意味消失してしまう。
そのためAGIの加速レートには、環領域ごとに必ず限界が存在する。
この限界を回避するための手法も研究されているものの、そもそもAGIの限界加速倍率に達せられる者自体が、ごく少数。
さらにその中から、一歩速すぎれば即消失する、存在論的チキンレースに参加しようとする者は、非常に稀少である。
AGIの主な測定基準としては、『現在、標準時間速度の何%の加速/減速状態か?』と『最大で、標準時間速度の何%まで加速できるか?』の二種があり、
基本的に、後者が100を下回ることはない。
また、『実際の速さ』は本来の反応速度・運動速度と、AGIによるその加速倍率の乗算であるため、ただAGIだけが速ければいい、というものではない。
分かりやすく言えば、AGI:600=6倍加速状態の人間よりも、AGI:100=等速の光の方が速いということ。
**界避
任意発動型スキル。
自身とマテリアル界との相互作用を断つことで、あらゆる攻撃を素通りさせ、無効化する。
しかしマテリアル界と相互作用しないとは、つまりその世界に存在しないということ。
界避状態に移行したその瞬間から、環領域という世界殻から形而上的座標がズレ始め、
数瞬のうちに無明<テュフロス>に投げ出され、自滅してしまう。
そのため界避状態に入った瞬間には、既に復帰・再接続プロセスを開始する必要があり、
実用的な界避時間は一瞬。連続使用することも難しい。
**万物の尺度
&ruby(オリジン){純正人類}の種族スキル。
ありとあらゆる環領域での存在を可能とし、また環領域内部の情報が五感で得られるようになる。ただそれだけのスキル。同時に、人智暦においてもっとも強力かつ、もっとも凶悪なスキルでもある。
基本的には、当地の法則への自己翻訳スキルとしてしか働かない。
領域を渡った際の変換ロスによる消耗を大きく抑えるほか、識術における解釈違いも、ある程度は軽減される。
では、渡った先の領域が、たとえば『二次元しか空間方向がない』とか。
『生物が成立するだけの複雑性を備えたミクロ法則を持たない』場合。
どうあがいても、この領域法則下では純正人類は成立しない場合────『万物の尺度』スキルは、その真価を発揮する。空間次元が足りないならば拡張し、生物が成立しないレベルで法則が単純すぎるなら勝手に複雑化させて。
領域法則の側を捻じ曲げることで、当該領域内における純正人類の存在を確立する(※)。
また、環領域内を飛び交う情報もまた、『どうあがいても人間の知覚系では理解できないもの』である場合、人間が理解できる形に歪められ、分割され、零落する。
一度内部に入られてしまえば、この法則改変は絶対かつ不可逆的。
ただひとりの純正人類の、ただひとつのスキルが、世界そのものであるはずの主観照典の力を、完全に上回るのである。
よって一部の環領域/主観照典は、領域間転移自体をシャットアウトすることで、純正人類の侵入を防いでいる。
純正人類が存在できない環領域、純正人類に理解できない情報の形は、純正人類が一度も立ち入ったことのない環領域の中にしか、存在しない。
(※とはいえ、あくまで【万物の尺度】スキルが保証しているのは、「理論上は存在できる」ことであって、「実際に生存できる」かはまた別の問題である)
**擬似・万物の尺度
純正人類の種族スキルである『万物の尺度』を、純正人類以外の種族が劣化模倣したスキル。
主に、他領域法則への可翻訳性が著しく低い魔族が、なお他の環領域で活動するために用いる。
しょせんはデッドコピーに過ぎず、本家『万物の尺度』の本質である、『自身を存在させるために領域法則の側を捻じ曲げる』ことは行えない。
あくまで他法則への、自身の可翻訳性や適合性を得る・高めるのみのもの。しかしその効果は絶大であり、後天的に得られる自己翻訳・領域適合用スキルの中では間違いなく最優といえる。
難点としては、ひとつ厄介な条件がある。
それは純正人類の種族スキルの模倣・再現であるために、発動する際には自身のカタチも純正人類を模倣・再現したモノ(擬人形態/アンスロポモーフィクス)に変化させる必要がある、ということ。
メタ的には、つまり人外が人化する理由付け。
**&ruby(アロトロープ){共通鋳型}
同祖体。エルフやドワーフなどの〝有名どころ〟が持つことが多い種族スキル。
別の環領域における同名の種族との互換性が保証される。
つまり、環領域Aに棲むエルフA種が、すでにエルフB種が確立している環領域Bに渡った場合、
『自身がエルフである』ことは維持したままA→Bの変換が可能ということ。
この変換は、種族名が同じである限り、魔族→魔族間ですら有効となる。
渡る先の環領域に同名種族が存在するなら、『擬似・万物の尺度』よりも強力な自己翻訳スキルになるが、存在しないなら何の役にも立たない。
**&ruby(デュアルスピーク){併列語法}
人智暦世界においてはごく一般的に行われる、言語的コミュニケーション。
旧世界における自然言語に相当する『音響言語<テセイ>』(※)と、
識術を用いた、認識・知覚の(直接的だが情報量を制限された、抽象性を保った)共有である『意味言語<ピュセイ>』を同時に発声することで、
『文面的な意味』の高精度な伝達と、『音声』に乗る機微や抑揚、洒落等を、異言語話者間でも同時に・並列的に伝達可能としている。
モノスピーク者にその感覚を表現するのは難しいが、あえて喩えるなら、常にテキスト上のルビ振りが『聴こえる』ようなもの。
(※【万物の尺度】たる純正人類を含めて、音声で話す種族がマジョリティなために音響言語、と一般に言われているが、実際には光学パターンによるテセイや大気中の微粒子成分、つまり匂いによるテセイもある)
身内のみで話したい、なるべく異種族や異領域出身者に聞かれたくない場合、意味言語を切り、音響言語のみで会話する場合もある。
2024-01-14T22:03:09+09:00
1705237389
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海戦:基礎設定
https://w.atwiki.jp/saraswati/pages/605.html
コンセプト:突如現れた通常兵器が効かず意思疎通できない系のアレと、
唯一それに対抗しうるのは選ばれた少女・女性だけ系のアレでインフレ海戦
まだまだ未完成:これから整地します
*【ネーレイデス】
西暦2098年末に起こった系外天体『13I/ネーレウス彗星』の地球衝突事件、その墜落点である南極より現れた、異起源の生体兵器群の総称。
(13I→13th Interstella object、十三番目に発見された恒星間天体ということ。1I/オウムアウア、2I/ボリソフ彗星の系譜)
名称はギリシア神話、海神ネーレウスの娘である、海の精霊たちより。
多種多様なタイプが存在し、大別して◯◯級+亜種を区別する場合は(ギリシア数字)型の識別名で呼称される。
アンピトリテ級、エーイオネー級Ⅰ型、スペイオー級Ⅳ型など。
名の通り、基本的な活動場所は海上と海中。理由は後述。
サイズはおおむね数十~数百メートル、&ruby(サーフェス){表層質感}は金属色や白磁、大理石めいたものなど、総じて無機的。
外形は、部位ごとに見れば腕、足、角、翼、尾など、生物の部位らしく見えるものだが、その配置はおよそ地球上のどの生物にも似つかない。なかでも翼や角などは、特に大きく、流麗典雅なシルエットを持つことが多い。異星・異教の神獣を象った巨像、とでもいうべき外見。
その起源は不明。精神構造も不明。ネーレイデスの出現以降、幾度となくコミュニケーションは試みられたが、そのすべてが無為に終わっている。
ただ、確実なことは二つ。
一つ、絶大な戦闘能力を持つこと。核攻撃すら単発ではまるで通じない防御力と、それ以上の指向性エネルギー攻撃を連射可能な攻撃力は、二十一世紀末のあらゆる兵器技術を過去にした。
二つ、人類に極めて敵対的であること。目的は不明ながら、出現から現在まで一貫して、ネーレイデスは執拗に人類を殺戮し続けている。
彼女らの出現によって、人類は地球の覇者たる資格を失った。
**&ruby(フォノンジャンプ){隔距離仮想熱伝導}
ネーレイデスを象徴する能力。おおよそ半径数kmの射程内の、任意の座標に対して、あたかも直接触れているかのごとくの高効率で熱を交換できる。略称は『跳熱』。
攻撃として用いる場合、半径数km内の任意の座標を瞬時に摂氏数万度まで加熱し、熱いプラズマの塊に変えることが可能。
これはアクティブ防御としても使用され、一定以上の速度でネーレイデスへ向かうあらゆる物体がフォノンジャンプにより自動迎撃される。あくまで加熱による融解-蒸発-電離を引き起こすだけで、運動量自体を直接変更するわけではない。
が、空力学に基づいて設計された砲弾やミサイルが、突然に乱雑な荷電粒子の塊に変じて、今まで通りに直進できるはずもない。空気抵抗により急速に減衰し、拡散する。ネーレイデスに対し、固体弾頭はまず届かない。
しかし、その本領は攻撃ではなく、廃熱にある。
自在な元素転換・核改変能を標準で備えるネーレイデスは、周辺の空気や水を数グラム喰らうだけで、莫大なエネルギーを捻出できる。
もっとも小型で貧弱なタイプの戦闘ユニットですら(※)、質量転換炉の推定最大出力は400テラワットを下らない。これは広島型原爆を毎秒、六発爆発させている以上のエネルギー量。大型の個体であれば数千TWの出力を持つものすら存在する。
(※直接戦闘を行わない、補助や支援、生殖などに特化した非戦闘型は、せいぜい数十ギガワット程度の出力しか持たないこともある)
(せいぜい?)
(重要なのはとにかくインフレスペック・バカ出力持ってるよ、という点なので、具体的な出力値の盛り具合はあとあと適当に変更するかも)
しかし、それでも熱力学第二法則よりは逃れられない。
扱うエネルギー自体が莫大であるなら、発熱もまた莫大なものとなる。数十メートルの躯体に数百TW、数百メートルの躯体に数千TWの出力では、たとえ体表面積すべてを海水に晒していたとしても、なお廃熱がとても追い付かない。
(単純な表面積でも足りない、というか実際には水蒸気爆発&ライデンフロスト効果あたりでまったく廃熱回らなそう)
だが、射程数km内の任意の座標と、熱交換を行えるフォノンジャンプがあれば、話は違う。
周辺数兆トンもの海水との熱的直結は、比類なき絶対の冷却効率を誇り、秒間数百テラジュール発生する莫大な発熱すら、完全に抑え込むことが可能。
もちろん長時間、複数体のネーレイデスが戦闘出力で活動すれば、周辺海域は煮える。沸騰して蒸発する。
が、蒸発した分だけフォノンジャンプの射程の外側から、海水は幾らでも流れ込む。
フォノンジャンプこそが、ネーレイデスの規格外の高出力を支えている、といっていい。
なお原理としては、カシミール効果を介した真空中の熱伝導、の拡張と推測されている。
しかし本来はせいぜいナノ~マイクロオーダーでしか働かない極微の量子効果を、いかなる方法で射程数キロというマクロスケールに引き延ばしているのかは不明。
あくまで接触相当の熱伝導を遠隔で引き起こす、という能力であるため、対象の温度や熱伝導率、熱容量などの影響は当然受ける。
ネーレイデスが基本的に海上や海中で活動するのは、見渡す限りの莫大な海水すべてを廃熱先として使えるため。
陸上や高空でも活動自体は可能だが、土も、空気も、冷却材としてあらゆる面で、海水に遥かに劣る。ゆえ、海から離れれば廃熱効率は大幅に下落。熱暴走による自壊を防ぐため、質量転換炉の出力が1%未満まで切り詰められ、通常兵器でも対抗可能な域まで弱体化する。
人操のネーレイデスである『アルゴノーツ』を除いた通常兵器のうち、至近距離での多重核爆撃/雷撃のみがネーレイデスを撃破しうるのも、実のところ単純な破壊力よりは、廃熱の問題である。
重要なのは熱線でも爆風でもなく、起爆の瞬間に生まれる数百万度の火球。複数の火球でネーレイデス周辺の海水すべてを呑み込み、一瞬のみ全方位の灼熱空間に囲い込むことで廃熱不能に陥らせ(※)、熱暴走に導き自壊させる。
(※核火球の超高熱・高圧プラズマ自体は、ネーレイデスの電磁障壁により弾かれ、その無機なる硬肌を灼くことは叶わない)
(※理論上は、フォノンジャンプによる熱の逆流は起こり得る。だが実際には何らかの対策がなされているようで、周辺温度をどれだけ上げても『廃熱不能』が限度。
幸い、あまりにも扱うエネルギーの桁が大きいためか、たった一瞬、完全に排熱を堰き止めることができれば、即オーバーロードで破裂する)
**超々重元素
Over173、TRans-Ustなどとも呼称される。ネーレイデスを構成する、原子数174以上の異様に『重い』、本来成立するはずのない元素群。
異様な強度や耐熱性だったり、核化学的な触媒効果であったり、常温超流動性だったり、未知の物性を有するものが多い。
存在しないはずの元素であり、かつ通常元素では再現困難な特性を持つことから、原子番号179〝ミスリル〟、原子番号202〝オリハルコン〟など、空想上の架空物質などの名を冠される。
なお、あくまで安定しているのはネーレイデス・コアよりの干渉ありき。
コアが失われれば(≒ネーレイデスが死ねば)、その躯体を構成していた超々重元素は一気に安定性を失い、
わずかな刺激で(指向性エネルギー兵器が飛び交う戦場では不安定物質への〝刺激〟に事欠くことはない)盛大にアルファ線・ベータ線・中性子線にガンマ線、あらゆる電離放射線を放出しながら、通常元素へと崩壊する。
つまり、まず斃すことが難しいのに、斃したら斃したで放射化汚染を撒き散らすということ。最悪。
現在研究されている超々重元素サンプルは、戦場でネーレイデスから奪ったものではなく、研究施設の電波暗室内で、アルゴノーツより丁寧に切り取られたもの。
**ネーレイデス・コア
その名の通り、ネーレイデスの中核をなす器官。
恒常性を保ちながら高速連鎖・高速反応し続ける素粒子の&ruby(カスケード){渦}であり、反応が止まれば即座に全体が崩壊/『死んで』しまうその特性上、解析は極めて困難。
見た目は、完全黒体の球と、それを縁取る黄金のリング。この光環は実体ではなく、強固な光の歪曲作用であるために、どの方向から見てもその外観は変わらない。
さながら金環日食、あるいはブラックホールの光子球、といった見た目だが、あくまでこの光学現象は電磁的なものであり、重力場に(有意な)影響は与えていない、とされる。現状、コアの生産能力を持つのは〝ネーレイデスを産むネーレイデス〟であるドーリス級のみ。
**電磁障壁
ネーレイデスが標準で搭載・展開する、対荷電粒子の防御機構。
ナノ秒単位で目まぐるしく変動する、超高強度の球殻状電磁フィールドであり、自身へ向かってくる荷電粒子をすべて偏向。軌道を逸らして受け流す。
高速変動パターンは荷電粒子分離能を有し、平均電荷では中性なプラズマも、まず器用に陽イオンと電子に寄り分けた上で、それぞれ別個に誘導可能。
(なんなら中性原子すら無理やり引き裂ける……かは未定)
(どうせネーレイデスに接近すればフォノンジャンプによる加熱でプラズマに分解されてしまうので、そこを詰める必要はないかもしれない)
対荷電粒子防御機構である電磁障壁を、なお荷電粒子ビームで打ち破る手段は、主に二つ。
一つは、単純に電磁障壁以上の運動量で突き破る。速度と質量は大きい方がよく、電荷は小さい方がよい。つまり電磁偏向で防御されにくい粒子とは、比電荷の小さい粒子であり、それはそもそも電磁加速することが難しい、ということでもある。
もう一つは、そもそも一撃で障壁を抜こうとは、はなから考えない攻略法。
電磁障壁の発振器官であるミスリルナノコイルは、常温超電導性と異様な機械的強度、さらに自己再組織化能力を併せ持つ。されど、頑丈ではあっても不壊ではない。
電磁気力が相互作用である以上、電磁障壁が荷電粒子に与えた偏向作用の反作用は、きっちり発振コイルへと帰ってくる。
単発であれば、コイルそれ自体や周辺組織の弾性、また全身ごと『押される』ことなどで、一定の負荷は吸収できる。
が、挟み撃ちにされれば、それぞれが電磁障壁を貫けない運動量/電荷比であったとしても反作用の逃がし先がなく、発振器に掛かる負荷は激増。コイルを破損させてしまえば、当然電磁障壁は低減~展開不能に陥る。
破損したコイルの再組織化・復元に掛かる時間は、個体差もあるがおおむね十秒前後。
それだけの時間があれば、本命を撃ち込むには十分である。
(上記はある程度簡略化した説明。実際にはナノコイルは無数にあるため、『万全/破損』の二値ではなく、どの部位の何割がどの程度健在か、という問題になる)
(いやでも体表全部にびっしり、とかだと戦闘中のステータス管理が複雑冗長になりそうなので、密集したナノコイル叢を一ユニットとして、全身合わせて六とか七ユニットある、ぐらい? 実際戦闘描写を試し書きしてから調整するかも)
また『高速変動する高強度電磁場である』ことから、副次効果として様々な波長の電磁パルスを放出する。
中には可視波長も含まれ、これが、あたかも神秘的な光暈を纏っているように、ヒトの眼には映る(蛍光灯と同じで、実際には明滅しているが、肉眼の時間分解能では連続した発光に見えてしまう)。
出現初期、ネーレイデスを神と/あるいはその御使いと崇めるカルトが全世界的に誕生したのは、この視覚効果によるところが大きい。人間の認知機能はどうしても視覚に大きく依存し、見た目によって受ける印象は左右されてしまう。
**転熱緩衝装甲
ネーレイデスが有する、基礎汎用防御機構。
特定の部位や器官に依るものではなく、その全身の構造/組成そのもの。フォースターミネイター、Entropy Enhancement Accelerant Architecture/EA2などとも呼称される。
一言でいえば、それは非常に高性能な、亜原子<フェムト>スケールで編まれた〝制振・衝撃吸収材〟である。
自身に入射した巨視的な衝撃~微小な粒子線による化学的・核化学的擾乱までのあらゆるエネルギーを、自動的に・高速かつ・高効率で、物理世界の全ての力の終着点。すなわち熱に変換し、もって自身の致命的な変形や変質を回避する。
何もしなくとも自然にそう進むはずのエネルギーの遷移の矢を、極限まで加速する構造体である、とも言える。
実のところ、転熱緩衝装甲それ単体の防御能力には限度がある。
あくまでエネルギーの総量は変わらないのだから、巨大な運動エネルギーを莫大な熱に変換して受け止めたところで、潰れはせずとも身が灼ける。
しかし周辺数兆トンもの海水との熱的直結、絶対の冷却能力を保証するフォノンジャンプとの併用により事実上、オーバーヒートという弱点は消失しており、
転熱緩衝装甲を突破する手段は熱変換/廃熱が追いつかないだけの超高エネルギーかつ超高密度の攻撃。あるいは&ruby(プロトンディケイア){単極化刀身}などの『結合』ではなく構成素粒子『それ自体』を砕く兵装しか存在しない。
ゲーム的に表現するなら、ほぼ全属性のダメージを固定値でカット。
ある個体の転熱緩衝装甲の容量が500であるなら、威力500以下の攻撃で受けるダメージは一律でゼロ。
501の威力で1ダメージ、600の威力でようやく100通る計算になる。
**鏡面層/高周波プラズマ防御帯
ネーレイデスが有する、二重の対レーザー防御機構。
まず前提として、ネーレイデスに対して加熱で分子結合を灼き切る、という尋常のレーザー攻撃は、極めて非効率的である。素の耐熱性に加えて、なによりネーレイデスにはフォノンジャンプが存在する。
着弾部位に与えられた熱量の大半は、即座に周辺の海水へと転送され、それで終わり。
よってネーレイデスに対して有効なレーザーとは、転熱緩衝容量を上回るエネルギー密度を叩き付け、もって問答無用の光崩壊で原子核ごとぶち壊す、超高強度場物理の領域でのパルス発振──それが、最低ライン。
汎用基礎防御で対応可能な域を超えて初めて、対レーザー防御である対鏡面層と高周波プラズマ防御帯の出番となる。
鏡面層は、ネーレイデス体表の積層装甲、上から数えて二枚目か三枚目あたりにある、文字通りの鏡面の層。超々重元素〝アイギス〟の特異物性により、あらゆる波長の電磁波を高効率で反射する。
高周波プラズマ防御帯は、電磁障壁の応用で形成・維持される、高密度に圧縮された電離気体の盾。
前者は装甲の一部であるため常在であり、後者は能動展開型。また対レーザー防御に限れば後者が遥かに優れるが、電磁障壁のリソースを割くため、対粒子ビーム防御は低減してしまう。
**前駆放射
いかに優れたレーザー発振器・粒子加速器であってもエネルギー損失はゼロではなく、
発振や加速の過程では、必ず投入エネルギーの一部が電磁パルスやニュートリノ等の放出という形で失われる。
この、撃ち出す過程で漏出する────言い換えれば、DEW発射の直前に放射されるエネルギーを、〝前駆放射〟と呼ぶ。その強度はおおむねエネルギーの総量に比例し、かつその比率は小さい。対人級のDEWであれば、前駆放射は検出不能なほど微弱なものでしかない。
が、西暦2113年現在の海戦、アルゴノーツとネーレイデスの戦闘において用いられる(≒有効打となりえる)DEWの出力はテラ~ペタジュール級。最大では百京エクサジュールに達するものすら存在する。
この域の投入エネルギー量であれば、その極一部の漏出でしかない前駆放射も十分に観測可能な強度を得る。結果、DEWが『発射された』ではなく『発射される』ことを、前駆放射の観測で一瞬だけ先んじて知覚可能。光速や亜光速のDEWをネーレイデスやアルゴノーツが対処可能な理由がこれ。
端的にいえば、目標内部に高エネルギー反応! がお互い筒抜けの状態ということ。威力が高い攻撃ほど、前駆放射もまた鮮明であり、ゆえに観測。
ただし最近は、チャージに時間を掛ける(=時間あたりの投入エネルギー量を減らす)ことで、観測しにくい微弱な前駆放射で高威力砲撃を放てる狙撃型や、
『あたかも前駆放射のような、単なる低エネルギー発振』で敵の防御リソースを空費させる空砲型などが双方に出現しており、前駆放射を巡った戦術も複雑化・多様化している。
ネーレイデス/アルゴノーツにとって、前駆放射を感知するためのセンサー感度は、単純なエネルギー出力や攻撃力、防御力などに並んで、重要な能力値である。
**バースター兵器
指向性エネルギー兵器のうち、発射機構の耐久性と耐用性を犠牲にしたものを指す言葉。
端的に言うなれば、一発撃つたびに銃身が熔け崩れて砲身が吹き飛ぶ、加速器や発振器というより『指向性をもって爆発する爆弾』である。
ある意味では、原始的な火薬銃器に回帰している、とも言える。
デメリットは、そのまま。耐久・耐用を軽視したものでは一発撃つごとに発射機構の修復・再生プロセスに時間を要し、
無視したものは完全な使い切り。連射は不能であり、こと継戦能力と経済性においては、標準的なDEWに大きく劣る。
ではメリットは?
