エピローグ

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 鈴原凛の傀儡と化していた両性院男女が、突如として正気を取り戻した時。
 目の前には崩れかけた夢見崎学園の姿があった。
 暗黒の中に佇む学園はあまりに禍々しく、そこには愛も希望も感じられない。

「やあ、ひさしぶり」

 背後から不意にかけられた声に両性院が振り返ると、そこには一人の少年。
 見覚えのある顔だ。
 だが、彼が誰なのか、両性院にはどうしても思い出せない。
 少年は、両性院のつま先から頭のてっぺんまでを見渡して、

「そうか、キミは両性院君を選んだのか」

 と、意味あり気に笑った。

「意外だね、キミは赤蝮君に憧れてるものだとばかり思ってたのに……。そんなに両性院君の『チンパイ』が羨ましかったのか。……フフ、その上、両性院君が転校生か。つくづく君に都合の良い設定だね」

 ――こいつは何を言ってるんだ?

「だが、残念ながら、もう時間だ。キミの肉体がもう持たない。現実に戻ろう」

 ぐらり。

 両性院男女の視界が揺れ、愛と希望の学園は完全に腐り落ちた。代わりに、見覚えのある学園の姿が現れる。戦闘により荒廃した校舎。遠くから聞こえる若い男女の悲鳴。鼻腔を突く血の香り。疑いようもない