主に挙げられるのは、三つ。一つは単純な出力。二つ目は一基あたりの生産コスト。
そして最後が、速射性ではない『即射性』である。
光速・亜光速のDEWに対し、ネーレイデス/アルゴノーツが対処可能な最大の理由は、前駆放射の観測である。
扱うエネルギーの総量が莫大であるがために、DEW発射直前の、割合では極僅かな電磁パルスやニュートリノの漏出すら、前兆として観測可能な強度を得てしまう。
高エネルギーな砲撃であれば、発生する前駆放射が鮮明となり、敵に対処されやすく、
一方でエネルギー量を減らせば前駆放射は読まれにくくなるものの、当てたところで有効打になりえない。
このジレンマに対する一つの解が、『チャージ時間を長く取り、時間あたりの投入エネルギー量を減らすことで、前駆放射をギリギリまで低減させ、観測されないようにする』スナイパー型であり、バースター兵器はその対極。
『どれだけ鮮明な前駆放射が発生・観測されようが、実射とのタイムラグが限りなく小さければ対処は不能』という、いわばクイック型である。通常の加速器や発振器では、砲身への負荷や制御の問題から、発射プロセス全体の所要時間の短縮にはどうしても限界があるが、
ただ点火して起爆するだけの、指向性の爆弾たるバースター兵器にはその制約は存在しない。敵手のDEWの種別や距離などにも左右されるが、条件がよければ『敵砲の前駆放射を見てから〝後の先〟を取る』ことすら可能となる。
**主なネーレイデス
***ドーリス級Ⅰ型
体長:約4300m
フォノンジャンプ射程:躯体末端から2.4km
推定最大出力:200TW
北極に三体存在する、生殖機能に特化した個体。ネーレイデスを産むネーレイデス。
***ドーリス級Ⅱ型
体長:約820m
フォノンジャンプ射程:躯体末端から2.3km
推定最大出力:500GW
元種であるⅠ型を、そのまま縮小したような外見。
***テティス級
多能性
***ディオーネー級
体高:約2000km
フォノンジャンプ射程:廃熱根の末端ごとに半径3.2km × 75本
推定最大出力:不明。最低でも70000TW以上。
ネーレイデスの絶大な戦闘能力は、あくまで海という廃熱先あってのもの。海から離れた内陸では、その力は大きく削がれ、通常兵器で対抗できるレベルまで弱体化する。ネーレイデス自身もそれを理解しているようで、基本的には陸に出ない。
ならば海は放棄して、よいのではないか? 自在な核変換を可能とするアルゴノーツが人類側にいる以上、もはや『構造』や『情報』ではない、単純な稀少元素やエネルギー資源の問題は、完全に解決された。
正体も分からぬぽっと出の侵略者に、母なる地球の七割を明け渡す屈辱。それを忍んででも、少しでも平和を得られ、一人でも戦死者を減らせるのなら、内陸に引きこもるべきではないか────という楽観・・を、木端微塵に粉砕した種その一。
初めて発見されたのは地中海、シチリア島付近。わずか一夜のうちに聳え立ち、ヨーロッパ・中東・西アジア全土とアフリカ大陸の赤道より北、の半径5000km範囲内すべての人類居住地を、レーザー爆撃で焦土に変えた。
死者数は直接被害だけでも十億を下らないとされ、これは一個体のネーレイデスとして最大。完熟個体は地中海の一体だけだが、海中で折り畳まれた状態で成長中の幼体が、カリブ海と東シナ海で一回ずつ発見されている。どちらも即座に最優先討伐対象に指定され、激戦の末、辛うじて撃破された。
四体目五体目がいつ、どこの海から生えてくるとも分からない以上、消極的な選択肢は完全に潰えた。積極的な偵察と、能動的な攻撃による支配圏の奪還で、少しでも『見えない海域』を削るほかない。
外観としては、高さ2000kmの、天を貫く塔。
頂点部には威力と連射速度、精度と同時斉射数を兼ね備えたレーザー砲塔。これがディオーネー級の唯一最大の武装となる。
基本的に直進しかしないレーザーは、地平線/水平線の向こうへの曲射ができず、見える範囲しか狙えない。ならば天高く見晴らしのいい位置から撃てばいい、というシンプルな発想を、極限まで突き詰めた形。
高度2000kmから見下ろす地平/水平線は、5000km以上も遠い。それはつまり、5000kmの有効射程を持つということ。
頂点部よりのレーザー射撃によって発生した熱量は、中間の『幹』内をマッハ100超で循環する超流動体に移されて即座に2000kmの距離を滑り落ち、そして枝分かれした最下部。海中に潜る75本の〝根〟から捨てられる。
軌道上の砲塔と、海中の廃熱根を、長さ2000kmの伝熱ケーブルで繋ぐことで、高度と海の恩恵を両取りできるようになった種、ともいえる。
なお重量バランス的には、最下部の廃熱根は、まったく荷重を担っていない。
人工衛星めいて低軌道と中軌道の境界に位置する砲塔からの垂れ下がり&中間部に分散配置されたイオンジェット・スラスター群による上昇力の合わせ技。イオンジェットの影響で、中間部には常に雷雲のリングが纏わりついている。
高高度から広範囲に超威力のレーザーの雨を降らせる、という一点に純化した種であるため、基本性能は極めて低い。
移動能力はほぼ皆無で、防御面は素の装甲も電磁障壁も脆弱。しかし絶大な威力と射程、連射速度によって、そもそも人類勢力を半径5000km圏内に寄せ付けない。
『背の高さゆえ、遠方に射線を通せる』ということは、『遠方から射線を通される』ことも意味するが、精度と威力減衰の両面において、5000kmの距離はアルゴノーツにとっても、なお遠い。双方が双方を狙える位置関係であるのなら、精度と威力と連射性に優れるディオーネー級が当然、優位。
そのうえ射程限界ギリギリの円上にはスペイオー級やパノペー級などの通常種が大量に配備されており、これがカウンタースナイプの難度をさらに上げている。
射程円の内側にも多数のネーレイデスが巡回しているため、潜航による接近も困難。大ボス枠。
***アンピトリテ級
体高:82メートル
フォノンジャンプ射程:半径5.3km
推定最大出力:5800TW
直接的・総合的な戦闘能力で比較するなら、間違いなく最強のネーレイデス。外観は極めて人間に近しく、一言でいえば女体化した阿修羅像。
攻撃防御機動感知、そのすべてがトップクラス。
その強大さに反比例するかのように個体数は少なく、亜種は確認されていない。
***メリテー級
体高:10メートル
フォノンジャンプ射程:12.9km、ただし同時に繋げるのはせいぜい二、三点のみ
推定最大出力:20TW
内陸に引きこもれば戦わなくていいのでは? という楽観を打ち砕いた種その三。
フォノンジャンプ以外に一切攻撃手段を持たない最弱の、そして最悪のネーレイデス。
特徴としては、量産性の高さと、そこそこの防御力。そして全ネーレイデス中トップのフォノンジャンプ射程と熱容量を持つ、直径10mの渦巻く球体。
単体では、メリテー級はいっさい脅威にならない。攻撃手段がフォノンジャンプによる遠隔加熱しかないうえ、それすら積極的には使わない。防御力も、サイズや出力のわりには硬い、程度。およそ海上では、何の役に立つこともない。
メリテー級が最悪と呼ばれる所以は、陸上にこそ存在する。
量産性の高さによる、個体数の多さ。そして最長のフォノンジャンプ射程と、最大の熱容量。これをもって実現されるのは、海岸を終点としてリレー方式で展延される、他種からメリテー級、メリテー級からメリテー級へのフォノンジャンプを使った陸上廃熱ネットワーク。
海から遠く離れた場所で、なお海を使った冷却効率を得るためのコンセプト、という点では、ディオーネー級に近しい。違いは縦か横か、有線式か無線式か。
多数のメリテー級のバックアップを受けることにより、本来海がなければ全力の1%も出せないネーレイデスは、極乾の砂漠の中ですらフルスペックの六割程度の出力を発揮可能。これは通常兵器ではまったく歯が立たない領域であり、
かつ唯一全力のネーレイデスに対抗しうるアルゴノーツにも、『メリテー級に相当する発現形』は現状、存在していない。つまり、メリテー級のバックアップを受けた陸上のネーレイデスを斃すことは、ほぼ不可能であるということ。
現状、メリテー級の廃熱ネットワークに対抗する唯一の手段は、文字通りの水際作戦。
ネットワーク終端を断ち、またメリテー級の新規上陸を阻止する。これ以外には存在しない。
多分作中の山場の絶望枠として登場。飛行能力を獲得したⅡ型も出るかも?
*アルゴノーツ
西暦2113年現在、ネーレイデスに真っ向から対抗しうる、唯一の人類戦力。
海往く英雄。次代の霊長。人融人操のネーレイデス。
総称はギリシア神話より。発現形タイプごとの呼称はレーベル:◯◯。亜種を区別する場合には元型にa、亜型にs1、s2、s3以下略。
レーベル:ヘラクレス、レーベル:イピクロスs1、レーベル:スサノオs2、レーベル:ラーマaなど。
当初は発現形の識別コードも総称と同じくギリシア神話、アルゴー船のクルーのみから取られていたが、多様な発現形が確認されたことでのネタ切れ&自分の民族の神話を使いたい、というエスニシティ的要望で、いまは世界中の神話英雄の混淆状態。
製造手段は単純。人間の女性を素体として、鹵獲したネーレイデス・コア。未解明・高密度の素粒子作用の塊を、融合・同化させる。
同化の過程で元の肉体は立体走査をかけられながら分解、消失し、代わりに超々重元素の巨人躯体が形成。その演算器官内に、素体となった人間の精神パターンが転写される。
人間的精神を残したままに、ネーレイデスとまったく同質の能力を備え、また唯一ネーレイデスからのフォノンジャンプを〝拒絶〟できる、唯一最強の生体兵器にその身を変ずる。
(具体的な融合プロセスは未定。まず神経を繋ぐ? 体内にブチ込む? どうしよ……)
これが現状、唯一それなりの成功確率を持つ、鹵獲コアの制御・利用手段。少ないサンプルから偶然に見出された、原理も機序も分からないままの、それでも一定の実用性を持つ経験則である。
人間以外の地球生物はことごとく適合せず、人間の中でも、理由は不明なものの同化の成功例は女性のみ。
さらなる研究を重ねれば、ネーレイデス・コアの人工生産や、人間を犠牲にする必要のない制御手段が確立される可能性も、なくはない。
だが現状、地球上に余裕のある戦線など存在しない。
成功するかも分からない、どころか暴走させて施設ごと吹き飛ばす可能性すらある実験に貴重な鹵獲コアを費やすぐらいなら、早くアルゴノーツに仕立てて戦力に回すべきだ、という風潮は、近視眼的だが同時に、今日を生き延びるための切実な要請である。
**HTSL
neuralized Hadron-cluster TranScript Language/神経化されたハドロン群への転写用簡易記述言語。
アルゴノーツの演算器官に介入し、機能を書き加えることを可能としたプログラム言語と、それによって書かれたアプリケーション群の総称である。
現世代の全アルゴノーツにインストールされているメジャーなHTSLとしては、
・兵装統合管制HTSL『軍事大要<Epitoma rei militaris>』
・戦術データリンクHTSL『アルゴスアイド』
・併列語法<デュアルスピーク>インプラントHTSL『コールアスペイド』
などが存在する。
開発体制としては【人物名A】主導と【人物名B】主導の二チームが存在しており、製作された各HTSLは、そのネーミングで区別が可能。
古典のラテン名を引用したものがA産、英語のイディオムを用いたものがB産である。
**μ言語、ミューオン
HTSLの発展形として、単なる情報処理能力の利用に留まらず、アルゴノーツの代謝制御系に介入。
その躯体を望む方向に変異<ミューテーション>させ、ハードウェアレベルでの機能追加を可能とした特殊言語を〝μ言語〟。
μ言語によって書かれた追加機能<アドオン>を、〝ミューオン〟と呼ぶ。
通常のHTSL以上にアルゴノーツ≒ネーレイデスの深層、原理不明と未解明の塊に踏み込むμ言語/ミューオンの研究は難航しており、現時点で開発に成功したものは
・分子アセンブラ展開ミューオン『事物の本性について<De rerum natura>』
の一つしか存在していない。
**併列語法<デュアルスピーク>
HTSL『コールアフィグ』を導入した者同士でのみ可能な、特殊な言語的コミュニケーション。
自然言語=『音響言語<テセイ>』の〝発声〟と同時に、
神経言語学的アプローチによって人間の標準的な抽象イメージ群をモデル化・テンプレート化した『意味言語<ピュセイ>』を〝発信〟することで、
『文面的な意味』の高精度な伝達と、『音声』に乗る機微や抑揚、洒落等を、異言語話者間でも同時に・並列的に伝達可能としている。
モノスピーク者にその感覚を表現するのは難しいが、あえて喩えるなら、常にテキストに振られるルビが『聴こえる』ようなもの。
**コア鹵獲対損失比率/イグゼンテ・レシオ/ExenteRatio
ネーレイデス・コアの養殖や人工生産は、現状まったく目途が立っていない。
となると必然、新たなアルゴノーツを造るには、戦場でネーレイデスから鹵獲するほかなく、それが出来るのは今いるアルゴノーツだけ。コア鹵獲対損失比率とは、キルレシオと出生率の複合のようなもの。
が、コアを壊さぬように躯体から引きずり出すのは、単にコアを破壊して斃すよりも、遥かに難しい。西暦2113年現在、イグゼンテレシオは1.02程度を彷徨っている。一応、現状維持はできているものの、わずかに下振れするだけで1を切る。
なお時代的推移としては、始原にして最強のアルゴノーツ、レーベル:ヘラクレス/(人物名未定)がただ独りで無双していた時期がもっとも高く、
彼女が鹵獲したコアで生み出された第二世代以降はずっと緩やかに降下していき、今の1.02周辺で落ち着いた。
これはアルゴノーツ側の質の低下ではなく、敵であるネーレイデス側の適応進化・多様化が原因。出現当初にネーレイデスが相手にしていたのは、もっぱら潜水艦や航空機といった、圧倒的格下。工夫や戦術はまったく必要とされず、ゆえに発展しなかった。
しかしアルゴノーツという同質の敵を得たことで、急速にネーレイデスは多様化し、また戦術らしきものを使い始めている。
**義体
アルゴノーツに支給される、遠隔操作型のサイバネ義体。
ヒトとしての精神を持ったままに、ヒトではないモノへと変じた彼女たちの、正気や自己定義を保つために開発された。
人間と見分けの付かない容姿、同等の五感と運動機能に加え、涙、唾液、発汗などの体液や、不随意運動などもほぼ完璧に再現されている。標準設定ではオフになっているが、排泄・月経などの不便な生理機能もいちおう搭載。
アルゴノーツの多くは、非戦闘時はこの義体に身体感覚を移行させ、基地や艦内で人間的な生活を行っている。なかにはこの身体こそ本当の自分であり、アルゴノーツ体の方が遠隔操作なのだ、と自己暗示を掛けている者も。その幻想が、当人の精神衛生上、必要であるのなら、とあえて訂正はされない。
基本的には人間であったころ、アルゴノーツ化直前時の容姿をそのまま再現するが、望めば好きなようにアバターメイクも可能。
ちなみにアルゴノーツの死亡時には、基地や母艦に残された、空っぽの義体を遺体に見立てて葬儀を行うことが多い。
***トランスコフィン
アルゴノーツの戦闘時に義体を収納しておくための、棺状のクレイドル。
彼女たちはトランスコフィンに入って眠りにつき、海往く英雄として目覚め、出撃し、帰投後は調整槽の中で巨躯を眠りに沈めて、トランスコフィンの中で人間として目覚める。
実のところ、アルゴノーツ本体と義体の身体感覚の切り替えに、トランスコフィンを介する必要は、技術的には存在しない。基地内/艦内LANが健在であれば瞬時にチェンジ可能。
しかし戦場と日常、超々重元素の巨躯と、人体を限りなく模した義体の間に、なんの柵もなく、いとも容易く切り替えられてしまう、というのは、ひどい精神的不協和を生む。
いま、自分はどちらの身体なのか? という肉体操作の混線や、セルフイメージの混濁は、アルゴノーツ開発の最初期から存在した、重篤な問題だった。
それを解決したのが、トランスコフィンという『今からアルゴノーツとして戦場に立つ』『今から人間としての生をなぞる』という境界の線引きである。
棺への出入りと一瞬の眠りという〝儀式〟を、必ず挟む。ただそれだけで、自己定義の混乱や肉体認識の齟齬の発症率は、劇的に減少した。
加えて当人以外、周辺への影響という点でも、今まで人間らしく動いていたヒト型が、急に生気を失って崩れ落ち、一定時間後にまた急に動き出す、という光景は気味が悪く、〝アルゴノーツは人間ではない〟ことを強く印象付けてしまう。
移行の瞬間を棺の中に隠して『見えなく』するのは、本質的な違いを生みはないが、印象の問題としては実際有効。
**海底基地/&ruby(アルゴー船){隠装型潜水母艦}
アルゴノーツの運用基地や母艦は、基本的にアルゴノーツとネーレイデスの戦闘に参加しない。
いくら銃砲やミサイルを積み込み、装甲を分厚くしたところで、ネーレイデスに対しては等しく無力。援護すらどれだけ果たせるかは疑わしい。
よって重視されるのは三点。
まず、そもそも標的にされないためのステルス性。次に余波や流れ弾などでの『狙われてすらいないが死んだ』を避けるための装甲能力。
どちらも、それ自体の性能だけで実現するよりは、海水という天然の遮蔽・緩衝材を利用した方が効率がよい。というわけで、二十二世紀の軍事基地や艦船などは、基本的に深海に建造され・潜航する。
そして最後が、アルゴノーツの心のケア。これがもっとも重要。
冗談のようだが、そもそもいかなる基地、いかなる艦船も、戦闘能力は言うまでもなく、航行能力、航続能力、ステルス性、潜航可能深度、その他ありとあらゆる領域で、アルゴノーツより劣っている。物理な効率だけなら、アルゴノーツに『後方』はほとんど必要がない。
しかし、それでも──もはや元の脳は神経細胞ひとつ残っておらず、そこにあるのは超々重元素の演算器官に転写・模倣されたものに過ぎないとしても──アルゴノーツは、人間の精神を持つ。
ひたすら身一つでの航行と戦闘を繰り返すだけの日々では、躯体が保っても心が壊れる。人体を擬した義体で、人間として生活できる空間は、彼女らの精神衛生上、必要とされた。
*&ruby(ヘヴンズシェード){天幕}
地球全天を覆う、&ruby(メタマテリアル){光学特異体}の層。
アルゴノーツとネーレイデスの戦闘による副次被害は多岐に渡るが、中でも最大のものが、地球の直接的な温暖化である。
質量転換によって生み出され・そして最終的に海に棄てられる熱量の敵味方の合計は、小規模戦でも数ペタワット。大規模戦なら何十ペタワットにも達する。
地球に射す太陽光の総エネルギー量が約175ペタワットであることを鑑みれば、このエネルギー出力は異常そのもの。
24時間地球の半分を照らし続ける太陽とは違い、一回の戦闘は数分~数十分程度で決着するとしてもなお、気象・天候・生態系に留まらず、惑星スケールでの熱収支を破綻させるには十分といえる。
際限なく上昇し続ける地球温度の対抗策として生み出されたのがこの『天幕』であり、高空に散布されたメタマテリアル層によって、太陽光を大きく遮断。
前々世紀に提唱された『核の冬』に近い現象を人為的に引き起こすことで、なんとか熱収支の帳尻を合わせている。
もっとも合わせているのはあくまで全体・平均の帳尻に過ぎず、実際に起きているのは、全地球の寒冷化と、戦闘海域の極端な高温化→熱拡散の、温度分布の二極化である。
*&ruby(クラウドカロウラ){雲の花冠}
アルゴノーツとネーレイデスの戦闘によって発生する、成層圏まで達するほど巨大な、特殊積乱雲。
蒸発した大量の海水が、しかし戦闘の衝撃波によって一塊の雲のかたちを保てず、細切れに吹き飛ばされ続けることで、無数の雲片からなる、独特の雲柱が形成される。
*&ruby(シェルドポリス){閉殻都市}
数億人の残存人類が暮らす、超巨大居住構造体。
地球を何周とする衝撃波、輻射光、放射化汚染、全体的な寒冷化と極めて局所的に起きる超高温化、それがもたらす常態化した異常気象、壊滅した生態系。
もはや閉殻都市の外で、人が生きていくことはできない。
*強硬偵察・独立遊撃部隊/通称『リフコマ』
*ポリウコス
Polioukhos。
都市守護者、という意味。アルゴノーツの中でも、戦闘に不向きだった者が回される役目。
アルゴノーツの持つ自在な核改変・元素転換能力により、閉殻都市の維持に必要なエネルギーと元素資源を提供する。
ポリウコスという事実上の半永久機関、兼、万有無尽の鉱脈無しに、閉殻都市は存続できない。
*ネーレウス彗星
13I。第十三番目に発見された恒星間天体。本来ならば太陽系内部を横切り、そのまま宇宙の果てに去っていくはずの軌道だったが、木星付近での探査機との接触直後に急速に軌道を変更。地球、南極へと墜落した。
(外殻の氷が大量の塩化ナトリウムを含むことと、年代測定の結果、極めてその起源が古いが判明したことから『海の老人』ネーレウスの名前を……とか考えてるけど、
ネーレウス彗星の存在を知る→名付けのタイミングと、探査機の接触で人類がネーレウス彗星の性質を知るまでの時間差をどうするか……別用途で飛ばしてた探査機の宇宙的至近距離に突如出現→探査機がそっちに向かわせて人類がデータを取る→ネーレウス彗星と命名→直後、軌道変更?)
*アルケイディア計画
耐久性や環境適応性、耐用年数などにおいて人体に遥かに勝るアルゴノーツに、可能な限りの&ruby(ゲノム){遺伝子情報}と&ruby(ミーム){知識や文化}を積み込み、これを方舟として用いる外宇宙への播種計画。
まず第一段階で居住可能惑星を捜索、第二段階でのテラフォーミング後、第三段階で遺伝子アーカイブと分子アセンブラから地球生態圏と人類文明を再生。ネーレイデスの存在しない理想郷を作り出す。
十年以上前に発案されたこの計画だが、いまだに実行はされていない。
現在実用化されている分子アセンブラ展開ミューオン『事物の本性について』は、静物は自在に構築できても、無数の有機分子の動的相互作用の総体である生物の合成には対応していない、つまり計画に必須のピースが未だ揃っていない。
が、仮に生物を合成できるミューオンが完成したとしてもなお、やはりアルケイディア計画の実行は、そのコストとリスクの観点から困難であると考えられている。
そもそもアルケイディア計画に関係なく、終わりのない激戦の日々に嫌気がさしたアルゴノーツが脱走、全海域が戦場と化した地球から静かな宇宙に逃げ出そうとすることは現時点でもまれにあり──そのすべてが撃墜されている。
海という廃熱先がなければ、アルゴノーツはその力の一端も発揮できない。
反撃はできず、防御力も機動力も格段に落ちた状態で、一方的に浴びせられる地対空ならぬ海対空・海対宙射撃の弾幕を潜り抜けることが、まず困難。
平時ではなんの脅威にもならないような低出力・拡散型のDEWすら、廃熱ができない状況では致命傷になりかねない。
加え、なんとか通常種からの攻撃を耐え、地球圏を離脱したとして。広大な太陽系内空間で、地球の地中海が視認可能な位置のすべての瞬間が、ディオーネー級よりの超長距離狙撃(※)リスクに晒される。
(より正確には、狙撃というより拡散・連続照射での確実な炙り焼き。廃熱先がない宇宙では、エネルギー密度自体は低くとも、再現なく加熱され続ければ、いつか必ず破綻する)
一応、多くの犠牲を払えば、ディオーネー級が健在の状況でもなお、外宇宙へと数体のアルゴノーツを送り出すことは可能──とシミュレーションされているが、多数のアルゴノーツを失って、少数のアルゴノーツを外宇宙に送り出したあとも、地球世界は続く。数億人の人類と、数千体のネーレイデスは地上に残る。
戦況の悪化により、もはや地球と残存人類は守れない、わずかでもあっても遠未来・遠星系での文明再建の可能性に賭けるしかない、と判断されるか、
あるいは人類が盛り返し、多少削れても十分な余力を得る、願うことならネーレイデスの掃討、最低でもディオーネー級の撃破によって、再び開かれた宇宙を手にするか……
いずれにせよ、現状の拮抗が崩れない限り、アルケイディア計画が実行されることはない。
【未定】
キャラもプロットもネーレイデスやネーレウス彗星の謎も、ことごとくがオール未定。
主戦力であるアルゴノーツがほぼほぼ女性だけな以上、殺伐百合にする感じか……?
他が男主人公かつ三人称ばっかになりそうな感じなんで、これは女主人公の一人称でやるのがいいかな、みたいな
2023-12-28T15:49:49+09:00
1703746189
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*厨二妄想サラスヴァティ&color(red){(したらば掲示板が不安定なので仮拠点)}&font(l){@wiki}王立魔法図書館
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*&color(red){★メイン避難所である"したらば掲示板"の状態が不安定なので、もしもの時は下のコメント欄の方で相談等々をお願いします。★}
――――ようこそ、王立魔法図書館へ。
ここは、VIP発の黒歴史の産物を晒すスレ……通称&bold(){『サラスヴァティスレ』}に書き記された
多くの物語の断片を集め保存している場所、『[[サラスヴァティ王立魔法図書館>スレ独自の設定]]』だ。
*[[初めて来た方へ]]
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(次々回の儀式は&color(#ff8c00){2021年1月29日}です)}
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【2021年】
1月:08日、29日
2月:19日
3月:12日
4月:02日、23日
5月:14日
}
#areaedit(end)
重複を防ぐため、儀式の開始の際は[[避難所>https://jbbs.shitaraba.net/study/9980/]]に報告をお忘れなきように
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&bold(){第十三番目の禁書(避難所)}
https://jbbs.shitaraba.net/study/9980/
&bold(){暗黒の記憶の召喚(メインうpろだ)}
http://u9.getuploader.com/saraswati/
&bold(){深淵に封じられし記憶の封印解除(予備うpろだ)}
http://ux.getuploader.com/saraswati2/
**・合言葉はサラスヴァティ!!
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- すっかり忘れてました、すいません……というか、スレがまだ続いてたことに驚きを隠せません。 メンバー自動承認にしておきました -- 作った人 (2009-09-23 19:41:37)
- ↑お疲れ様です!また時間があるときにでもスレに顔出してくれるとみんな喜びます>< -- 名無しさん (2009-09-23 19:45:04)
- なんとなくコメを残す -- 名無しさん (2009-10-13 19:45:17)
- 次スレいつ? -- 名無しさん (2009-12-04 14:18:20)
- ↑今日 -- 名無しさん (2009-12-04 20:20:12)
- ありがとー -- 名無しさん (2010-07-12 21:39:15)
- まだこのスレが続いてた事に感動を隠せない -- 名無しさん (2011-09-12 02:12:10)
- もうすぐ10万 -- 名無しさん (2014-07-27 12:14:22)
- スレいつたつの -- 名無しさん (2014-07-30 10:55:58)
- 次は来週金曜だから15日かな -- 名無しさん (2014-08-06 20:04:54)
- 俺もなんとなくコメ残しちゃお -- 名無しさん (2016-04-21 01:11:37)
- ↑お前だけずるい。俺もコメを残す -- 名無しさん (2016-06-17 06:35:59)
- 何だかんだで来年の11月で丁度10年か。なるほど、俺も老いる訳だ -- 名無しさん (2017-02-11 09:50:55)
- ここに足跡を残しておく -- 名無しさん (2018-02-03 18:24:05)
- 我もコメントを残しておこう -- 名無しさん (2019-04-05 23:04:04)
- したらばこのまま無くなるかもみたいな噂マジ? -- 名無しさん (2019-11-03 17:10:31)
- お、こっちにはコメントがあった! -- 名無しさん (2019-11-03 17:46:40)
- 途中書き込み失礼。 -- 名無しさん (2019-11-03 17:46:59)
- もーーエンター押すと書き込んでしまうごめん! とにかく、どっかに代理を設ける検討をしておいたほうがいいかもね -- 名無しさん (2019-11-03 17:48:24)
- もしこのまましたらばが消滅したら、次の儀式までにどうにかしたいな -- 名無しさん (2019-11-03 18:45:49)
- そやね。まぁまだなんともだけど、『よもやまBBS』なる所はどうかと自分は検討してる -- 名無しさん (2019-11-03 18:51:43)
- 避難所の避難所が必要だなこりゃ -- 名無しさん (2019-11-03 20:31:12)
- もしやと思ったらこっちには人いたか。一応したらばの状況が分かるまではここを仮拠点にしようぜ!(ここ最近wikiの動きも鈍い事だし) -- 名無しさん (2019-11-03 20:39:59)
- したらば消えててビビった -- 名無しさん (2019-11-03 20:50:57)
- ここ仮拠点にするしかないよなぁ。ていうかここあってよかったわ。気付いてる人がどれだけ居るかだけど。したらば本当消えてるっぽいならここで色々決めようか -- 名無しさん (2019-11-03 21:01:29)
- 多分VIPのスレは流石に見るだろうし、そこで新しい避難所とか告知とかする感じだろうか。 -- 名無しさん (2019-11-03 21:09:14)
- まさかしたらばが消えるとは思ってもみなかったわ -- 名無しさん (2019-11-03 21:09:29)
- ちょっとトップページを分かりやすく編集。 -- 名無しさん (2019-11-03 21:23:39)
- お疲れ。何にせよ今は公式からの情報を待つしかないかな? 過去ログ飛んだらヤダなぁ……残ってたら良いな -- 名無しさん (2019-11-03 22:28:33)
- ちょっと前にしたらば運営のブログでリニューアルの件話してたっぽいからその関係のエラーかな?サ終はないと思うけど事故でログ消えてないこと祈るばかり http://blog.livedoor.jp/shitarababbs/archives/19953707.html -- 名無しさん (2019-11-03 22:42:51)
- あと予備ろだに即興競作の要項とテーマ一覧あげといたぜ(予定通りの進行になるかは謎) -- 名無しさん (2019-11-03 22:50:03)
- 運営の公式サイトやフェイスブックまで消えてるそうなので、それが本当ならリニューアルとは考えづらい。 事前告知はあったけど、今からリニューアルを始めるのでしたらば使えませんみたいなアナウンスは無かったもんな -- 名無しさん (2019-11-03 23:17:41)
- 時期が時期ということもあり色々推測が飛び交ってるけど、復活したとしてもいずれ2つ目の避難所はほしいね。 -- 名無しさん (2019-11-03 23:30:23)
- 早く管理人スレでどうでもいい話に華を咲かせたいぜ -- 名無しさん (2019-11-04 00:20:42)
- 過去ログだけでも回収したいな… -- 名無しさん (2019-11-04 00:24:35)
- そういえばここのディスコードとかなかったっけ -- 名無しさん (2019-11-04 01:01:03)
- 復活したっぽい? -- 名無しさん (2019-11-04 04:13:38)
- おふ、とりま復活したね。しかし普通に怖いのでここをもしもの時の仮拠点とはしておこう -- 名無しさん (2019-11-04 05:17:27)
- ちょっと本格的に重くなってきたね -- 名無しさん (2020-02-24 01:47:09)
- 完全に重いね。運営の脱税云々の不穏な話もあるし、これはちょっとどうなるもんか。 -- 名無しさん (2020-02-24 19:30:32)
- したらば公式から何のアナウンスンーもないのが困りものですな……死ぬときは死亡申告して……(無茶振り) -- 名無しさん (2020-02-24 22:57:51)
- こういう時に限ってネタが降りてきてこまる -- 名無しさん (2020-02-24 22:59:55)
- マジでサービス終了しちゃった場合の移転先って考えてあるんだっけ? -- 名無しさん (2020-02-24 23:48:44)
- 今の所移転先は無いね。やはり考えておくべきか。あと、どうやら5chも同時期にDDoS攻撃食らって落ちてたらしいんで、その影響もあるかも。 -- 名無しさん (2020-02-25 06:16:57)
- ディスコードはあるっぽいけど使用感違いすぎるのがな……。いい感じの匿名掲示板あればいいんだけど。いいところ見つかる前に完全に死んだらとりあえずここに集合だな -- 名無しさん (2020-02-25 13:28:37)
- とりあえずだいぶ軽くなったっぽい -- 名無しさん (2020-02-25 13:29:33)
- 少し前から避難所に入れないんだがこっちの環境の問題じゃなくてもしかして板消えた? -- 名無しさん (2021-04-19 08:55:04)
- 儀式にあんまり来れない… -- ハク (2023-11-19 22:16:40)
- 今ってあんまり活動してないの? -- 名無しさん (2023-11-20 14:03:46)
- 今はdiscordにだいぶ活動の場が移ってる感じですね -- 名無しさん (2023-11-22 19:07:03)
- へー -- 名無しさん (2023-11-23 13:25:04)
#comment
2023-11-23T13:25:04+09:00
1700713504
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ミメル・ヴァルティス
https://w.atwiki.jp/saraswati/pages/613.html
*お知らせ
***ミメルヴァルティスの自己紹介は無亥ハクに名前を変え、ページを移転します。
URL[[無亥 ハク]]
2023-11-19T19:36:30+09:00
1700390190
-
創世:基礎設定
https://w.atwiki.jp/saraswati/pages/607.html
コンセプト:スタンド的な召喚型並列身体としての異能ロボ、物理法則、オントロジー、状態機械としての物理法則と世界、終末と次なる創世、無意味、永劫回帰、超人
*世界について①:基本部分
作中での呼称は主に『この世界』『いまの世界』『再始暦世界』など。世界そのものを表す固有名詞は存在しない。別の世界の存在は空想されてはいるものの、実在を裏付ける事象は(少なくとも、表向きには)確認されていない。
ヒトが知覚する巨視的な世界としては、大枠としては地球(以降、西暦世界)に近しい。すなわち人間が存在し、その眼には光が映り、耳では音が聴こえ、鼻では微小粒子のいくらかを嗅ぎ分け、上には天があり、下には地があり、大気があり、重力がある。火は燃え、水は流れ、風が吹く。
だが、微視的・根本的にはまったく異なる物理法則が適用されている。物質やエネルギーの最小構成単位は『&ruby(エレメント){元子}』と呼ばれる粒子であり、これは量子力学的な波動性や不定性を有さない。その結合原理さえ、仮想光子の交換を介した電磁相互作用とは似ても似つかない。
ほか、重力は時空間の歪みではなく、地面方向へ働く力学定数。
熱は振動そのものではなく、振動などから生成される、『熱元子』というれっきとした粒子である。
当然、その中に生きる〝ヒト〟の肉体が、地球人類と同一であるはずはない。
その細胞構造、代謝機構、極微のあらゆるプロセスが、『元子』・『連子』の化学法則に準じたもの。原子・分子のそれとはまったく異なる。
にも関わらず、容姿や身体能力、臓器の機能や配置、知覚系に精神性といった巨視的・抽象的な階層では、再始暦世界の住人は、異様なまでに地球人類と似通っている。
*世界について②:ビジュアル的には?
空は変化のない、果てなき曇天。
地は灰と褐に枯れ果てた、不毛の荒野。血の汚濁に染まった海。それを覆い、霞み、たなびく、水ならざる虚ろの霧。
世界の中心に立つ&ruby(バベル){銀の直塔}。虚霧の中から現れる、鋼の巨獣たち。
そして、終わりかけの世界の中で、その胎に人の営みを宿す&ruby(メガストラクチュアル・アーコロジー){超巨大居住構造物}群と、その守り人たる&ruby(ネフィル){機巨人}。
*ネフィル
機なるヒト型。鋼の巨躯。
再始暦世界において主力兵器として運用される、巨大人型機械の総称。
『&ruby(オブリヴィオン){断絶}』以前のロストテクノロジーの中でも群を抜いた高度技術の結晶であり、多くの知識が忘却された再始暦世界においての新造はまず不可能である、とされている。
主な特徴として挙げられるのは、三つ。
***一つ、異様なまでの多様性。
ネフィルには、同型が一機たりとも存在しない。すなわち千機以上存在する、そのすべてが&ruby(ワンオフ){一点モノ}である。
肉眼で分かる、巨視的・ハードウェア的な領域では、全機が完全な独自仕様。同一素体のバージョン違い、のようなものさえ存在しない。
筐体を構成するマシンセルや演算核の物理アーキテクチャ、その上に載る制御OSやサポートプログラムなどは、一応、系統だてて大別できる。とはいえ同一の機能を担うマシンセルでも百種以上あることは珍しくないうえ、それぞれの品種内でも細かな&ruby(カスタム){差異}が存在し、その組み合わせも千差万別。やはり同一品は存在しない。
強固な代謝・修復・再生能力を備えるネフィルは、完成さえすれば基本、メンテナンスは不要。整備性を考える必要はあまりない。
だとしても、独自仕様の機械巨人が千種以上ともなれば、製造以前に設計だけでも気の遠くなるようなコストが掛かるはず。
多様であることが、様々な事態への対応力を高めるとしても、あまりに過剰。量産効果を投げ捨てすぎている。少なくとも、まともな工業製品ではありえない。
いったいなぜ、このようなものが造られたのかは不明である。『&ruby(オブリヴィオン){断絶}』以前に何が起こったのかを、再始暦世界の人間はほとんど解き明かせていない。
***二つ、絶大な戦闘能力。
確かなのは、ネフィルが極めて有用であること。強力無比な、兵器たりえること。
大質量の筐体は、しかし鈍重を意味しない。おおむね30メートル弱~40メートルほど、人間の二十倍前後の縮尺を以てなお、&ruby(・・・・・・・){見かけ上ですら}アスリート並み~それ以上の動作を容易く行える。
それだけの絶大な馬力、緻密な姿勢制御能、慣性や反作用の負荷に耐えうる強度を、ネフィルは持つ。
ただ、その巨体をもって走り、殴り、蹴る────それだけで、再始暦世界で新造されたあらゆる銃砲を凌駕する破壊力を発揮可能。もちろん同類よりの打撃を受け止めることも、両者の格闘技能に余程の差がない限りは当然できる。
それがマシンセルの代謝により再生さえするのだから、再始暦製の兵器では、撃破は不可能といってよい。
しかし、実のところ。ネフィルという技術体系において最重要なのは、&ruby(フィジカル){物理性能}ではない。いかに強力で高機能であっても、あくまで筐体。容れ物に過ぎない。
その中枢、本体は、脳にして心臓たる演算核。それがもたらす絶大な計算資源による、大規模述式(※)の高速実行こそが真価である。
(※述式→平たくいえば今作における魔法的サムシング。虚霧を介して物理世界を記述する変数を書き換え、無から物質やエネルギーを引っ張り出す。莫大な計算資源を要する。詳しくは後述)
わずかコンマ数秒で、虚空から音速の鉄塊を、熱そのものを凝固させた熔刃を、天裂く雷撃を、高密度の爆薬塊を────その他、あらゆる高エネルギー現象を確率の海から引き出す攻性述式の脅威は、言うに及ばず。
無から物質を取り出せるという特性による、即席の工作能力、
自身の運動量の部分改変になどによる高い機動力、
無から有を生み出す述式と、有を有のまま加工するマシンセルを組み合わせることにより、総質量をごっそり失うような損傷すら、外部からの資材供給を受けることなくスタンドアロンに復元可能。
さらに一部のネフィルは物理量/変数の改変に留まらず、物理法則そのものの改竄すら可能とする。
ファンタジー的に表現するなら、頑強さと機敏さを兼ね備えた鋼巨人にして、並ぶものなき最高位魔導師。
***三つ、並列型第二身体。
再始暦世界において最強の座に坐すネフィルだが、ひとつ決定的な弱点が存在する。これはネフィルの操縦(?)方式と密接に関連する。
ネフィルは適性のある、というより〝相性〟がいい人間との&ruby(ペアリング){同調}を経ない限り、起動すらできない。そのくせ解体しようとすれば自動で暴れ出すため、同調できる人間が見出されるまでは格納庫に眠らせるほかない。保有数の30%が実働しているなら、かなり運のいい方。
十機あっても一機も(自勢力の中からは)同調者が見つからない────ということすら、そう珍しいことではない。なぜ著しく使い手を選ぶ仕様なのかは、そのワンオフ性と並んで謎。やはりまともな工業製品ではない。
では、同調できた人間──&ruby(テスタメンタ){同調者}と呼ばれる極めて稀少、特別、必然的に特権階級に据えられる人間たちは、いかにしてネフィルを操作するのか?
その答えは、まったく自分自身の体として。自然体かつ自在に。
増設された第二の人体、並列する身体性として、ネフィルは制御される。一応、主体は脳の側にある(ネフィルが破壊されてもテスタメンタは死にはしないが、テスタメンタが死ねばネフィルは停止し、新たな同調者が現れるまで再びスリープモードに入る)ものの、単なるマスタースレイブとは程遠い。
脳髄と情報的に接合され、ひとつの複雑系、対なす精神の器として機能する主演算核は、もはや補助脳ならぬ並列脳、といって過言ではない。一心双体。
脳髄と主演算核の間で、いかなる形で情報がやり取りされているのかは、その論理プロトコルも物理的通信手段も、実のところ定かでない(※)。
しかし現在、テスタメンタとネフィル間にどれだけの距離、幾枚の壁を挟もうが、その繋がりが切れた事例は確認されていない。
(※Nephil-011〝ゼクレイネ〟の同調者、ラキア・ヘルンが自らのネフィルの隠匿領域ブラックボックスに侵入を試みたところ、『同義性共振マトリクス』なる名称を掠めとることには成功したものの、それがどのような原理で・どのように実装されているかは依然として不明である)
そのため、テスタメンタを得て実働可能なネフィルには、兵器や重機としての価値のほかに、
傍聴不能かつジャミング不能、両者が健在である限り、決して不通も遅延も起こり得ない、究極の&ruby(・・・){通信機}としての価値もある。
多くのテスタメンタを擁する三大勢力が、虚霧の影響で長距離通信が難しい再始暦世界において、数十隻の&ruby(コロニー){都市}を連携させ、広い勢力圏を維持できる理由がこれ。
加えて、亜述式『&ruby(シアミア){近似座標}』により、同調しているネフィルとテスタメンタは瞬時に、もう一方の存在位置への実体化/空間跳躍すら可能。
移動、奇襲、応戦、退避、など使い道は無限大。ただし、転移先に十分な体積と濃度の虚霧(=巨視的不確定性)が必要。いかに同義存在、〝自分〟同士の引力であっても、確固たる現実を割り裂くことはできない。転移に異物を巻き込んで運搬するのも、まったく不可能ではないが制約多し。他人は明確に無理。
またこの転移は『引き寄せる』形でしか使えないため、たとえば窮地に陥ったテスタメンタが、遠方に配置していた自身のネフィルを召喚してしまえば、当然二点間の通信機としての役目は果たせなくなるし、再び元いた遠方に戻すには通常の移動手段を使うしかない。
***戦闘中の短距離転移について
亜述式『&ruby(シアミア){近似座標}』を使った戦闘中の短距離転移については、大抵のテスタメンタが一度は思い付く。
が、後述するベイルアウトと同じく、ネフィルが必要とされるほどの戦場に、短時間とはいえ転移座標として生身を晒すことのリスクは極大であるため、基本的に使われない。
**モジュール構成
多様極まるネフィルだが、それでも大枠として、多くの機体が共有するフォーマットは存在する。
西暦世界の自動車に喩えるならば、エンジンもシャーシもトランスミッションも電装系も、何から何まで違う車種であっても、『エンジン』や『シャーシ』というモジュールの概念は共有するのと同じこと。あくまで『多くの機体が共有する』であり、例外機も多く存在する。
ネフィルを構成するパーツは、まず二つに大別できる。
すなわち脳にして心臓、最重要にして再生不可能、装甲の奥深くに隠された真紅の結晶コンピューター『&ruby(ブレインコア){演算核}』と、
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演算核それ自体についての詳細な説明は後述。この項目では『ネフィルに搭載されている演算核』に絞る。
共通して、真紅の(=理論値ギリギリまで微細化された、最高位の)演算核を大体積かつ複数基、搭載する。あくまで共通しているのは回路密度であり、具体的なアーキテクチャには機体毎に個性がある。そのため行う計算・動かすアプリケーションには得手不得手が存在する。
とはいえ、そもそもの水準が極めて高いため、基本動作の範疇ではコアの特性は表面化しない。100の処理能力があれば十分なところに14000を使おうが36000であろうが、大差はない。
有意な差異が生じるのは、主に二点。一つは計算資源のぶつけ合いである架層戦。そしてもう一つの、前者以上に重要なのが、『述式』の実行能力である。
述式の行使に必要となる全精度物理演算は、ネフィルの莫大な計算資源をもってしてもなお、幾枚と抽象化レイヤーを挟んだ汎用計算で処理するには、とてつもなく〝重い〟。
またその時間発展を計算可能・記述可能な粒子数が、そのまま述式の最大出力・規模に直結する以上、こればかりはどれだけあっても十分とは言えない。
よって、他機より遥かに優れた述式の実行能力を持つネフィルとは、すなわち&ruby(・・・){非汎用}計算────特定の元子の振る舞いのシミュレーションに特化した&ruby(ハードウェア・アクセラレーター){専用回路}に、コア体積の何割かを割いているということ。
コア内でアクセラレーターが占める体積が大きくなればなるほど、特定の述式の実行能力は飛躍的に伸びていくが、もちろんその他の演算能力は割りを喰う。
(基本的に、搭載する演算核の総体積はあまり変わらない)
アクセラレーターをほぼ持たない完全汎用型、複数種をつまみ食いする多角型、一目的の専用回路にコア体積の大半を割く特化型など、ネフィルのコア特性は非常に多様。
熱学述式最強と謳われる機体、Nephil-232〝ラーヴェア〟などは、搭載コアの総体積の九割以上が熱元子シミュレーションに特化したアクセラレーターで占められている。そのため熱学以外の述式はてんでからきし。
**演算核の主/副。
ネフィルに搭載される複数基の&ruby(ブレインコア){演算核}は、等価ではない。胴体内に据えられる、もっとも大体積かつ中枢機能を担うものを&ruby(セントラル・コア){主演算核}、全身に分散配置される小型のものを&ruby(ペリフェラル・コア){副演算核}と呼称する。
主演算核はまさしくネフィルの本体であり、これを破壊されることがネフィルにとっての〝死〟。
副演算核は失われても機能停止には至らないが、総演算性能は当然低下する(※)。
(※副演算核が破壊された場合、占めていた空間を骨格材が埋めるため、その部位の筐体強度は微妙に上がる。本当に微妙。演算性能の永続的低下を補うほどのメリットではない)
また、ネフィルに搭載されている演算核は、記述光晶の基本機能(=外界への述式出力)を内蔵する。
そのため装甲を解放し、演算核を外界に晒せば、そこからダイレクトに述式を発動可能。外装の記述光晶を経由するよりも、微妙に効率に優れる…………のだが、記述光晶と違って演算核は再生不可能。主演算核ならいうまでもなく、副演算核でも壊れれば永続的な性能低下は避けられない。せっかく分厚い装甲で防護されているそれを、あえて外界に晒け出すリスクに、『微妙に効率に優れる』程度のリターンでは見合わない。
ゆえ、装甲解放による述式の直出力が使われる機会はあまりない。
強いていうなら、戦闘中に外装の記述光晶をすべて破壊され、再生を待つ時間はない、などの状況。
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それ以外の全部位、マシンセル(とその精製物)の集合体であり、本体・中枢である演算核さえ無事なら何度でも再生・復元可能な『筐体』。
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**&ruby(ライトクリスタル){記述光晶}
述式の出力装置にしてマルチセンサーである、水晶めいた無色透明の素子結晶体。掌部や武器などに大型のものが、小型のものは内装外装問わずに全身に配置される。
フチなし眼鏡のように、記述光晶のブロックを最低限の金属関節で繋いだ水晶の手と、硬質な全身を縁取る透き通った浮彫りレリーフは、ネフィルを象徴する共通意匠である。
ネフィルに搭載されるタイプの、性能面での最大の特徴は、通常の外界出力に加えて、記述光晶それ自体の虚霧耐性/観測強度の可動性と、それにより記述光晶自体を述式の対象にできること。
通常、既製の物品を、非破壊的に述式の対象にすることは難しい。
述式が『曖昧にしてすり替える』・『現実を一度溶かして再形成する』ものである以上、対象の虚霧耐性が高ければそもそも実行不可能で、かといって虚霧に溶かせてしまえば元々あった情報や構造はどうしても失われてしまう。
だが独立したセンサー素子の集合体である、ネフィル搭載の記述光晶は、意図的に観測対象、範囲、解像度、すなわち虚霧耐性を制御できる。素子ひとつひとつの内部構造は強固に維持したまま、全体の運動ベクトルを不確定にする、平均温度は変えないまま、熱量を光晶内で偏らせる────など。
無論、その過程で素子間の結合がちぎれることなどは多々あるが、即時の再結晶化が可能なので問題なし。
多くのネフィルが標準で備える力学系述式『曳航推進』は、搭載する記述光晶群の運動量を改変し、その記述光晶に他部位が押され・引かれることで機体全体を移動させるもの。
運動量変更の負荷が大きく記述光晶にかかるため、『曳航推進』のみで戦闘機動を行うことは基本的にはできない(※)。あくまで動作の補助や、非戦闘時の飛行などに使われる。
(※述式は原理上、どうしても発動にコンマ数秒のラグが生じる。そのため戦闘中に縦横無尽に飛び回りながら、リアルタイムで述式で負荷をキャンセル────のような使い方は二重の意味で不可能。
逆にいえば、非戦闘時などに。前もって予定した動きをなぞるなら、コンマ数秒前に述式の発動を開始する、という手段が取れるため、ある程度は負荷キャン可能。ラグの時間自体も微妙にゆらぐため限度はあるが、戦闘中に比べれば最大加速度/許容荷重は大きく伸びる)
**機能流体
ネフィルの筐体内、&ruby(アクティブキャヴァナス){動的立体流路形成材}内を流れる液体金属。
総重量の1/3~1/2程度を占める。機血。色は機体毎に異なる。
マシンセルそのものや、その餌である連子片の循環・培養、
熱の伝導や衝撃の吸収、
電力の補助導体&簡易コンデンサー、
油圧ならぬ血圧アクチュエータ、
機体内であえて偏らせることでの質量分布の変更、高速で周回させることでジャイロ効果を得る、など姿勢制御の補助にも使われる。非常に多機能。
**&ruby(アクティブキャヴァナス){動的立体流路形成材}
孔の密度、本数、直径、経路etc……あらゆる性質をリアルタイムに変形可能な、多孔質材。流量の大きいストレートな大動脈が一瞬で毛細血管群に分割され、次の瞬間には海綿めいた立体孔の塊に変じ、また大動脈に舞い戻る。
すなわち全体がパイプでありスポンジであり、同時にポンプ。機能流体の循環経路や速度、水圧、機体内分布を緻密にコントロール可能な理由がこれ。
損傷時の〝止血〟も一瞬。
**格納腔
ネフィルの腹部などに存在することが多い、直径数メートル程度の空間。内壁の一部はディスプレイになっており、外部の光景などを表示可能。
同時並行型の身体性制御であり、視界を含めた知覚系も並列二重に感覚でき、また二者の物理的距離がどれだけ開こうが接続の速度・帯域・安定性はいっさい落ちることがない=至近距離でも制御精度が向上したりはしない、というネフィルの特性上、テスタメンタ自身が乗り込んでも、あまりメリットはない。
あくまで貨物室もしくは客室、テスタメンタ本人ではなく、モノや他人を載せるためのスペース、と言える。
**&ruby(テラトストラクチャ){催奇建材}
厳密には、ネフィルを構成するモジュールではない。
同調者を得ていないネフィルは、普段はうんともすんとも言わないくせ、解体しようとすれば全自動で暴れ出す。
が、既にテスタメンタと同調し、テスタメンタの意志で稼働しているネフィルならば、テスタメンタ自身が協力的である限り、サンプルを切り出すことに抵抗はない。
ネフィルを構成するマシンセル、という最高峰の連子機械を、継続的に安定して入手できる。その研究価値は、絶大な戦闘能力と絶対の通信能力に並んで、実働可能なネフィルがもたらす莫大な益の一つ。
が、ネフィルの筐体部を構成するマシンセルは、基本的に&ruby(セントラル・コア){本体}との接続が断たれてから一定時間で自壊を開始。元の形だけは残るものの、極微機械群としての情報や機能は完全に死に絶えた、灰色の化石に変貌する。
そのうえ本来のタイムリミット前でも、外部からの走査や解析を認識すれば、高熱と共に急激な崩壊を起こして砂塵と化す。
このマシンセルの持つ機密保持システムは、テスタメンタ当人にも解除不能。よって貴重なサンプルを毎朝手に入れては、昼前には同質量の無価値な石や塵を廃棄する、というのが、再始暦世界におけるネフィル担当のリバース・エンジニアの日常である。
しかしまれに、偶然運よく、マシンセルをハック可能な信号パターンや薬物組成などが、発見される事例も存在する。
しょせんは理解のないまぐれ当たりの異常動作、命令を聞かせるなどもっての他で、基本的に可能なのは『自壊しない』~よくてせいぜい、『与えた物質を材料に、サンプル元の本来の周辺部位が復元される』まで。
その『復元』もきわめて不完全なものであり、元のネフィルに比べて形状やサイズがひどく歪んで捻じくれた、奇形発達するケースが多い。
が、いかに歪んだ、異常・暴走・奇形発達したマシンセルであってもなお、それは高度なロストテクノロジーの結晶。
単純なマテリアルとしての強度や耐熱性、自己修復性であれ、あるいは物質の変成能力であれ、必ず何らかの使い道が存在し、これを催奇建材と呼称する。
単純な物体としての強度が高く、フレーム材などに流用されるものを『奇骨』。
物質の変成・加工能力を持つものを『歪臓』。
巨視的なパワーを発揮するものを、『化筋』と呼ぶ。
なお、ネフィルの独自仕様性から、催奇建材のレシピを他のネフィルに使い回すことは、基本的にできない。
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*【テスタメンタ/スティグマ】
ネフィルとの同調によって得られるのは、ネフィルという機の巨躯のみではない。
元の、生身の側にも生体保全用統合医療システム〝スティグマ〟が&ruby(インプラント){移植}され、肉体の強度や治癒能力が飛躍的に上昇。筋力などもアシストされるほか、不老性まで付与される。
この〝スティグマ〟は、おおよそ二つのユニットからなる。
一つは、紅玉をあつらえたような腕輪や首輪(位置には個人差アリ)。よく見ると皮膚と癒着融合している。嵌め込まれた紅い宝玉は小型の最高位演算核であり、これ単体でも対人クラスの述式なら高速で連射可能。
テスタメンタであることを示す、分かりやすい外見的サイン。
もう一つは、全身を侵襲する&ruby(バイオマテリアル){生体適合材料}の金属繊維網〝コクーン〟。
真皮下から骨髄まで、くまなくに根を張り、行き渡り、ミクロの領域では繊維表面の有機連子マニピュレーターによってあらゆる生理機能に介入。
マクロの領域では、単純に人体に高い防弾・防刃・耐衝撃性を与えるほか(※)、
大きな外傷を受けた場合には繊維自体が鉗子と縫合糸を兼ねて即座に傷口を縫い合わせ、運動機能に障害が生じている場合は繊維が束なり触手と変じ、四肢の機能を代行する。
脳髄さえ無事であれば、テスタメンタが死ぬことはない。
(※ダイラタント流体めいて強い衝撃を受けた時のみ機能するので、普段からテスタメンタの肌がガチガチに硬い、というわけではない。また、真皮のすぐ下まで侵襲しているが巧妙にカモフラージュされており、肌から透けて見えることも、平時はない。
ただしダメージを受け防御機構が発動した時や、急速な肉体再生のために繊維が活性化した際などは、皮膚下で蠢く繊維が浮き彫りになる)
(〝スティグマ〟の金属繊維は外見に影響を与えないが、体重は当然増える。だいたい本来の値×1.5倍程度。繊維は人工筋肉としてのパワーアシストも担うため、当人の主観では体が重くなったとは感じない)
高い身体能力と、小型とはいえ最高位演算核を持つテスタメンタは、それ自身も超人といって差し支えない。
とはいえ、あくまで人体の規格の延長上にしては強い、であり、腕力や耐久性などの肉体性能としては、同等の技術レベルの&ruby(ネフィル){機巨人}に対抗しうるものではない。
が、同義性共振マトリクスという絶対の通信システムにより、己のネフィルの計算資源と常時直結しているため、述式の実行能力や架層戦の接続ノードとしての有用性においては、ネフィルに近い水準を発揮可能。
再始暦世界において、最強の正面戦闘能力を持つのがネフィルの機体であり、サイズや隠密性に対して最優の破壊能力を持つのがテスタメンタの肉体である。
なお、〝スティグマ〟こそがネフィルとテスタメンタを繋ぐ、マンマシンインターフェイスなのでは? と誤解されることが多いが、実際には異なる。
〝スティグマ〟の機能に不全が生じても、脳髄とネフィル主演算核の両者が健在であれば、ネフィルとテスタメンタの同調には影響は及ばない。
〝スティグマ〟によって強化されたテスタメンタの肉体は、少なくとも生命維持の領域においては、衣食住をいっさい必要としない。、身&ruby(・・){二つ}で、数百~数千年(=演算核の寿命)の時を生き続けることが可能。
それはつまり、生存に他人を必要としなくなる、ということでもある。
**同調率
ネフィルとテスタメンタのペアごとに存在する値。
低ければその動作にはどうしても小さなブレやラグが生まれ、一方で高ければ、本来の肉体以上に鋭く精密な動作が可能となる。
ネフィル同士の近接戦闘においては、彼我の同調率に5%の遅れを取ればかなり不利、10%以上の開きがあればまず勝てない、とされている。
最低限の起動ラインが80%、最高で99%台。100%に到達した事例は確認されていない。算出基準・方法は不明。
**確率融解/単躯制働
一心双体であるテスタメンタが、亜述式『&ruby(デリテナ){確率融解}』によってあえて一方の身体を形而下世界から消失させ、単独の身体で活動する状態を、『単躯制働』と呼ぶ。縮めて『単躯』とも。対義語は双躯制働。
定義上はどちらを消し/残してもよいのだが、実際に使われるのは、もっぱら生身の側を消失させた、ネフィルのみでの活動。
通常ならば『確率融解』によって消失させた物質の、実世界への復元や回収は不能だが、テスタメンタとネフィルの同義性だけはそれを成せる。通常空間中の遠方にいるのとまったく同じように、『近似座標』で至近距離に即召喚可能。
召喚による実体化の瞬間の状態は、『確率融解』による消失直前とまったく同じ。そのため脳髄と演算核間で同期を取りなおす必要があり、復帰した側の身体は半秒ほど硬直する。
戦略・戦術のレイヤーにおいては、単躯制働はまったくもって不要、どころか不利益でしかない。
両方が実体で活動していれば、別行動を取らせることも、通信装置として使うことも、一回きりとはいえ即座の空間跳躍も可能というのに、なぜ、わざわざひとつを消して、ひとつの身体で運用する必要があるのか?
しかし戦闘のレイヤーにおいて────ネフィルの単躯制働の恩恵は、あまりにも大きい。 まず、同調率+10%相当の動作の精密性や即応性の向上。加えて感覚の鋭敏化(ハードウェアのセンサー感度は変わらないものの、精神の側がより深く没入できるようになる)。
そしてなによりのアドバンテージとなるのが、個人差はあるものの、最大で3倍以上(※)にも達する主観時間の加速。
双躯時では二つの身体、二つの頭脳を一つの意識、一つの時間認識に統合するため、主演算核側の共振エミュレーターに課せられているクロック上限が、単躯時には解放される。
(※しかしそもそも、単純な計算能力としては、ネフィルの主演算核はヒト精神を数万倍の速度で実行できてもおかしくない。
それがせいぜい、数倍が限界となる理由は不明。阻まれる、という現象のみがある)
単躯制働に移行した瞬間、ネフィルの動きは目に見えて変わる。ネフィルに対抗できるのはネフィルだけ。ならば単躯制働に移行したネフィルに対抗できるのは、同じ単躯のネフィルか、さもなくば双躯を複数機。
本来ならば、戦闘の優位が戦術・戦略の優位に勝ることはない。
しかしネフィルという稀少な決戦兵器に、戦力の九割を預ける再始暦世界においては、ネフィルの戦闘の優位こそが、すなわち戦略・戦術の優位となる。
***ベイルアウト
単躯制働中のネフィルが破壊されれば、当然その人物は死体も残らず(確率融解による消失から回収できないまま)死ぬ。ベイルアウトとは、追い詰められた単躯ネフィルが最期の一瞬に、せめてもの悪あがきとしてテスタメンタの肉体を召喚する行為を指す。
双躯状態ならば、ネフィルが破壊されても(廃人化しかねないほどの精神的ショックは受けるものの)テスタメンタが死ぬことはない────が、単躯のネフィルとは、紛れもなく再始暦世界において最強の存在。
それが滅ぼされるような激烈な戦場に、生身で放り出されては、どのみち生存率はそう高くない。
*虚霧
正式名称は『事象不定場』。物質というよりは、場、空間、系の『状態』という方が適切である。視覚化された不確定性。曖昧さそのもの。
本来、再始暦世界の物理法則は決定論的である。物質やエネルギーの最小構成単位である『元子』は量子的な不確定性や粒子/波動の二重性を持たない。いかなる時でも粒子として振る舞い、またそのパラメータは常に一意な値を取る。
そのため『ある一瞬』の状態さえ完璧に把握できれば、元子やその集合が取りうる挙動、辿る未来は理論上(※)、完璧に予測可能となる。
(※実際には、観測精度と計算資源の問題から、全精度未来予測が可能なのは、小規模な閉じた系のみ)
だが、虚霧という巨視的な不確定性。あたかも霧のように見える/振る舞う〝曖昧さ〟に満ちた系では、そうではない。
あらゆる実在が揺らぎ、物理量は一意性を失う。
虚霧への暴露により、十分な存在確率を保てなくなり、事実上消滅することを俗に『溶ける』『融ける』などと表現する。
構成元子間の相互作用が強く、複雑なものほど虚霧に対する耐性は高い。そのため原則として気体より液体、液体より固体の方が虚霧耐性は上。
人体……というか生体はリアルタイムで進行し続ける化学作用、相互観測の塊であるため、極めて高い虚霧耐性を持ち、多少の虚霧濃度では小揺るぎもしない。
一方で、代謝が止まった死体の虚霧耐性はそこまで高くはない。遺体を高濃度の虚霧に晒して消失させる〝霧葬〟は、火葬や化学葬に並び、再始暦世界ではポピュラーな葬送手段である。
また、虚霧は符号化し(※)、物理空間ではなく架層空間内に保持することが可能。
(※具体的には? なんか情報理論とか混ぜていい感じにしたいけど己の無知無知さが牙を剥く……)
虚霧に対して保存則は、厳密には成立していない。濃度が低ければ、系内の相互作用の観測効果に削り切られて消失し、逆にある一点の濃度を超えれば、坂を転げ落ちるように曖昧さが増大。最終的には『虚海』と化す。
**虚海
虚霧の究極系。無限小の大きさを持つ確率が無限数、重なり合った空間状態。すべてが在り、何も無い。
一切の光元子を発しないが、なぜか人の眼には『向こう側を持たない、真なる透明』と映る。長時間見続けると精神の均衡に悪影響。
どれだけ高い虚霧耐性を持っていても虚海内に侵入すれば問答無用で消失し、またいかなる述式・亜述式でも確定させることは不可能。発生した虚海に対して取れる手段は、『触らない』のみ。
なお、虚海化ギリギリの高濃度虚霧をL化物質などを用いて押し留め→着弾点で機能停止させて周辺を虚海化、そこにあった一切を問答無用で消失させる『虚海化弾頭』なる兵器も開発されている。
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<大洪水>
実は、虚海が虚霧の究極系というのは主従が逆転した認識である。
あらゆる可能性────変数たる物理量に留まらず、定数や演算子、法則そのものを無数に内包する虚海は、いわば分化全能性を持った世界の胚。
人類世界は虚海の分化によって創られ、虚海への還元・初期化によって終焉を迎える。
虚霧とは、創世後の虚海の残り香であり、終末における虚海の氾濫『大洪水』の先触れ。過渡期にのみ現れる、虚海の付随物に過ぎない。
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*述式
虚霧を介し、物理系の変数を書き換える技術。確率制御。魔法めいた何か。大地は枯れ果て、海は赤く染まった再始暦世界において、ほぼ唯一の物質・エネルギー資源を得る手段でもある。
原理としては、端的なアナロジーとして「曖昧にしてすり替える」「現実という強固な氷を一度溶かし、好きな形に再凝固させる」と説明される。
必要なものは三つ。
まず第一に、望む事象の規模に対して十分な体積と濃度(不確定度合の大きさ)をもった虚霧。
虚霧濃度が低い(物理系全体が強固な一意性、確実性を持つ)環境中では、自ら記述光晶より虚霧を散布する。既に十分濃い虚霧が満ちた環境では、在るものをそのまま使えばいい。
第二に、望む事象をコンマ数秒分、元子ひとつひとつのレベルでその時間発展をシミュレートする全精度物理演算。最終的な&ruby(レンダリング){出力}さえ物理学的に正しければ、それを導いた演算過程は問わない。
しかし周辺の光量や温度、虚霧自体のゆらぎなどの外因変数を(非全精度/だがそれなりの高精度で)組み込む必要があるため、一度行った物理演算を保存して使い回すことは、基本的に不可能。
そして第三に、実相記述言語『クリファ』に演算結果を載せての、光学パターンという形での虚霧内への高密度情報投射。
一瞬を切り取った静的な状態記述では意味がなく、コンマ数秒間の連続出力で、引き起こしたい時間発展をリアルタイムで書き込み続けてようやく、虚霧がひとつの事象へと収束し、実物理状態として固着する。
戦場の華、主攻撃手段であると同時に、終わりかけの再始暦世界で物質・エネルギー資源を得るほぼ唯一の方法。
作り出す元子が一種から二種混合になるだけでも相互作用が複雑化し、必要計算量が爆発的に跳ね上がるため、資源目的の述式(※)で生成するのはもっぱら単一元素のインゴット。
作り出した複数種のインゴットを素材に、普通の形而下的物理的手段で合成や冶金といった加工を行う、する、という手段が取られる。
(※軍事目的で使われる攻性述式も、もっともメジャーなのは単一種類の元子を大量に生成して大量にぶつけるシンプルなタイプ。
複雑な化学物質を作る述式を、実戦的な出力・規模で扱うには、ダアト述式ほどではないにせよ、相当な計算資源が必要となる)
**亜述式
虚霧を利用した技術のうち、全精度物理演算を必要としないもの。
虚霧にモノを溶かして消し去る確率融解<デリテナ>や、それを散布型の防御幕として用いる減衰霧幕<フォルミ>、ネフィル同調者が使う近似座標<シアミア>などが該当する。
*実相記述言語〈クリファ〉
述式の行使に必須となる、出自不明の言語。元子の状態変数と時間発展を完全に記述可能。
言語、とは名付けられているものの、自然言語からは程遠い。文法と情報量の両面において、人間が直に読み解くのは極めて困難。
では、〈クリファ〉は機械語か? それも違う。機械語という名称は、機械が解釈・実行するからこそのもの。
だが演算核や記述光晶といった機械にとって、〈クリファ〉は述式の発動プロセスにおいての最終出力フォーマットでしかない。基本動作はおろか、述式の最重要プロセスである全精度物理演算でさえ〈クリファ〉が出る余地はない。
それなら、〈クリファ〉を入力され・解釈し・実行する主体はなにか────
それは虚霧であり、世界という自律系であり、物理法則という状態機械そのものである。〈クリファ〉の本質は、世界構造に直通したインターフェイス。完全な&ruby(シミュレーション){夢想}と現実を等価に繋ぐ、〝&ruby(シェル){殻}〟に他ならない。
外形としては、三次元空間上に投影される、フラクタルな立体光学言語パターン。巨視的にも微視的にも魔法陣めいている(イメージとしては、電脳コイルの暗号式的な……)(図形としてのクリフォトの要素をどこまで入れるかは考え中)。
高濃度の虚霧中に、〈クリファ〉という言語(に載せられた全精度物理シミュレーションデータ/述式)が照射されることで、虚霧の確率ゆらぎは指向性をもって収束し、ひとつの元子の塊、ひとつの事象として確定する。
虚霧濃度が低い=強固な確実性を持つ環境内に〈クリファ〉を照射しても、ただ眩しいだけ。
**ダアト
通常述式では必要とされない〈クリファ〉の番外モジュールを、法則変造用・下位構造記述言語〈ダアト〉。
それを用いて発動される、極めて特異な述式を『ダアト述式』。ダアト述式によって展開される異種物理法則を、『ダアト法則』と呼ぶ。Law-Level Language、L3とも。
通常、〈クリファ〉によって記述されるのは/述式が改竄しているのは、あくまで物理量──物理系の変数域に限定される。
無から光を、雷を、鉄を、油を、その他諸々の事象を引き出そうが、それはあくまで光であり、雷であり、鉄であり油であり、標準物理法則が許容する状態変数のセットでしかない。
だが、虚海化寸前の、極めて濃い虚霧の中では物理法則を記述する演算子・定数すら揺らぐ。揺らぐということは、述式によって改竄可能になるということ。
そして『ダアト』は理論上、人間が想像できるあらゆる物理法則を記述・展開可能──なのだが、実際にはそのほとんどが実用性を持たない。
なぜかといえば、異なる物理法則の大半は、標準物理法則と『噛み合わない』。
標準法則下にある空間や物質、エネルギーの一切と相互作用をせず、つまり事実上、何も起きないのである。
標準法則と『噛み合う』、形而下の世界に影響をもたらせる法則体系は極めて稀少であり、かつ、その内部定数を億分の一いじるだけでも、その実効性は失われる。ダアト述式の実用解とは、砂漠に紛れ込んだ砂金の粒のようなもの。
ゆえに、Aの効果を持つ既知のダアト述式があるとして、少しアレンジしてA´の効果を持たせる──のようなことは、まず出来ない。
存在するであろう『法則を制御する下層法則』や『法則同士を仲介する法則』は、標準物理法則下では完全に隠蔽されているため(※)観測不可能、ゆえに解明困難。
(※元子と背景場の振る舞いを記述する第一原理のみで、標準法則下のあらゆる現象を過不足なく、アノマリーゼロで説明できるため、探ろうにも取っ掛かりが存在しない)
(なお、あとあと密かに埋め込まれていた例外処理の判明や、アノマリーの塊が出てくる予定)
物理法則そのものを改変するだけあって、標準法則内で変数を書き換えるだけの通常述式とは様々な意味で一線を画すことが多い。
単純に桁違いの元子量を扱えるもの、改変法則それ自体に情報処理能力を持たせた(より正確には、あらゆる物理法則は計算機であるため、標準法則よりも人間が利用しやすい入出力を持つ、という表現が適切である)もの、
標準法則下では存在しない物質を生成するもの、あらゆる強度を無視して巻き込んだものすべてを消失させるもの、時空間を捻じ曲げるもの……etc.、モノによっては一度の発動で全体の戦況を覆すことすらありうる。
が、通常述式とは桁違いの計算資源を要求されるため、汎用計算での実行は極めて困難。
少なくとも25~45mほどの筐体に収まる演算核の体積では、絶対に不可能である。
逆説的に、ダアト述式を行使可能なネフィルは、例外なくコア体積の数割~大半をその専用回路に割いている(※)。
そのため通常述式や架層戦の領分では、ダアト持ちのネフィルは非搭載機に遅れを取ることが多い。
(※極端な例では、Nephil-786〝イルシウス〟の演算核は、実に総体積の八割がダアト述式『仮構歯車』専用のアクセラレーターに費やされている。
〝ラーヴェア〟が演算核の九割を熱学に特化させていることを考えれば、意外と少ない……と思われるかもしれないが、〝ラーヴェア〟の場合は『凝熱刃』『熱線砲』『灼気噴流』『熱波』など、熱元子にまつわる述式のほとんどを超高出力で実行可能。対して〝イルシウス〟が特化しているのは『仮構歯車』一本のみ。
同じハードウェア特化であっても、通常述式用は『元子種/分野』であり、ダアト述式用は『単一』となる)
なお、あくまでダアト述式の定義は『〈ダアト〉モジュールを使用して物理法則を記述し、展開する』こと一点。
変造法則を張っておしまい、ではなく、『異なる物理法則を展開した上で、通常述式のように内部変数も制御する』ようなダアト述式も存在する。
実用的には、述式を使うための〈クリファ〉がまずあり、それに加えての、特異なダアト述式を使うための〈ダアト〉、という理解で問題ないが、
厳密には、法則を記述する〈ダアト〉モジュールまで含めて初めて〈クリファ〉の物理記述は完全であり、一般に通常述式と呼ばれるものは不完全な略式である。
通常述式が変数の記述のみで実行できるのは、既にある標準法則をそのまま利用するゆえ、〈ダアト〉による法則記述を省略できるため。
特にメリットがないので使われることはまずないが、〈ダアト〉で標準物理法則を記述したうえで、〈クリファ〉通常モジュールで変数を操作する、ということも一応可能。この場合、〈ダアト〉部の有無はいっさい最終的な挙動に影響を及ぼさない。
ダアト述式ごとの特性
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・持続時間
ダアト述式によって展開されたすべての異種法則は、一定の時間で自動的に効果が失われ、標準法則に復帰する。
傾向としては、複雑なものほど持続時間は短く、単純なものほど長いが、例外も少なくない。
・効果範囲/効果対象
そのまま。
・残留性
ダアト述式によって作り出されたものが、ダアト述式が解けた後にどれだけ残るか、という値。存在しない物質を生成するものや、鏡像を作り出すタイプなどは、基本的に効果終了と同時に消滅する。
(通常述式によって生成された物質は、資源として使われることからも分かる通り、勝手に消えたりはしない)
・侵蝕性
述式が『一度曖昧にしてすり替える』ものである以上、高い虚霧耐性を持つ敵に対して、述式による直接改変攻撃を仕掛けることは不可能である。これはダアトでも同じこと。
が、敵を駆動させる物理法則それ自体を直に書き換えることは出来なくとも、既に成立したダアト法則が展開された空間や物体と敵が接触した際に、『成立した法則同士の侵蝕と上書き』は起こりうる。
十分に高い侵蝕性を持つダアト述式は、防御不能の即死攻撃としての運用も可能。
・条件依存性
一部のダアト法則は、特定の物理構造(換言すれば、特定の物理変数セット)がある場合のみ、成立する場合がある。
この場合はその変数セットがそのまま発動条件に加えられ、またその変数セットが物理的な破壊などによって範囲外に飛び出してしまえば、持続時間に関係なくダアト法則は崩壊する。
効果対象と密接に結びついていることも多い。
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*&ruby(ブレインコア){演算核}
宝玉めいた、有色透明の結晶状演算機関。究極のアナログコンピューターとして作用する、立体微細回路の塊。
処理装置と記憶装置の不可分性や、無数の&ruby(セル){最小構成回路}を結合させて高冗長性ネットワークを形成する点を始めとして、多くの生体脳的な性質を持つ。
色は総じて単色。体積あたりの計算能力では紫色のものがもっとも性能が低く、真紅のものが最高位。ネフィルに搭載されているのはすべて真紅。
再始暦世界の法則において、元子運動量や時間などの一部パラメータは量子化されない無限の『なめらかさ』を持ちうる。
とはいえ物質を形作る『連子』の微細化には限度があるため、そこに無限の情報量があっても、実際に計算に利用できる量には限度がある。その理論上の限度に、極限まで近づいたのが真紅の演算核、ということになる。
(この辺述式の全精度物理演算と矛盾する? 述式は初期配置を非常に計算しやすい形に設定してるから~とかでいいだろうか)
また製造過程の最終盤、回路の形成過程でカオス的な自己組織化プロセスを挟むため、ある程度の方向性こそ事前に設定できるものの、完全に同一な演算核は存在しないし、造れない。
これは性格も能力も似通った一卵性双生児であってもなお、脳内神経網の一本一本の配列を見ていけばまるで別物である、ということと近似。すべての演算核の固有IDはこの物理的個性から生成されるため、事前の照会や管理がなくとも被ることはまずなく、また偽証は極めて困難。
初回起動では、起こりうる回路形成の幅やゆらぎ、差異を吸収可能な、極めて冗長かつ分厚いOSでブートされ、その後に自身を実行する演算核を走査・診断。
徐々にソフトウェア側が冗長性を削ぎ落し、自身をハード側に最適化していく。そのため演算核の実効性能は、その寿命初期から中期にかけては、使えば使うほど伸びていく。
一度完成すれば、一切外部からのエネルギー供給も廃熱も必要なく稼働し続けられる(※)、西暦世界から見れば第二種永久機関めいた代物だが、実際には演算のたびに少しずつ回路が摩耗していくため、演算核には明確に限界寿命が存在する。
(※厳密には、出力信号の発信でコア内部のエネルギー総量は減少する。が、入力信号分で相殺される)
現状、再始暦世界の資源は九割以上が述式による生成で賄われており、そして述式の発動には高位~最高位演算核が必要不可欠。
しかし再始暦698年現在、再始暦世界の人間が生産に成功しているのは中位演算核まで。述式に使える高位演算核の新造は、まったく目途が立っていない。
都市を支える基幹演算核の寿命が、最大でもおよそ800年と推定されていることを考えると、タイムリミットはそう遠くない、とされる。
また物性として、加えられた応力や衝撃などを瞬時に全体に分散する、という特性を持つ。
そのため、演算核にヒビや欠けが入ることはない。閾値までは軋みながらも割れず砕けず、閾値を超えた瞬間、全体が同時に粉砕される。リバースエンジニアリングが難航する大きな要因。
***架層
演算核というハードウェアが行う計算上に、仮想的・抽象的に構築される情報構造の総称。
西暦世界における論理層に近い意味。仮想+架空+高架+階層で架層。
用法としては架層攻撃、架層防壁、架層戦など。
対義語として、物理層のことを“基層”と呼ぶ。
*記述光晶<ライトクリスタル>
*L化物質、L化材質
生体組織以上の複雑性や情報処理性、それによる高い虚霧耐性を持つ物体の総称。
Lは、LogicalまたはLivingの意。演算核は元より、ネフィルの筐体や都市<コロニー>骨格のマシンセルもL化物質である。
その複雑性、構成元子の相互観測強度ゆえに虚霧に溶けることがないが、
その複雑性ゆえに述式=全構成元子のリアルタイム物理演算によって、虚霧の中から生成することも、また不可能である。
*整順結晶
その元子の連なり-連子構造において、一切の歪みや捻じれを持たない物質の総称。
この“一切の”は『観測不能な』のようなレベルではない、真性に誤差ゼロの理想的な結晶構造であり、同じ組成であっても、通常物質に比べて遥かに高い強度を誇る。
通常の物質加工手段では、その精製は原理的に不可能だが、全精度物理演算によって物質を無から『その状態で作り出す』述式においては、むしろ計算モデルを単純化できるために通常物質よりも生成は容易い。
一方で欠点としては、単純性ゆえの虚霧耐性の著しい低さが挙げられる。複雑性ゆえに高い虚霧耐性を持つが、述式による生成が不能であるL化物質とは真逆。
述式によって虚霧から生まれやすいものは、虚霧へと還りやすく、その逆もまた然りである。
*実存基定唯我〈セフィラ〉
詳細は不明。実相記述言語〈クリファ〉と深い関わりを持つと推定される。
*静漣<サイレン>
ネフィルが標準で搭載している、複合型の短距離無線通信プロトコル。主に、戦場での音声通信に使われる。
記述光晶の高速点滅パターンや、可聴域外の超音波、空気中微細電位などの複数の無線手段を複合させての相互補完構造を、ネフィルの巨躯の全身を送受信に使って実現しているために、非常に優れた安定性を持つ。
戦場という、爆発や閃光、粉塵や(中濃度までの)虚霧といった、擾乱ファクターにあふれた環境の中で、なおかつ三次元機動を取る高速の動体間で、クリアな音質を維持しての音声通信が可能な規格は、静漣と同義性共振マトリクスのみ。後者はネフィルとその同調者<テスタメンタ>のペア間でしか使えないため、汎用的に使える技術としては静漣が唯一である。
弱点としては、有効距離の短さが挙げられる。だいたい有視界程度が限界。メタ的には、機械巨人のスケールで『見える範囲なら声が届く/見えない距離なら届かない』という芝居をやるための設定。通信に使われる点滅や超音波や電位変化は、いずれも人間の感覚器ではほぼ知覚できないため、いかに静漣<サイレン>上でまくしたてようが、同じ場所にいる生身の人間からは、ごく静か<サイレント>である。
静漣の通信プロトコルにはすべてのネフィルが対応しており、かつ、音声チャンネルはネフィル間では常にフルオープンになっている。これは同調者本人であっても変更不能。
音声以外のパケットは各々が個別にフィルタリングできるため、ネフィル同士ならいくらでも架層攻撃を仕掛けられる、というわけではないが、無害な音声データに乗せられた口撃に関しては、食い止める術はない。なぜこのような仕様なのかは不明であるが、もっとも主流な推測としては、そもそもネフィルは本来、全機が共通のシリアルナンバーを振られていることからも一枚岩であって、それが敵味方に分かれて罵り合うような事態は想定されていなかった、という説である。
複数の通信手段を組み合わせることで冗長性を確保し、通信強度を飛躍的に向上させているが、あくまで一つ一つの通信手段は理解可能な既知のもの。ネフィルを構成するテクノロジーの中ではかなり低位の部類に入る。
そのため現存するすべての勢力でリバースエンジニアリングが完了しており、通常の通信機とネフィル間での、静漣のプロトコルを使った通信も可能。
(ネフィル-通信機や通信機-通信機では、本来は味方同士というネフィル間での前提がないため、音声チャンネルの強制フルオープン制は作用しない。音声通信であっても、向こうにその気がなければ拒絶される)
*法壊の水<アプシントス>
*記鈔塔<コーデックス>/定律正典<フィジカルカノン>
*空葬槍<クリアランス>
*ケルビムの呪縛
*&ruby(コロニー){都市}
再始暦世界において、総人口の九割が棲まう、数十kmクラスの&ruby(メガストラクチュアル・アーコロジー){超巨大居住構造物}。
人口は一隻あたりおよそ十万~百万ほど。
これも遺失技術であり、新造は不能。骨格や外殻部はマシンセルによる代謝・再生能力を持つものの、それで維持されるのはあくまでハコのみであり、
内部設備──特に食料生産プラント等の老朽化が問題となっている。都市によっては、空き区画を農業地として活用することで、プラントの生産量低下を補っている場合も。
水や有機連子の消費量、光熱費等の面で、プラントによる直合成よりもだいぶコストパフォーマンスで劣るが、背に腹は代えられない。
*バベル/世界樹
再始暦世界の中心に存在する、都市すら遥かに上回る、極めて巨大な塔。
三大勢力の一画である聖都連の都市群は、バベルを取り囲む形で配置されている。
2023-09-16T02:26:43+09:00
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多世界:種族
https://w.atwiki.jp/saraswati/pages/612.html
**&ruby(オリジン){純正人類}
存在形象:有機生物/陸上動物/標準的人型
種族スキル:『万物の尺度』
**&ruby(アートマノマス・アーカイヴ){自想書架}
存在形象:純粋情報生命/記録集積体/人工知性
&ruby(アートマン){芯/真我}により&ruby(オートノマス){自律}する&ruby(アーカイヴ){情報保全}ユニット。
旧世界末期に霊渉力学<サイコキネティクス>の粋を集めて十二基が建造。現在の人智暦の世界においては、それぞれ異なる環領域に離散しており、独自の意志と思惑をもって行動している。
(行動しない、という選択肢を取ったものもいる)
旧人類文明にあったほぼ全ての文化、技術、知識を内包する自想書架は、認識によって象られる人智暦において非常に高いポテンシャルを持ち、なおかつ人間の外付け記録装置である=人間の拡張された一部である、と存在が定義されているため、純正人類とは別種族でありながら『万物の尺度』も搭載。
ただしまさに人間の拡張された一部であるために、フルスペックを発揮するには、ユーザーやパートナーとして純正人類を必要とする。
**喰龍
**影劇龍
正式名称:舞台裏なき影絵劇<アンバックステージ・シャドウシアター>
存在形象:概念生物/無形/不定形の二次元の影
種族スキル:『はじめに影あり、付き従う映光遮物<バックワード・プロジェクション>』『地に立つ君へ、映ろう繰手の態を為せ<フィードバック・アンダーフットパペッター>』『遁走影路<ロールバック・レールレイング>』『逆光烈日<バックリット・インキャンデセントモノクロム>』
環領域:ヴアラスラアヴにおける『龍』。この環領域の法則の最大の特性は、非常に因果律の方向が柔軟……というよりも〝テキトー〟である点である。この地において因果律とは、あまりに容易に頻繁に、逆流して然るもの。
ゆえに、ヴアラスラアヴの『龍』──固有法則の体現者は、自走する影絵。先んじて存在する影である自分から、遡及的に光源と遮蔽物を生成する、反転因果の象徴となった。
彼らは広義の生命であるが、有機的に代謝する生物とは、あらゆる面でほど遠い。
極めて肉体性、物質性が希薄である彼らに、〝本来の姿〟は存在しない。ずっと曖昧で不定な影のままでも、生存に支障は一切ない。が、それでは内面もまた曖昧で不定なまま。それで漫然と満足する個体は、ずっとそのまま過ごす一方で、精神の秩序化・組織化を求めた個体は、自分以外の何かしらの姿を『演じる』ことで、『演じる主体としての自己』を確立している。
あるがままに不定で曖昧な前者と、何かを『演じる』ことで自我を獲得した後者。在り方について、一概に優劣を定められるものではない。
だが他者とコミュニケーション可能なのは後者だけであるため、他種族が影劇龍と聞いてイメージするのは、もっぱら何かを演じ、確たる自我を得ている影劇龍である。
性別と言えるものは存在せず、生殖方式は極めて自由。単に肥大化しすぎた自己を分割する場合もあれば、二体以上の個体間で固有情報をミックスし、新たな個体を生み出す場合もある。因果の反転が本質なため、先んじて存在している子から、遡及的に親が生成されることも珍しくない。
***『はじめに影あり、付き従う映光遮物<バックワード・プロジェクション>』
影劇龍の中核となるスキル。影である自分から、遡及的に『光源』と『遮光体』を生成する。
この光源と遮光体については、基本的に、大元の影に含まれない情報を有さない。
影劇龍の本体がもっとも単純な黒影の形態をとっている場合、光源は発光原理も不明、どころか『未設定』の白光の塊。遮光体も形状のみの情報を持ち、色も質感も設定されない、のっぺらぼうのポリゴン塊めいた物体である。
影劇龍が自身の形状や濃さ、色合いなどをリアルタイムに変更することで、光源と遮光体も追随して変化する。戦闘時には、巨大な武器や拳などが演じられることが多い。
基本的には一人一演であるものの、『共演』──単一の物体から複数の影が伸びることの逆、複数の影劇龍が、単一の遮光体を協働して形成する技も存在する。
基本的には、当然に影同士は整合し、遮光体の存在、さらなる応用、極めて高難度の絶技として、あえて演者
遮光体の形状を矛盾させ、その遮光体の矛盾面に敵を巻き込む。
あるいは、三次元的には矛盾しているように見えるが、空間次元の数を増やして考えれば整合するようにし、二次元の影をもって四次元や五次元の遮光体を生成する。
***『地に立つ君へ、映ろう繰手の態を為せ<フィードバック・アンダーフットパペッター>』
前記のB・Pの応用・派生スキル。
既存のモノ・ヒトなどの影に入り込み、影の側から実体へと逆干渉を行う。単純な運搬などにも使われる、非常に汎用性の高いスキルだが、
戦闘においては、影の『本人の一部である』とも『本体の一部ではない』とも見なせる二面性から、極めて強力な初見殺しとして機能する。
一般的なDEFにおいて、影は『本人の一部ではない』ために防壁の対象外であり、影劇龍にとって侵入は容易い。
そして侵入した影から、『本人の一部である』という因果連関を利用して本人へと逆干渉をかけるため、相手のDEFを完全に迂回した攻撃が可能となる。それが龍の高水準なATKから繰り出されるのだから、決まれば【作中での上位ランクの良い感じのネーミング】クラスの相手ですら一撃で即死させられる。
一方で、F・Uの存在と、影に防壁を設定するという対抗手段を知っている敵に対しては、効果は薄い。
***『<レールバック・レールレイング>』
***『逆光烈日<バックリット・インキャンデセントモノクロム>』
影劇龍の奥義。自身を拡大、周辺一帯の地面を覆い尽くした上で、『ある一点を中心とした放射状の、極めて濃い影』に変貌する。
結果、世界を白黒に塗り分けるほど激烈な輝き──烈日が、中心点にて遡及的に爆裂する。天井知らずの熱量を有する、光属性範囲爆撃。
しかし高すぎる威力ゆえに、発動の次の瞬間には既存の遮蔽物もB・Pによる遮光体も蒸発し、そのまま本体である影も搔き消す自滅のリスク、という致命的な欠点がある。
そのため逆光烈日の発動が完了した瞬間には、前述のR・Rでバックれるのが基本。
**&ruby(やくそう){泰久草}
存在形象:有機生命/陸上植物/草本
種属スキル:『循環生気<サーキュラトリィ・エンテレキ>』『同祖体<アロトロープ>』
多くの環領域に生息する植物。
攻撃能力は皆無なものの、自我も持たない一植物としては規格外のDEFとHP、さらに『循環生気』というHPの自動回復スキルを持つため、採取することはそれなりに困難。HPを削り切らない限り、何度葉をちぎっても茎を断っても根を掘り出しても、一瞬ですべてが復元される。
そのため泰久草を採取できた、ということ自体が、泰久草の自動回復を上回るATKの精製力を持つ、という証明となり、
戦闘能力が要求される職業の一次試験、足切りとして、この植物の採取が課題とされることも少なくない。
一度HPをゼロにすると、現在のHPを参照する回復スキルも停止(より正確には、HPの回復自体は継続して行われるものの、回復量がゼロになる)し、採取や加工が可能になる。
泰久草を加工して作られるポーションは、このHP自動回復スキルを経口でインスタントに摂取者に付与。参照し・回復するHPの主体を泰久草自体から摂取者に挿げ替えることで、一度停まった『循環生気』を再始動させる。
なお、付与された『循環生気』は一定時間・一定回復量などを超えると分解、消化されてしまう。
消費物ではない、永続的で安定的なスキルの移植・増設は、経口摂取のような手軽な方法では不可能である。
2023-08-19T21:05:57+09:00
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拡張躯体:基礎&近代レベル文明圏
https://w.atwiki.jp/saraswati/pages/610.html
コンセプト:マジックパンクエセ和風スペオペ、実体関連モデルSQL、ジェネリック新世界より、ハイパーインフレロボバトル
なお、以下の設定を、必ずしも作中メインの文明圏が認識・理解しているとは限りません
**【魂】
幽接生物の脳髄、またはそれに相当する情報処理装置に対し、量子力学的なゆらぎに乗じて『どこか』から干渉してくる『なにか』。
物理的に観測が可能なのは、脳内の量子現象に、明らかな偏りが────つまり、理論上は起こりうるが実際の確率としては起こりえない〝奇跡的偶然〟が、特定のパターンをもって、ヒト脳内で毎秒発生し続けている、という結果のみ。
この奇跡的偶然が引き起こされる干渉点を〝銀枝〟。具体的な干渉パターンを〝銀紋〟と呼称する。だいたい、健康な成人で銀枝の総数は二十万程度。静的な固定点ではなく、その座標も変動的かつ流動的。
(量子脳理論、それなりにいい感じに収めるのはどうすればいいか……という悩み。
既存の微小管かイオンチャネルで処理するか、あるいは脳を通り抜けてくニュートリノの衝突可能性をいじくって間接的に脳内の任意の座標に電子をポップアップさせる……みたいなのもアリかも?)
なお、魂はただ脳に干渉するだけでなく、銀枝を通じて脳から情報を取得している、と推定されており、脳の物理状態に応じて銀紋も随時、変化する。
つまり魂とは、所与の定数でも一方的な操作主体でもなく、魂と脳とのカオス的な相互作用の総体こそが、心、人格、表層意識、意志決定、ヒト精神のすべてである。この精神モデルにおいて、心身は一元論でも二元論でもなく、同時にそのどちらでもある、『二つの構成要素からなる一つの系』として記述される。
ちなみに魂が宿りうる/銀枝が根を張る情報処理装置は、干渉による擾乱を許容し、それすら己の内に取り込める、柔軟で冗長なシステムでなければならない。
(つまり、現実の半導体コンピューターは、トンネル効果の発生確率なんかに干渉しまくってもエラー訂正されるOR訂正能力を超えれば落ちるだけで、その干渉までも含めた系の構築ができない、ゆえに有機ニューロンネットワークとは違い、魂の器たりえない)
***【霊渉力学<サイコキネティクス>】
魂が引き起こす『奇跡的偶然』、銀枝とその銀紋について取り扱う科学体系。
**【魔術】
物理領域の因果的閉包性を引き裂き連続性を切り裂いて、思うがままに現実を変容させる力。
純粋な科学技術では、いまだ移動はヘリウム飛行船、計算は階差機関が最先端である【メイン文明圏】に、恒星間文明を作り上げるに至らせた、超絶の御業。
同時に、個人に核兵器以上の殺傷能力をもたらし、あるいは分子一つの痕跡すら残さない完全犯罪を可能にしてしまう、社会の不安因子でもある。
***魔術の、〝社会的〟本質について
純物理技術と魔術の、社会的な意味の差とは、なにか。
極めて強固な属人性に起因する、能力の絶大な個体格差。銃は手離せるが、魔術行使能は人から切り離せない、その潜在的脅威性。挙げられるものは多い。
しかし実のところ、十分に長い時間スケールにおいては、これらの差は、すべて無化される運命にある。
固有魔術は解析され汎用化されるし、高度な物理技術が普及すれば、必然的に殺傷や隠蔽といった行為も高度化される。神経系への繊細な介入が可能となれば、安全のため、魔術行使能を一時的にマスクすることも可能になるだろう。
ならば社会を──ひいては文明の発展を語る上で、魔術と純物理技術の、もっとも根本的な違いとはなにか?
それは、魔術は絶対的に『人口に律速された』資源であり、『乗数的な発展が起こらない』、ということである。
**【魔術几盤】
几盤は『きばん』と読む。
後述する概括構造体を格納するテーブルにして、あらゆる魔術に不可欠な基盤となるハードウェア。ひとつの知性種族の標準的かつ統合的な環世界。
平たくいえば、結晶化した集合無意識であり、物理的な実体は持たない。物理世界と相互作用できるのは、幽接種族、すなわちヒトの脳を介してのみ。
魔術における情報処理の大半は魔術几盤に丸投げされているが、精緻な概括構造体や、複雑な幽式などを扱う場合には、個体クライアント側にも相応の能力が要求される(割合としてはさして変わらない。百の1%と一億の1%には当然大きな差があるというだけ)。
**【概括構造体】
人の処理能力からすれば無限に等しい、無数の素粒子の状態ベクトルの奔流を、『石』『水』『いまわたしが触れているコレ』『あの家』などの巨視的・抽象的な概念で括った構造体。
ヒトの認識やイメージという曖昧で抽象的なものと、確たる物理現象という莫大な情報の渦を相互に翻訳する、インターフェイスとしての役割を持つ。
微妙に長いので、【概体】と略される場合も多い。
概括構造体の改変は、すなわち概括構造体というインターフェイスへの入力──により引き起こされる実物理状態への改変であり、また実体の変化もまた、概括構造体の構成パラメーターの変化としてリアルタイムで反映される。
本質的にはインターフェイスであり、実用上は解像度を落とした鏡像、と言える。
あらゆる魔術は、概括構造体の作成によって始まる。この概括構造体が割当てられた何らかの事象を、『可操作状態』にある、と呼称する。
なお、概括構造体の『括り方』は、同じ実体に対しても用途の差、流派の差、言語の差、主体となる個人の感覚の/知識の/世界観の/処理能力の差……etc.などで無数の差が出る。特に流体などは、固体に比べて『括り方』の差が大きく出やすい。
改変可能なのは概括構造体というインターフェイスが入出力として持つパラメーターのみであり、かつその精度も、概括構造体作成時の解像度が上限となる。
たとえば『おおよその形状と運動ベクトル』しか取っていない概括構造体では、温度の把握や操作などはまったくできないし、唯一可能な形状と運動量の操作すらも『おおよそ』の大雑把にしかできない。しかし、このように粗く単純な概括構造体は、非常に速く、軽く、扱いやすい。
一方で、子細に模られた概括構造体は、精密な観測や制御が可能なものの、遅くて重い。どのような概括構造体にも、それぞれ相性や長短、得手不得手が存在する。
なお、概括構造体は、以下の三つの条件によって消失する。
・物理的な破壊や変質によって、実体が概括構造体の定義域から飛び出してしまった場合、鏡像として破綻し、砕け散る。
・一定時間操作が行われなかった場合、魔術几盤から自動的に削除される。具体的な時間は概括構造体のサイズや周辺の魔術の使用状況に左右されるが、最大でも三十秒程度。短ければ五秒未満。
・後述する『結締』を使う。
**【魔術四命令】
あらゆる魔術は、『起象』『承述』『転纂』『結締』の四つの命令に帰結する。
どれだけ強力で複雑な魔術も、結局はこの四つを組み合わせることで実現される。
***『起象』
──魔術几盤上に概括構造体を新造し、付随して実世界上にも現象を引き起こす。
ゼロベースかつ一手で現実を改変できるため、後述する『承述&転纂』に比べて速く、また周囲の環境に左右されないが、燃費が悪い。
***『承述』
──既存の実体を指定して読み取らせ、概括構造体を作成する。可操作状態にするだけで、それ自体は何の変化も起こさないため、基本的には『転纂』とセット。
ただし『鑑定魔術』や『走査魔術』と呼ばれる、物体のおおよその状態や組成を読み取るための、現実の変容を目的としない魔術は承述のみで完結する。
***『転纂』
──起象もしくは承述によって作成された概括構造体の変数を書き換え、連動して実体を改変する。一般に魔術的操作、と呼ばれるモノの大半がこれ。
前述した通り、あくまで改変可能なのは、概括構造体が含むパラメーターに限る。概括構造体の作成者と転纂者が別人である場合、『括り方』と『書き換え方』の相性の如何によっては、まるで力を発揮できないことも。
***『結締』
──概括構造体を魔術几盤上から破却する。
その際、実体も連動させて消し去るかどうかを選択可能で、連動させない場合は操作不能になった実体が残される。この場合、『承述』により新たな概括構造体を作成すれば、再び魔術的操作が可能となる。
(案:むしろ基本的には概括構造体の消去は実体を道連れにしていくのが普通で、ゆえに
・ただ承述しただけで時限消去爆弾となる
・自身に概括構造体を設定して操作する自己強化系の魔術は、被弾等により実体と概括構造体がズレた時のリスクがとんでもない/一応部位刻みの小さな概括構造体にブロック化しておくことで、肉体すべての消滅は防げるが、小分けするほど処理能力が要求される……
みたいなロジック、締諦で〆た場合のみ実体を残すことができる、みたいのもアリかなーと思ったけどこれはこれでバランスが極端になりそうなので検討中、ただ極端な方が面白い、みたいな感覚もある)
**【魔術四能程】
個人の魔術行使能を、四つに区分したパラメータ。
とはいえ、一言に『因索』に優れるといってもその〝精度〟に優れる者と〝射程〟に優れる者ではまるで異なるし、
『応儀』も使う魔術ごとにパフォーマンスの相性差というものが生じるため、実際の評価基準はさらに細分化・条件区分などされている。
***『因索<いんさく>』
──魔術几盤からの情報の取得速度や精度、射程を指す。Input。
四命令中の『起象』『承述』、すべての魔術行使の始点である概括構造体の作成に、特に強く影響する。
***『果覧<がらん>』
──魔術几盤への情報の出力速度や精度、射程を指す。Output。
他の三能が優れていても、果覧の能態が不足している場合、概括構造体の改変→実体の改変という魔術行使の最終工程において、大きなボトルネックが生じてしまう。
***『応儀<おうぎ>』
──魔術的な情報処理能力を指す。CPU。
魔術行使における全プロセスにおいて非常に重要な能程である。
***『報録<ほうろく>』
──概括構造体や幽式の、同時保持能力を指す。Memory。
この能態が、操作可能な概括構造体のサイズ上限や、実行可能な幽式の複雑さの上限を定める。
**【幽覚】
魔術几盤と接続し、魔術的な情報を処理する感覚系。基本的には拡張現実めいて、基本的な五感、もしくは言語的な認知に上乗りするかたちで翻訳される。
物理的・生理的な現象としては、視覚野や体性感覚野に根を張った銀枝によって、あたかも『実際にそのような現実を感覚しているかのように』神経網の状態が銀紋によって調整される。これによって発生する、主観的な視覚効果を幽光、聴覚効果を幽音などと呼称する。
他者の魔術を見る/聞く/etc.、受動的な幽覚は、現実と同程度の共通性を持つ。つまりその魔術の行使者でなく・かつ健常な視覚機能を持つAが見る幽光と、同条件のBが見る幽光は、完全に同一ではないにせよ、ある程度近しい。
一方で、自ら魔術を行使する場合の能動的な幽覚に関しては、どの感覚系や認知機能をトリガーにするのがもっとも効率が良いか? という点に大きな個人差がある。
主に視覚をトリガーとして魔術を行使するものを視覚型幽覚者、体性感覚をトリガーとするものを体性型幽覚者、などと呼ぶ。
**【純粋幽覚者】
魔術几盤との接続に用いられる感覚系、いわゆる幽覚は、
たいていは視覚、あるいは触覚、あるいは聴覚、あるいは言語的認知──の拡張として処理・解釈される。
しかしまれに、既存の五感や言語への翻訳を介すことなく、純粋に魔術几盤上の情報の奔流を、ただありのままに扱える者も、少数存在する。
彼ら彼女らは魔術という万能のツールを、第五の肢として振るい外界を書き換え、第六の感覚として万物を把握する。
こと魔術の才において、純粋幽覚者とそれ以外には、決して超えられない壁がある、と言える。
しかしそれぞれが独自固有の感覚系を構築している、というまさにその理由から、
一般的なカリキュラムでの魔術教育は極めて非効率的であるし、また当人が他人にその業を伝える・教えることも非常に困難。
集団による魔術の協働実行などに組み込むこともほぼ不可能。
総じて、良くも悪くも突出した個である、といえる。
***純粋幽覚者の危険性について
非純粋型の幽覚者──すなわち既存の感覚系や知覚系を介すことで、二次的に魔術几盤と接続している大多数の人間にとっては、感情や衝動、反射による魔術の暴発は起こりえない。
必ず『思考』の集中と、数瞬~数秒の『時間』を要するために、咄嗟に手が出ることはあっても魔術が出ることはないのである。
非純粋幽覚者が魔術で他者を殺傷したとき、そこには必ず、確固たる害意が存在する。
しかし、純粋幽覚者は思考を必要とせず、感覚や直感のみで魔術行使が可能であり、その所要時間は限りなくゼロ秒に近い。
些細な口喧嘩で、一瞬の強い怒りを抱いただけで、次の瞬間には相手が惨殺死体になりかねない。
精神の鍛練や薬物の投与など、この危険性を軽減する手段は複数考案されてはいるものの、もっとも確実な手段は、敬して遠ざけ、そもそも接近を避けることになる。
**【幽式】
四命令に条件分岐等を織り込み、複雑に組み合わせることで作られた、高度な自律性を持つ魔術。
幽式を書き出す人間を『幽綴者』と呼ぶ。基本的には言語型や数理型の幽覚者が得意とすることが多い。純粋幽覚者が書き出す幽式は、未知のクオリアで記述されるため、本人以外には再現どころか解読すら不可能。
一族秘伝の業、あるいは企業秘密、もしくは国家機密として、高度な幽式は、その内容を秘匿されるケースが多い。
大雑把にいえばプログラミングされた魔術だが、弱点として、魔術几盤の揮発性が挙げられる。
魔術を止めれば消去されてしまうため、次に使いたい時には一から組み直す必要があり、かといって常駐させれば術者の思考的・精神的なリソースを消費し続ける。
このため、幽式に長けた人間の中にも、大別して『発動のたび、組み直すのが非常に速い』タイプと、『常駐させ、それによる負担を軽減・無視できる』の二種が存在する。
**【固有魔術】
他者による再現や模倣が困難、または不可能である魔術のこと。
純粋幽覚者が用いる魔術は、すべて固有魔術であるが、すべての固有魔術が純粋幽覚によって引き起こされるわけではない。
視覚や言語などのありふれた感覚系・知覚系を基盤に置きながら、実際に構築される幽式が異常に複雑なために、他者には真似できない、というようなケースも存在する。
**【刻血】
本来は再現・模倣が不可能な固有魔術を、なお継承可能にするために行われる遺伝子操作のこと。
固有魔術保有者のオリジナルの脳活動から、抽象化された機能のみを抽出し、コンパクトな専用神経網、通称『魔術野』として再設計。遺伝子上にエンコードすることで完成する。
刻血による固有魔術の継承が、帝室や櫃族(きぞく)の持つ権力の、最大の裏付けである。
**【贋脳】
後天的な外科手術によって、固有魔術者の脳髄の模造神経塊<オルガノイド>を埋め込み、その固有魔術を模倣可能にしたもの。
刻血幽式との最大の違いは、魔術に必要な脳機能・神経活動のみの抽出ではなく、オリジナルの脳をほぼそのままシュリンクしている点。
加えてあくまで遺伝子操作の結果として『本人の器官』として発現・成長する魔術野とは異なり、再現された『別人の器官』である点である。
そのため本人の脳と贋脳の間での拒絶反応や、オリジナルの記憶の流入による自我混濁等、リスクが大きく、また単純な性能でも劣っている。
総じて、刻血に比べて粗悪であり、もっぱら闇社会や反体制勢力によって利用される。
**【架層構造体】
概括構造体や幽式そのものを抽象化して括った、言わば二次的・三次的な概括構造体のこと。
簡易な魔術においては物理実体と直結した概括構造体のみで十分であり、架層構造体は『魔術を制御する魔術』を含む高度魔術においてのみ使用される。
超高度魔術の場合、複数の架層構造体の同期や協働、その関係そのものを、更なる高次の架層構造体で括る、複雑怪奇な入れ子構造が仮想的に形成される。
**【櫃族】
固有魔術保有者を祖とし、刻血によってその実力と権力とを継承し続ける一族のこと。
『魔銘』という、固有魔術の特性から取られた封号を皇族より与えられている。
特権階級であると同時に、その固有魔術によってインフラ等を担う責務を負い、巨像大陸ごとに規定の人数が配置される。
**【帝室、帝族】
刻血、すなわち『固有魔術を継承可能にする固有魔術』を継承している、〝天帝〟に連なる一族。統暦世界最大の権力者。
実のところ帝族の刻血幽式は更に包括的な能力であり、『刻血を行う刻血幽式』は彼らの力の一端に過ぎない。
**【個体圏域<インディビデュアル・レルム>】
あらゆる人間/幽接生命が生得的に持つ、自身の肉体を範囲とした魔術的な支配権。
『自身の肉体』には服や靴、今この瞬間に把持しているモノなども含まれる。
その機能の半分は、ありとあらゆる魔術干渉に対する絶対的な防御圏。
当人がいっさい注意を向けていなくとも、どころか睡眠中であってすら、自身を対象とするあらゆる魔術。起象や転纂はおろか、それ自体は変化を生まない承述や結締までも含めた四命令すべてを拒絶<レジスト>する。
そしてもう半分が、当人が許容する、ホワイトリストに入れた魔術のみは、非常に『通りを良く』──きわめて優れた効率で実行可能である、というもの。
まったく同じタンパク質操作の魔術であっても、豚ロースに対するそれと、『当人が許容している』人体へのそれ。
どころか同じ石ころに対する魔術であっても、路傍に落ちているそれと、誰かが握りしめた上で許容している場合のそれでは、必要な魔術リソースには非常に大きな差が生じる。
ちなみにこの性質上、魔術文明における医療の現場では、『患者の意識を取り戻す』意義が非魔術文明以上に大きい。ホワイトリスト式である以上、当人に意識がなければ、医療魔術すら弾かれてしまう。
また、死体や最初から魂を持たない生物は、個体圏域を持たない。つまり意識が戻っていないのに医療魔術が通ってしまったとしたら、それ自体が死亡確認になるということ。
**【巨像大陸】
居住者から徴収される莫大な魔力によって維持・運営される、
ヒト型をした超巨大居住構造物<メガストラクチュアル・アーコロジー>。
基本的にほぼ完全な気密性と自己完結性を持ち、あるものは海底に接地して立ち歩き、あるものはガス型惑星の雲海を揺蕩い、またあるものは虚空の宇宙を泳いでいる。
なぜ、ヒト型なのか?
それは万人が持つ個体圏域を、都市~国家規模までに拡張するためである。
魔術を己の肉体として捉える体性型幽覚者を核に据え、
その数十~数千km規模の巨躯の全身に、幽式による擬似神経網を張り巡らせた巨像大陸は、まぎれもなく一人の『人間』。
肉の身ならぬ小惑星の削り出しであったとしても、一つの『人体』に他ならない。
つまり、巨像大陸の内側では、魔術という個人が所持するには強すぎる暴力を一括して抑制できると同時に、
管理機構に届出・承認された魔術に限っては、巨像大陸の外側ではありえないほどの高効率で実行可能となる。
巨像大陸それ自体の維持に費やされる莫大な魔術的リソースも、同規模かつ巨像『ではない』/人体『ではない』超巨大居住構造物と比較すれば、非常に軽く、安上がり。
なお、核に据えられた人間──通称『身柱<みばしら>』は、あまりにも巨大すぎる身体からフィードバックされる莫大な情報によって、その精神が希薄化。
ただ個体圏域を展開し、通す魔術と通さない魔術を選り分けるだけの生体機構と化す。
現状、巨像大陸というシステムは、人身御供無しには成り立たない。
***魔術結絡網における、巨像大陸の優位性について
魔力および魔術処理能の共有を、もっとも効率的に行う手段は物理的な接触である。
そして巨像大陸という『人間』は、その内部に存在する全ての人間と『物理的に接触している』ことになる。
そのため、魔術的なネットワークのハブとしても、巨像大陸という居住構造体の優位性は、絶大なものがある。
***無感暗域
巨像大陸は、それが巨像大陸として機能している限り、常に内部に個体圏域(=魔術の使用可不可を定めるフィールド)が展開されているが、
部分的に擬似神経が壊死・麻痺などすれば、その区画内では魔術の選り分け/フィルタリングが停止。
益害や敵味方を問わずにほぼ全ての魔術が封じられた状態になり、これを無感暗域と呼称する。
なまじ巨像大陸が物理的にも魔術的にも巨大すぎることから、発生してしまった無感暗域は、基本的に代替わりまで(あるいは代替わりの時ですら)修復されない。
本来、巨像大陸の内部で、その駆動幽式の管理権を持つ者に、戦って勝つことは不可能である。
こちらの魔術は自分自身を対象としたもの以外すべてが無効化され、一方で向こうは内部の全座標を、最高の効率で、魔術行使の基点にできる。文字通り、空間そのものが敵/味方になるのだから、対抗のしようがない。
しかし無感暗域の中においては、誰もが『自分自身を対象とした魔術しか使えない』という、ある意味で平等な環境になる。つまり対抗の目が出る。
そのため反体制レジスタンスや、敵対する外部勢力の侵入部隊などが拠点や橋頭保に使う場合も多く、この場合、無感暗域と正常な区画の境界が、熾烈な戦場となる。
**【咒刷装<じゅさつそう>】
【作中時系列の作中最初に出てくる文明圏】における主力兵器となる、強化外骨格。
魔術という万能の改変ツールが存在するこの文明圏において、『戦車』や『戦闘機』はおよそ主戦力たりえない。
なぜなら、人間が乗り込んでいても『人体ではない』搭乗型兵器は、個体圏域による対魔術防御を持たない。
それはつまり、制御部に、燃料タンクに、弾薬庫にフレームに──ありとあらゆるバイタルパートが、敵性の魔術によって、直に干渉されうるということ。直接に状態を書き換えられては、いかなる防御も装甲も、一切無益というほかない。
しかし鎧う装甲、あくまで人体の延長である咒刷装は、纏う主体の個体圏域の恩恵に預かれる。つまり、敵性のあらゆる魔術をレジストしつつ、自身が使う強化・支援魔術は、最大の効率で使用できるということ。
そして咒刷装を咒刷装たらしめるのは、行使する魔術・魔力が、必ずしも纏う個人のものだけではない、という点にある。
銃後の高位魔術師たちの『楽団』が組み上げた高度な幽式に、共同体構成員から少しずつ汲み上げた莫大な魔力を流し込むことで成立する、超巨大・超高出力・超高精度の魔術ネットワーク。
それを最高効率で外界に解き放つ出力ノードこそが咒刷装の本質であり、物理実体としての鎧は氷山の一角に過ぎない。
『群』の力を凝集され代表する、最強の『個』たる魔導鎧は、恒星などの超がつく極限環境を除けば、宇宙のほぼ全領域で活動可能。
駆動幽式に込められた機能にもよるものの、無補給での三ヶ月以上の単独活動、1G1atm環境におけるマッハ数十の速度域での静音機動──などなど、数々の超人的な能力を発揮する。
居住施設と戦術兵器という用途の差こそあれ、個体圏域の活用、共同体の魔術的リソースを一人に注ぎ込む、という根本的な発想では巨像大陸と変わらない。
が、咒刷装は人格の摩滅リスクを小さくすることも出来る。
(どう足掻いても人格が消失する巨像大陸と異なり、魔導鎧は駆動幽式の仕様、制御主体をどこに置くか、連続活動時間、などの様々なパラメータによって、当人への精神的負荷が大きく変わる)
(もちろん、使い潰す運用も可能)
***咒刷装、ひいては魔術的リソースの集約という行為全般にかかる制約について
咒刷装は、共同体の魔術的リソースを一個体に凝集し、出力ノードとして利用する主力兵器である。
が、出力ノードとして利用する上で、ひとつ決定的な制約が生じてしまう。纏者の魔術的な出力容量の限界──四能程における〝果覧〟。
いかに処理能力やメモリーを共有・集約できたとしても、最終的に出力するのが纏者一人である以上、その出口の広さがすべてのボトルネックになってしまう。
この制約を唯一回避可能だったのが、生体系・架層系の『大縺華』
汎用化、千人単位
**【機刷鎧<きさつがい>】
咒刷装のさらなる発展形。
2023-07-27T17:12:36+09:00
1690445556
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拡張躯体:インフレスペオペ文明
https://w.atwiki.jp/saraswati/pages/611.html
**スレイヴ/S.L.A.V.E.
Sensorimotor Linkage & Acting Voluntary Enlargement body/感覚運動系と結合し代行する随意制御型拡張躯体。
機刷鎧のさらに先にあるもの。魔術を持つ──というより敵性魔術への対抗手段を必要とする幽接文明が、一定の水準のロボット工学や神経工学、制御工学等を得た時、必然として発生する兵器体系。
神経接続によって駆動し、もって『人体』としての個体圏域の恩恵を得る、巨大ヒト型機動兵器。有人兵器にして融人兵器。
定義論としては、上記の条件を満たすあらゆる兵器が、その技術水準や形態に関わらず、スレイヴたりうる。
人型種族が用いる人型機動兵器も、タコ型種族が用いるタコ型機動兵器も、流体種族が用いる、本来の肉体部より高性能な混ぜ物も。
歩兵の延長としての陸上兵器でも、亜光速の機動速度を持つ恒星間兵器であっても、扱えるエネルギースケールに億倍の開きがあろうとも、そのすべてが等しくスレイヴとなる。
(が、とりあえず本編で出そうなのは光速のn%が速度単位のハイパーインフレ、かつおおむね人型の形状ばかり、になりそう)
(スピンオフ、別の文明圏でフルメタのラムダ・ドライバ持ちASぐらいに落ち着いた性能のスレイヴも出したい)
利点は、主に三つ。
すなわち前述の個体圏域、加えて一定の技術水準以上の場合は、誘導量子神経系とSSSC。
**暗能子<アイテロン>
斥力として働き宇宙を押し広げる第五相互作用、暗能力<アイテール>を量子化したゲージ粒子。
(元ネタ:中国語でダークエネルギーを示す暗能量。厳密には暗+能量なので『暗能』を切り出すのは変だが字面重視で)
**元子<アペイロン>
五つの相互作用が分化する以前、最初期の宇宙にあった原初的なエネルギー。
光子、ウィークボゾン、グルーオン、重力子、暗能子のいずれのゲージ粒子にも分化しうる。
幾度の相転移ののち、既に安定しきった現在の宇宙においては、もっぱら再分化機関<リプログラミング・リアクター>からのみ、産出される。
**再分化機関<リプログラミング・リアクター>
【作中時系列の高位文明圏】において広く使用される、ゲージボゾン双変機構。
炉心たる乱折面型位相欠陥<クラムプルド・テクスチャー>と、その安定器と遮蔽器を兼ねるブランケット、最終的な相互作用を決定づける誘導量子神経系から構成される。
炉心の人工位相欠陥は、プランクエネルギーを湛えた超高熱・超高圧の原初宇宙の欠片に等しく、その内部の物理法則ではあらゆるゲージ粒子が区別されない。
この封じ込められた、極小の原初宇宙にゲージ粒子を撃ち込み(扱いやすさから、大抵は光子が使われる)、還元された元子を回収。
通常空間に復帰した元子の寿命はミリ秒足らずだが、その崩壊/相転移の指向性やタイミングを制御することで、任意の実/仮想ゲージ粒子に再分化させ、ゲージ場を自在に変形させることが可能となる。それはつまり、あらゆる基本相互作用を理論上は制御できる、ということ。
しかし理論上は〝何でも可能〟であっても、実用的には出力や精度等の限界は常に存在するため、〝再分化機関でしか出来ないこと〟に用途を絞って運用される。
具体的には、まず第一に、仮想重力子および仮想暗能子の生成と配置による時空曲率の制御、及びその応用による超光速航法など。
第二に、自身を構成する素粒子間の相互作用のコントロールによる、極めて高度な物性制御が挙げられる。
再分化の誘導は純粋な量子力学上の作用によっても可能だが、(作中の技術水準の)スレイヴは、フレームや装甲の大半に〝増設された中枢神経〟としての機能を持たせることで銀枝を根付かせ、その確率偏向を転用することで極めて高効率・高精度な再分化制御を行っている。個体圏域に次ぐ、融人兵器の明確な強み。
(一般的な霊渉力学的な干渉、銀枝/銀紋は、あくまで自身の神経系に対してのミクロな干渉しか行えない。体外に対するマクロ作用も原理上は可能であるが、魔術を持つすべての文明種族はその条件を満たさない)
(基本的に、多くの再分化機関は、ゲージ粒子だけではなくバリオン・レプトンの再分化能も有し、これによりモノポールエンジンと同様の動力源としての機能も兼ねている。燃料質量を光子に変え、光子を元子に変えているかたち。
が、最初期の試作品や、小型モデルなどは、自前の質量転換能力を有さず、機関外部からの光子供給に依存して稼働するようなケースもある)
なお再分化機関が破壊された場合、安定器を失った位相欠陥が蒸発。
通常真空に相転移する過程で、内包していたエネルギーを吐き出し爆発するが、人工位相欠陥を人工位相欠陥たらしめるのはエネルギーの総量ではなく密度であるため、爆発の規模自体は(再分化機関を生産できる文明レベルからすれば)さして大きくない。最初から加害を目的として造られた兵器の方が上。
***製造手段
核となる人工位相欠陥は、限りなく光速に近い速度に加速された複数の素粒子を衝突させ、瞬間的にプランクエネルギーを叩き出すことで生産される。
そのために必要となる粒子加速器<コライダー>は、最低でも惑星並み、大きければ恒星公転軌道並みの巨大さを持つこととなり、その建造難度と代替不可能性から、これが恒星間文明において、もっとも技術的に価値あるものの一つとなる。
すなわち恒星間戦争においては真っ先に狙われる、ということで、
ゆえに本丸、本拠地、司令部となる機動天体に内蔵される(あるいは加速器をコアとして、装甲や移動能力、防衛装備や居住施設を取り付ける)ケースも多い。
また再分化機関の製造において、もっとも有用な技術とは、再分化機関そのものである。
既製の再分化機関の活用によって、再分化機関(及び、他の高度技術品)の新造の難度は著しく低減する。
よって『最初の一基』が極めて巨大な壁となり、再分化機関『以前』と『以降』の文明には、決して越えられない技術格差が生じることとなる。
恒星間文明における産業革命とも。
***元焔
再分化機関搭載兵器から放出される、煌めく焔のような光学エフェクト。
相互作用の極めて薄い元子を100%制御下におくことは原理的に不可能であり、必ず一定量が制御を外れて機体を透過。機体外にてあらゆる種類のゲージ粒子へと確率的に崩壊していくが、
重力子と暗能子は閉弦束縛されなければ弱すぎ、グルーオンやウィークボゾンは作用範囲が狭すぎて、外部から巨視的に観測ができるのは『光子に化けた元子』の、焔のような輝きのみである。
再分化機関それ自体の特性や、機体の誘導量子神経系の回路設計等の複数の要因によって、その光学スペクトルには個性が生じる。
**重力電磁転壊炉<ジェムブレイカー>
Gravity-ElectroMagnetic convertible quantum-Breaker
本来、極低確率でしか起こらない、量子破壊による光子と重力子、電磁/重力の相互変換を、安定して発生させる機構。 とはいえ、もっと単純な機構で可能な電磁的操作を、わざわざ重力越しに行う必要は皆無なため、実際にはもっぱら電磁→重力の方向でしか使われない。
(元ネタ↓ とはいえこれが可逆か、実際効率どんなもんかはよくわからんけど、まあハードSFではないので……
https://physics.aps.org/articles/v13/s33)
再分化機関より安上がりかつ小さく作れるものの、出力や効率、汎用性の面で劣る。主機に再分化機関を、補助にこちらを搭載する混合運用も多い。
ジェムブレイカーによって生成された重力子は、一定確率で元の光子へと崩壊。この〝先祖返り〟により、ジェムブレイカーが生み出す人工重力場には、あたかも宝石の破片のような視覚効果が伴うことになる。
**元子高速誘導定義炉/RAID<レイド>
Rapid Apeiron Inducing Definer
元子の再分化を制御する誘導量子神経系のうち、特に精密かつ機動的な操作を可能とするもの。
欠点として非RAIDの恒常変換系に比べて変換の容量上限が低く、また即応性を確保するために、常に元子の供給に余力、〝遊び〟を作る必要がある。
通常空間中においてミリ秒未満の寿命しか持たず保存が効かない、という元子の特性上、結果的に使われなかった元子は、元焔として排出する他ない。
最速の反応速度を持たせるために、極めて随意的・反射的な感覚にコントロールを頼っている都合上、意識の焦点を合わせやすい部位に。つまり人型スレイヴにおいては主に掌部に、配置される。
**閉弦束縛<ディスクロージング>技術
時空曲率制御技術を支える、重力および暗能力の、事実上の増幅技術。
閉弦束縛無しには、時空曲率制御のエネルギー効率は極めて劣悪なものとなり、とても実用には供さない。
前提として、重力および暗能力は、他三種の基礎相互作用に比べ、極めて“弱い”力である。
この“弱い”が意味するパワースケールの開きは、実に10の数十乗倍。人間が直感的にイメージできる強弱や大小の限界を、遥かに上回っている。
なぜ、これほどまでに“弱い”のか? それは閉弦である重力子<グラビトン>と暗能子<アイテロン>だけが、次元の束縛を受けず、高次元方向へと常時、流失しているためである。我々が日ごろ体感できる重力というのは、本来あるべき重力の大半が余剰次元へと流れた後の、僅かに残った絞りカスに過ぎない。
閉弦束縛<ディスクロージング>技術は、その流失を抑制する。通常ならば余剰次元に逃げ隠れてしまう閉弦<closed-string>を、三次元ブレーンに一時的に固着させて暴き出す<disclose>。
結果として、閉弦束縛は重力および暗能力を増幅する──より正確な原理としては『減衰が無効化』され、その作用領域内では10の数十乗倍、他の相互作用と同等の強度までパワースケールが拡張される。これにより、実用的なエネルギー効率での、時空曲率制御が可能となるのである。
ちなみにこの重力・暗能作用の増幅は、再分化機関やジェムブレイカーによる人工的な時空曲率制御だけでなく、自然の重力場等に対しても同様に作用する。
そのため惑星や恒星を閉弦束縛場で覆うだけで、『本来あるべき自身の重力で』重力崩壊を起こすことになる。
**無因果型共時性連関通信/Superluminal Strange Synchronicity Communication
超光速通信。規格化されたテレパシー。
たとえるなら、遠く離れた二点で同時にサイコロを振って、同じ目が出た時。
それを『情報が伝わった』と見做せるか? といえば見做せない。情報が伝わっていないのだから、光より早く『同じ結果』を離れた二者が得ても問題ない。
では、二回振って二回とも同じなら? 三回振って三回とも同じであれば? 百回振って、百回とも同じであれば? ──というのが、物理世界の因果律を破らないまま、SSSCが光速を超えて情報を共有できる理屈である。無論、そのような奇跡的偶然は、思考実験の中では起こり得ても実際の確率としては、まず起こらない。
が、幽接生物の神経系が引き起こす『奇跡的偶然』には、このような奇怪な一致も含まれる。
つまり、いまだ正体のわからない【魂】、光速限界を持たない非物理系を通って情報が伝達されており、物理世界の各幽接ノードで起こっているのは量子の確立ゆらぎに付け入っての表出に過ぎない、というのが本質。
根本的なSSSCの原理は分かっていないものの、経験論の蓄積として、純物理的な通信で可能な情報の送受信は、おおむねSSSC上で可能となっている。
しかし大規模で複雑、常設的なネットワークを築くのには向かず、必要な時、必要な相手とのみ繋ぐのが基本。
SSSCによる超光速での情報共有をストレートに行えることも、融人兵器の強みのひとつ。
**慣性質量制御
そのまま。ヒッグス機構に割り込むことで実現する。
実のところ、一般的な物質の質量において、ヒッグス場が素粒子一つ一つに与える質量は比率としてわずかであり、その大半は素粒子『間』の結合・束縛エネルギーによるものである。
そのため質量を増やす分にはシンプルにヒッグス機構を強めるのみで問題ないが、ヒッグス機構を弱めたところで減らせる質量には限界がある。
そのため慣性質量の低減は、『質量を減らす』のではなく、『負の慣性質量を付与する』ことで正質量と相殺し、結果的にゼロに近付けている。
**穿天航法<ペネテレーン・ドライブ>
**重力波浪<グラビティ・ハロー>
時空に孔を穿ち、負のエネルギーを注ぎ込んで保持される穿天路は、極めて不安定な時空構造である。
重力波浪とは、この穿天路の繊細な均衡を崩して圧壊に導き、穿天航法による空間転移を阻害するための、人工的に発振される重力的ノイズを指す。
名前の由来は、荒れ立つ重力の波浪が、あたかも後光<ハロー>のように揺らぎながら広がる点から。
***穿天航法以外の超光速航法に対する、重力波浪の有効性
重力波浪は、基本的に穿天航法に対する阻害能力を主眼においてノイズ波形が設計され、また実際に運用される。
これは穿天航法が超光速航法のなかで圧倒的なメジャーを占めているため。
しかし、では穿天航法以外のマイナーな超光速航法に対しては重力波浪は無力か? といえば、そんなことはまったくない。
そもそもあらゆる超光速航法は、それが超光速航法である限り、必ず、極めて精緻な時空間の操作を不可欠とする。例外はない。
そのため、その操作対象をかき乱す重力波浪は、多少の阻害強度の差はあれ、既知のすべての超光速航法に対して有効である。
**混天儀<ケイオスフィア>
重力波浪の、継続的・恒常的な発振能力を備えた施設や設備を指す言葉。天をかき混ぜ、波立たせるもの。
超光速航法を用いた空間転移は、文明中枢への直接的な強襲を可能とする。悪意を持つ異種文明に座標を知られた次の瞬間には、首都に反物質の塊が転送されても、不思議ではない。
恒星間戦争においては、超光速航法それ自体が、戦術兵器の質や量の差など遥かに凌駕する、戦略的脅威である。
よって超光速航法への対抗技術としての混天儀、重力波浪による広域転移封じは、恒星間文明にとって安全保障上の『必需品』である。
自身の超光速航法の利用も制限される点や、発振される重力波浪がそのまま存在シグナルとなってしまう点など、デメリットもあるものの、背に腹は代えられない。
なお、デメリットの後者、発振される重力波浪によって自らの存在と座標を露わにしてしまう問題に関しては、ひとつ、解法が存在する。
木を隠すなら森の中。すなわち、自己複製型の混天儀の無差別・無作為拡散である。
**静天路<セレーン>
混天儀の転移阻害に対する、さらなる対抗技術。
混天の中において、&ruby(serene){静謐なる}&ruby(celeste lane){天路}を拓くもの。
**転移ノード
**陰陽<ブラック・サン>
ブラックホールを高次元方向に拡張することで造られた、人工的な&ruby(ブラック・オブジェクト){高次元ブラックホール解}のこと。
基礎研究ではマイクロブラックホールを、技術実証や試作の段階では天体質量ブラックホールを用いた陰陽も製作されているものの、この質量規模では得られる出力が生産難度に対して見合っておらず、実用的とは言いがたい。
恒星間戦争における、戦略的『実用品』としての陰陽は、もっぱら中間質量ブラックホールを素体としたものである。当然、その建造と維持には、文字通りに天文学的なリソースを要求され、これを賄える勢力は広大な既観測宇宙の中でも数えるほどしか存在しない。最大最強の文明複合体である【名称未定】でさえ、保有する(実用的な質量の)陰陽は、十に満たない。
理論上は中間質量ブラックホールに留まらず、銀河中心、超巨大質量ブラックホールの陰陽化も可能と推測されているが、現実的には、その実現に必要なリソースは、現存する全文明のリソースの総和を遥かに上回っている。
機能としては、常に莫大な重力ノイズを発振しており、これが超広域・超高強度の混天儀としても作用する。が、陰陽の持つポテンシャルは、たかが『非常に強力な混天儀』には収まらない。
そもそも、
**キャリゲート艦
**主観偏移<パララクス>航法
**前駆放射
いかに優れたレーザー発振器・粒子加速器であってもエネルギー損失はゼロではなく、
発振や加速の過程では、必ず投入エネルギーの一部が電磁パルスやニュートリノ、重力波等の放出という形で失われる。
この、撃ち出す過程で漏出する────言い換えれば、DEW発射の直前に放射されるエネルギーを、〝前駆放射〟と呼ぶ。その強度はおおむねエネルギーの総量に比例し、かつその比率は小さい。対人級のDEWであれば、前駆放射は検出不能なほど微弱なものでしかない。
が、高位文明製のスレイヴの戦闘において用いられる(≒有効打となりえる)DEWの出力は、最低でも数ペタジュール級。最大では数百エクサジュールに達するものすら存在する。
この域の投入エネルギー量であれば、その極一部の漏出でしかない前駆放射も十分に観測可能な強度を得る。結果、DEWが『発射された』ではなく『発射される』ことを、前駆放射の観測で一瞬だけ先んじて知覚可能。
光速や亜光速のDEWをスレイヴが回避・防御可能な理由がこれ。超光速通信であるSSSCと合わせて使えば、事前に察知可能な猶予時間はより伸びる。
端的にいえば、目標内部に高エネルギー反応! がお互い筒抜けの状態ということ。威力が高い攻撃ほど、前駆放射もまた鮮明であり、ゆえに対応されやすくなる。
ただし現在の戦場ではチャージに時間を掛ける(=時間あたりの投入エネルギー量を減らす)ことで、ギリギリまで前駆放射を低減させつつ高威力砲撃を放てる狙撃型や、
『あたかも前駆放射のような、単なる低エネルギー発振』で敵の防御リソースを空費させる空砲型、味方の火砲の前駆放射を掻き消すようノイズを流す擾乱型などが双方に存在し、前駆放射を巡った戦術も一筋縄ではいかない。
加えて、射撃/砲撃のみならず、近接戦闘にも、前駆放射は関わってくる。
スレイヴの機動速度は光速のn%を基本単位とし、その肢の末端速度は亜光速に達する。慣性質量が限りなく低減されていてもなお、そこには莫大な運動エネルギーが発生する/莫大なエネルギーが注ぎ込まれている。
そしていかに優れた推進器やアクチュエーターであってもエネルギー損失はゼロではなく、動作の『入り』の時点で────あらゆる一挙手一投足に、僅かながら前駆放射が発生してしまう。
その『基本動作に応じて発生する前駆放射』は射撃/砲撃のそれに比べて遥かに微弱で、飛び道具の距離では観測はほぼ不能。しかし近接戦闘の間合では、お互いに感じ取れてしまう。つまり戦術の俎上に乗る。
さながら生身の武術家が、敵手の視線のブレや筋肉の引き攣り、呼吸と脈のリズム。そうしたわずかな前兆を読み・また己のそれを欺瞞するがごとくに、
スレイヴ同士の近接戦闘では、前駆放射という動作の前兆を読み合い・騙し合い・詰まし合う、亜光速域の駆け引きが発生することとなる。
以上、およそいかなる交戦距離であっても、前駆放射が影響しない機動戦闘など存在しない。
スレイヴにとって、前駆放射を〝見る〟ためのセンサー感度は、単純なエネルギー出力や攻撃力、機動力や防御力に並んで、重要な能力値である。
**バースター兵器
指向性エネルギー兵器のうち、発射機構の耐久性と耐用性を犠牲にしたものを指す言葉。
端的に言うなれば、一発撃つたびに銃身が熔け崩れて砲身が吹き飛ぶ、加速器や発振器というより『指向性をもって爆発する爆弾』である。
ある意味では、原始的な火薬銃器に回帰している、とも言える。
デメリットは、そのまま。耐久・耐用を軽視したものでは一発撃つごとに発射機構の修復・再生プロセスに時間を要し、
無視したものは完全な使い切り。連射は不能であり、こと継戦能力と経済性においては、標準的なDEWに大きく劣る。
ではメリットは?
主に挙げられるのは、三つ。一つは単純な出力。二つ目は一基あたりの生産コスト。
そして最後が、速射性ではない『即射性』である。
光速・亜光速のDEWに対し、スレイヴが対処可能な最大の理由は、前駆放射の観測である。
扱うエネルギーの総量が莫大であるがために、DEW発射直前の、割合では極僅かな電磁パルスやニュートリノの漏出すら、前兆として観測可能な強度を得てしまう。
高エネルギーな砲撃であれば、発生する前駆放射が鮮明となり、敵に対処されやすく、
一方でエネルギー量を減らせば前駆放射は読まれにくくなるものの、当てたところで有効打になりえない。
このジレンマに対する一つの解が、『チャージ時間を長く取り、時間あたりの投入エネルギー量を減らすことで、前駆放射をギリギリまで低減させ、観測されないようにする』スナイパー型であり、バースター兵器はその対極。
『どれだけ鮮明な前駆放射が発生・観測されようが、実射とのタイムラグが限りなく小さければ対処は不能』という、いわばクイック型である。通常の加速器や発振器では、砲身への負荷や制御の問題から、発射プロセス全体の所要時間の短縮にはどうしても限界があるが、
ただ点火して起爆するだけの、指向性の爆弾たるバースター兵器にはその制約は存在しない。敵手のDEWの種別や距離などにも左右されるが、条件がよければ『敵砲の前駆放射を見てから〝後の先〟を取る』ことすら可能となる。
**火面兵器
指向性エネルギー兵器の分類、というより撃ち分け可能なモードの一つ。
細く絞り込む火線兵器は当てれば確実に有効打になるが命中させにくく、
三次元的に拡散させる火錐兵器は、比較的当てることは容易いものの、どうしてもエネルギー密度が低くなってしまう。
火面兵器は、その中間。
扇状、平面的に拡散させることで、それなりの攻撃範囲=命中性を確保しつつ、
同距離・同総エネルギー量という条件において、火錐兵器より遥かに高いエネルギー密度を実現する。
**相転移砲
指向性エネルギー兵器の一種。
弾道始端、発射された瞬間には弾体が観測できず、その次の瞬間から射線上の虚空より光子の塊が溢れ出す。以降、駆け抜けた距離に比例してどんどんと光子が、総エネルギーが増えていく──
と、見かけ上は『射線を走れば走るほど威力が上がるレーザー』のような、極めて異質な挙動を取る。
してその弾体は、原初粒子たる元子<アペイロン>。
撃ち出した観測不可能な元子の塊が、随時観測可能な光子へと崩壊していくことで、
あたかも『射線を走れば走るほど威力が増していくレーザー』のように見えている、というのが実態である。発射した元子すべてが光子に変われば、ただのレーザー兵器と相違ない。そして相転移砲にとって崩壊後の光子とは副産物でしかなく、その加害能力の本質は、まさに崩壊の瞬間。
ほとんど相互作用をしない、という性質によって敵の障壁も装甲もすり抜けた元子が、
まさに敵の内側で、相互作用を持つ光子に相転移することによる、防御不能の内部破壊こそが本領である。
観測不能・不干渉な状態に置かれていたエネルギーが可干渉状態にシフトすることによって、
理論上は敵の内側を直に灼きうる、という点では、マイクロブラックホール兵器にも近しいが、
MBHの蒸発『点』を、対基地・対要塞・対天体などならともかく、同スケールの機動兵器が描く軌道に直撃させることは不可能といっていい。戦術兵器としてのMBHは、ホーキング輻射によるガンマ線の爆風で広い範囲を浅く焼く、いわば榴弾としての運用がもっぱらである。
一方、『線』、あるいは『面』、あるいは『錐』状に、漸近的に崩壊座標を伸ばす相転移砲は、MBHに比べてはるかに座標を『合わせ』やすい。単位体積あたりの実体化エネルギー量自体は弱くとも、繊細な内部を直に攻撃できるならそれで十分。
なおデメリットは、現宇宙唯一の元子供給源である再分化機関と直結する必要がある点と、ほとんど相互作用をしない元子を、元子のまま高密度圧縮・加速・発射するために、非常に複雑で高度なプロセスを踏む必要がある点。
他のDEWの十倍以上の時間、きわめて独特な前駆放射を垂れ流し続けるため、相転移砲を撃つ前に、敵の通常のDEWによって蜂の巣にされてしまうことも。
**重力波兵器
指向性エネルギー兵器の一種。
自然界ではありえない短波長・超高強度の重力波動によって、瞬間的に巨大な潮汐力を発生させ、万物を引き裂きあるいは圧壊させる。
重力波であるために非常に高い透過性を持ち、防御が難しい、という点では、相転移砲とニッチが被っているが、重力波兵器の方が相転移砲よりも生産も制御も容易で、射撃プロセス全体に掛かる所要時間も大きく勝る。
しかし相転移砲より制御は容易い=必要な演算リソースは少ないが、要求エネルギーの燃費は悪く、同じ時空曲率制御により防御・軽減され、かつあくまで力学的・機械的な負荷を掛けるに過ぎないため、素の強度&慣性質量低減で耐えられる可能性もある。一長一短。
**レギオン/L.E.G.I.O.N.
Legion of External Ganglia Individual-Overextend Network/体外神経節群による個体過拡張ネットワークの軍勢、の再帰的頭字語。
つまりファンネル。ビット兵器。
単なる補助子機・無人機などはレギオンとは呼ばれず、拡張を超えて本体から物理的に分離した端末に、なお銀枝が宿り続けて。
つまり一つの魂が、物理的に分かたれた複数の神経系と並列接続し、擬似的な群体化を果たして初めて、レギオンたりうる。
レギオンユニットの一つ一つが個体圏域を纏い、誘導量子神経系により元子の再分化を十全に制御し、かつSSSCによる超光速での連携を可能とする、という点でスレイヴ『部隊』と同等でありながら、
すべて『一人』であるために複数人では不可能な域の、完璧に統御された連携をこなせる、という非常に強力なシステムだが、適合者が大きく限られる。
このレギオン適性は脳機能ではなく、未だ原理も所在も掴めない【魂】にほぼ完全に依存しているため、人工的な強化なども難しい。
**惑星規模居住構造体<テラストラクチャ>
広義では、巨大居住構造体<メガストラクチャ>の中でも、並外れて巨大なもの全てを指す。
狭義では、広義に加えて、その内部に完全な生態系を有している、という条件が追加される。
メガをも遥かに上回る巨大さゆえのtera<テラ>と惑星規模であるためのterra<テラ>のWミーニング。
広義と狭義の違いは、『惑星規模』を単なる大きさとして見るか、それとも生態系の器という機能をも含む、と見るかの違いである。
2023-06-29T03:38:10+09:00
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七聖剣:種族&組織
https://w.atwiki.jp/saraswati/pages/606.html
コンセプト:用済みになった勇者を殺す側、エゴと直結したチート能力の攻略
まだまだ未完成、特に年数とかまだ弄るかも
*種族
**六神/偽神
かつて大陸を六分割して支配していた、六柱の超越的魔法生命。
それぞれ
・万頸獣ヘカリオーズ
・神樹エルソラ
・熔岩真龍レゲンレフィト
・連峰鎚蛇ダシャル
・天翼大鷲キギア・テシア
・思惟海域フィアル≒エムナ
の名。個々の詳細はキャラ紹介の方で。
共通して、巨大な体躯、冠絶した力、強固な不死性、眷属たる知性種族の創造と、神の要件をすべて満たしている。亜人にとっては、いわば創造主であり、庇護者であり、支配者であり信仰対象、だった。
現在では、六柱すべてが聖剣遣いによって討伐済。その亡骸は切り刻まれ、帝国の隠匿研究機関である〈神明院〉の検体や、総督府を飾り付ける、標人の勝利を示すオブジェとして使われた。
しかし今でも、既に滅んだ創造主に、信仰を捧げ続ける亜人は少なくない。
標人国家『神聖ガデイロス帝国』、ならびに国教『熾陽教会』の公式見解として、彼らは『偽神』。ただ力があるだけの一生物が、不遜にも神を名乗っていたに過ぎない、とされているが、意外にも亜人による偽神信仰を、ガデイロス帝国は弾圧していない。
とはいえ、あくまで政策としての弾圧を行っていないだけ。
改宗に様々な正のインセンティブを設けることで、自ら信仰を棄てさせよう、という誘導は同化政策の一環として行われているし、民間レベルでの嫌がらせなどは多々ある。
**&ruby(テリアンスロープ){獣人}
原六種族の一つ。万頸獣ヘカリオーズによって創造された。大陸南部の草原地帯、&ruby(ラガリア){獣人郷}に生息。
外見的には、まさに二足歩行する獅子や虎、狼。
**&ruby(エルフ){樹人}
原六種族の一つ。神樹エルソラにより創造された。大陸南西、&ruby(クァーレス){樹人森林}を住処とする。
外見的には、もっとも&ruby(ヒューマン){標人}に近しい。透き通るような白皙の、線の細い美男美女といえる容姿を持つ。違いは肩や脇腹、腿などを覆う苔鱗、体毛が緑であること、あとは尖り耳ぐらい。
ただし、中身は他の亜人と変わらず劣らず、標人とは別物。緑の体毛は自前の葉緑体、体表の苔鱗は共生植物、血中にも数種の藻が流れ、毛細血管には菌糸や仮足が寄り添い、どころか全身すべての細胞に、神樹エルソラの分岐株がミトコンドリアのような融合型小器官として導入されている。
身体能力は全種族中、もっとも低いものの、それを補って余りあるだけの絶大な魔術適性を持つ。
全身のエルソラ分岐株や血中藻は、デキシオリボ核酸とその関連酵素を用いた、極微の化学反応による情報処理装置────DNAコンピューターそのもの。魔力産出速度、最大保有量、魔術実行能、そのすべてが全種族中トップクラス。
またエルソラ分岐株はテロメラーゼ活性およびDNA複製エラー訂正の機能をも持ち、そのためエルフは非常に長命である。
極めて高効率かつ高自由度の光合成と莫大な魔力は、生命活動に必要な有機物やエネルギーのほぼすべてをカバー可能。そのため非常に小食。彼らにとって食事とは、生に欠かせぬ営みというよりは、趣味や娯楽に近い。
万能の魔術適性と、神樹エルソラの支配下の森林すべてが、眷属たるエルフに味方していたことから、テクノロジーは大して発展していない。
文化としては、とにかく穏当、穏便、静謐、争いなく自然と調和することを美徳とする。
そのため、一度たりともアトランティスへ攻撃を仕掛けなかった唯一の種族だったが、聖剣の誕生後に諸とも征伐される。
その後は神樹エルソラの討伐者にして現&ruby(クァーレス){樹人森林}の総督である聖剣遣い、メラニア・グエラの権能『早贄』の魔法印を全個体が付けられたり、
裏社会では〝バファメの魔茸〟を寄生させられた上で棺に詰められ、〝生木〟と呼ばれる魔術装置として人身売買の憂き目に合うことも。もっとも不遇な種族といえる。
#region
実はその起源は、アトランティス以前、石器時代から漂落してきたホモ=サピエンスの一集団。
異界に放り込まれ、混乱する彼らをエルソラが自らの眷属に作り変えた。
外見が酷似しているのはそのため。とはいえ、全塩基列に手が入れられた遺伝子は、もはや標人との互換性を持たない。生殖器含めて似てはいるので越種の性行為自体は(他の亜人に比べれば)容易だが、交配は不能である。
#endregion
**&ruby(ドラゴニュート){竜人}
原六種族の一つ。熔岩真龍レゲンレフィトによって創造された。大陸北西、&ruby(ベルッシタ){竜人鉱岳}を住処とする。
外見的には、二足歩行のトカゲ。爬虫類。レプティリアン。
身体能力は標人以上の獣人未満。魔術適性は共振・共鳴特化かつ、出力よりは精密性に振った形。
彼らは石の都を造り、棲まい、また石貨を用いた経済を有し、戦いや狩りでは石の武器を持ち、石の鎧を纏う。狩った獣を料理するのはもちろん石鍋。
さらには共鳴魔術によって駆動する&ruby(ゴーレム){石の傀儡}を使った産業の自動化や、共振魔術による通信網さえ、部分的に成し遂げている。
社会の形態として、もっとも標人に近しいと言える。
文化的には石。文明的にも石。とにかく石以外のマテリアルに興味がない。せいぜい、石材ではどうしてもカバーできない『軽さ』や『柔らかさ』を植物繊維や獣皮で補う程度。
彼らが得意とする共鳴・共振魔術によってのピンポイントな高周波振動による、精密な破断・粉砕加工技術は、他のどの種族にも真似できない。彼らが造る石のネジや歯車は、大陸でもっとも高精度な物品である。
ちなみに竜人の喉奥にはフィルター器官が存在しており、これが加工過程で出る粉塵の侵入を大幅カット。加えて呼吸器や消化器自体にもそれなりの耐性があるため、塵肺などのリスクはない。肉体構造のレベルで石の加工に特化した種、と言える。
現在のガデイロス帝国および&ruby(ベルッシタ){竜人鉱岳}領総督府の方針としては、無難に石材産業の労働力として使っている。
が、彼らの持つ高周波振動を使った精密加工技術は理論上、振動数や焦点の調整次第で木材や金属材などにも応用可能。うまく使えば帝国の工業能力を飛躍的に向上させられるのでは? とは予測されているものの、降暦76年においては、慎重論が根強い。これは反帝国・亜人解放レジスタンスへの技術流出を懸念したもの。
現状、竜人の技術水準は、平均を取ればさして高くない。
突出した石材加工の技こそ持つものの、それ以外があまりにお粗末。総合的には、降暦76年どころか漂落当時のアトランティス帝国にすら、到底及んでいない。
そして反帝国、亜人解放を掲げるような者であれば、なおさら種族的アイデンティティである『石』への固執の度合は強い。
しかし、宗主種族よりの命令という形で別のマテリアルに、強制的に慣れさせてしまえば────その技術が、反帝国レジスタンスに流れれば。
工業技術、道具の作成という、個体スペックでは最弱の標人が持つ数少ない強みの一つが、質と量の両面で、完全に模倣され・吸収され・その遥か上を行かれることとなる。
最終的には聖剣遣いが鎮圧できるとしても、あまりにリスクが大きい。
よって同化政策が完了し、もはや大規模な反乱や蜂起のリスクは存在しない、という確証が得られるまでは、標人の側から石以外のマテリアルの加工を命ずることはない。
**&ruby(ギガント){巨人}
原六種族の一つ。連峰鎚蛇ダシャルによって創造された。大陸北部の寒冷山脈地帯、&ruby(リーストニース){巨人雪嶺}に生息する。
大陸に住まう七種のヒト型種族の中で、もっとも特異な生態を持つ。彼らは10mの巨体を持ち、食事をせず、遺伝子を有さず、というかそもそも有機生物ですらない。
体躯は鋼、血はリチウム流体、脳は電子回路であり、心臓は低温核融合炉。有機種族とは文字通りにジャンル違いの、金属生命体である。
身体能力は、見たままの鈍重。単純な馬力や頑丈さでは随一である反面、動きは目に見えて遅い────が縮尺を考えれば、見かけよりは速かったりする。
魔術適性は樹人に並んでトップクラス。並列実行能力ではエルフの分子演算に劣るものの、単一魔術の発動速度や規模では彼らの電子頭脳が最優である。本気出すとオーバークロックで更に高速化。特に得手とするのはガンマ線を照射する『死光』やプラズマカッターを形成する『輝断』などの指向性エネルギー攻撃。
弱点は有機脳に対して発熱が大きいことと、それによる回路焼損の危険性。とはいえ彼らが棲むのは雪山であり、冷却材には事欠かない。
基本的に群れることはなく、それぞれバラバラに雪原を彷徨っている。そのため社会の繋がりは薄く、技術や経済と呼べるものは絶無。しかし同族意識はあり、共通の敵に対しては協力することも。
性別は十種以上存在し(α、β、γ、δ……で呼称)、それぞれがアクチュエータ担当、電子頭脳担当など、特定の肉体部品の生産に特化している。数年に一度、それぞれ造ったパーツを持ち寄り、組み上げることで生殖を行う。
また、肉体が損傷や劣化した際にも、必要部品を作れる性を探し、頼るのが一般的。
この相互補修は完全に『お互い様』の精神で行われており、特に対価などのやり取りはない。
単個体では損傷を修復できない都合上、電子頭脳や核融合炉などの重要部品は常に複数基を内蔵し、一つでも壊れたら即座に修繕のための個体を探し始める。分かりやすくテセウスの船るうえ、大破した個体からも部品取りされたりするので、寿命はいまいちハッキリとしない。
肢は共通規格で六本。上部に二本、下部に二本、残る二本は車の予備タイヤめいて普段は使わず背負っているため、実質的には二腕二脚。付け替えだけなら自力で可。
なお近年、標人の支配下に置かれ、彼らの行う『経済』の概念を学んだことで、今まで当然に行われていた無償での部品融通に疑問を抱く・拒絶する個体も少数、出始めている。
多くの巨人からは自分勝手として蔑みの対象。
**鳥人
**魚人
**&ruby(ヒューマン){漂人/標人}
48年前、大陸の中央部に、棲まう島ごと〝墜ちて〟きた七番目のヒト型種族。
唯一実存としての神を持たない、&ruby(かみしらず){神不知}の民。寄る辺なき漂落者。〝地球〟出身、ホモ・サピエンスのコーカソイド。
身体能力は樹人よりはマシ程度の下から二番目。それも自己強化魔術ひとつで、即座に逆転される。
魔術適性は中央値、平均値ともに獣人よりはマシ程度。つまり下から二番目。ただし、樹人や巨人に匹敵するレベルの外れ値も、ごく稀には発生する。稀すぎて戦力としての安定運用は不可能。
個体の能力でいえば、間違いなく最弱の種族といえる。
神に創られ、神と共に在ることを誇りに思う原六種族の価値観において、神を持たない生物とは、端的にいって虫と変わらず、〝人〟たりえない。
その信仰観と個体能力の低さ、実際に神という後ろ盾を持たないことが『劣弱ゆえに神に見放された虫』という蔑視を生み。
アトランティスという土地の資源の豊富さと、転移時に多くの原六種族を轢き潰したことが、侵攻の理由を作った。結果として、漂落の日から絶え間なく、原六種族中、エルフを除いた五種族からの侵攻を受け続けることになる。
そして漂落から8年後、現在から40年前。日蝕の日。十あった王家は半数が途絶え、人口は漂落当時の1/3まで減少。窮地に立たされた漂人に、ついに彼らの神────異界さえも等しく照らす&ruby(ヘリオス){太陽神}が、彼らに手を差し伸べる。
曰く、今まで不干渉を貫いたのは、劣弱ゆえに見放したのでない。その逆、もっとも優れたヒトゆえに、己が庇護がなくとも生きていけるがゆえ。しかし偽りの神たちの干渉によって、本来あるべき力関係が歪められている。
歪みは正されねばならない。神を騙る魍魎は、真の神の御名の元に、浄滅されなければならない。
そして与えられたのは、七振りの聖剣。究極の魔法兵器にして、偽神を打ち滅ぼすための真なる神刃。
────というのが、神聖ガデイロス帝国および、熾陽教会の公式見解。
聖剣に適合した七人の英雄たちは、その絶大な力を持って、わずか半日のうちにアトランティスへの侵攻勢力すべてを撃滅。その後の半年の膠着(に見せかけた性能試験)ののち、電撃的な反攻作戦を実行。六神すべてを滅ぼした。
その後は、神を失った六種族を下級市民として/六地域を植民地として吸収。
以降四十年の長きに渡り、大陸全土の支配種族として君臨し続けている。
*組織
**神聖ガデイロス帝国
神聖アトランティス帝国の後継にして、大陸全土を統べる統一国家。
断絶したアトラス帝家に代わり、ガデイロス王家が中心となって再編された。
一応、名目上は立憲君主制を取り、庶民院と貴族院の二院制。
なのだが、実権はもっぱら残存する五王家のうちディアプレペス家を除いた四王家と、貴族院。そして熾陽教会の最高意思決定機関『主教円座』の三位一体に握られている。
本土アトランティスは、帝国中央が直に統治するが、遠く離れ、気候や地質なども大きく異なる六つの植民地にはそれぞれ総督府が置かれ、これが植民地統治のほぼ全権を握る。
総督には、それぞれその地の神を斃した聖剣遣いが任命されている。
その功績の巨大さと、亜人が反乱を起こそうが一人で制圧できる武力から、いずれも終身名誉職。もっとも聖剣遣い七人のうち六人は不老化しているので、『終身』がいつまで続くかはまったく不明。
技術レベルは中性~近世、一部の領域では近代相当。
これは魔術や魔法によるものと、回収した漂落者(=地球よりの転移者)から得た知識によるもの。
**熾陽教会
ガデイロス帝国の国教。国政に対して非常に強い影響力を持つ。
元はアトラス・ポセイドン・ヘリオスの三柱を主軸とする多神教(※)、『大地と海原と太陽の教会』だったが、異界の異大陸、その内陸ド真ん中に転移したことで、海洋への信仰は必然的に弱体化。
(※『偽神』は多神の中には入らない)
熔岩真龍レゲンレフィトならびに連峰鎚蛇ダシャルという、偶像ではない実存の地神よりの敵意と蔑視と、彼らの寵愛を受ける竜人・巨人の存在を知ったことで、大地への信仰もまた揺らぐ。
あらゆる環境が激変し、異種族の侵攻の脅威に晒されるなかで、太陽だけが、変わらず天頂に輝き、人々を照らしていた。
八年後、日蝕の日の聖剣誕生と『聖剣は太陽神より授かった力』というカバーストーリーにより、ヘリオス信仰の優位は決定的なものとなる。
そして降暦10年、聖剣遣いによる偽神討伐から二年後。熾陽教会に改名する────が、既にこの時点で『大地と海原と太陽の教会』は、聖職者も信徒も九割がヘリオス派(掛け持ち勢も多くいるので、他の神への信仰が完全に絶えたわけではない)。
改名に伴った教義や業務、組織構造などの変化もさして無く、実態に名が追い付いた、というだけに過ぎない。
以前からあった他神信仰も別に否定されてはいないため、アトラス信仰やポセイドン信仰も細々ながら続いてはいる。
魚人海域領総督にして熾陽教会特別司祭、聖剣遣いドミトリイ・イングレウスは、ポセイドン信仰の復活推進派。
***主教円座
熾陽教会の最高意志決定機関。それぞれが『北西』『南』などの八方位を冠する、八人の主教によって構成される。
名目上は主教の間に序列はないが、実際的には、太陽の昇る『東』の座がトップと見做されている。
**神明院
ガデイロス帝国の秘密研究機関。あらゆる意味で表に出せない知識を取り扱う、マッドサイエンティストの集い。
研究種別ごとに素数の符号が割り当てられ、複数の分野にまたがる研究は掛け合わせ。魔術行使時の脳の働きについては第14種、ということになる。
第2種→生物関連
第3種→魔法や魔術抜きでの基礎物理
第5種→思想や宗教など、社会を変えうるミーム
第7種→魔術関連
第11種→魔法関連
第13種→異世界よりの漂落物・漂落者・および漂落、という現象そのものについて
第17種→特に残虐性の強い兵器など
**原六種族解放戦線
亜人による反標人・反帝国レジスタンスのうち、もっとも巨大なもの。
**反魔術組織
**白刃
密輸組織
**聖剣
「&ruby(クリスタライズ){具象化}:&ruby(クリソコラ){珪孔雀石}────」
究極の魔法兵器。標人が持つ最大戦力。
存在するのはわずか七振りであり、そのすべてがまったく異なる権能を持つ──と、『七振り』で数えられることからも分かる通り、刀剣として扱われるが、本質的には『魔法の宿った剣』ではなく『剣の形を取る魔法』。
その本体は聖剣遣いの精神そのものと融合した、無形の魔法の塊であり、一般に聖剣と認識されている美しい結晶の剣は、その権能を最大限引き出しコントロールするための、わかりやすい力の表象である。
そのため、剣が実体化していなくとも、ある程度の権能は常時発動・展開可能。
ある程度以上の力を行使する際には、聖剣を具象化させる必要がある。
さらに全力を出す際には、剣に加えて聖剣遣いの全身を具象化された結晶が覆い・纏い・鎧う、言わば『変身』とでも言うべき形態に変貌する。この状態を&ruby(クリスタライズ・リファインメント){純化顕象}と呼称する。
しかし剣の具象化のみでも十分すぎるほど強力であるため、歴史上、リファインメントが使われたのは、偽神との決戦時のみ。
(つまり第二形態。ガンヴォルトのアームドフェノメノンとかマギの魔装のイメージ)
2023-04-09T00:15:36+09:00
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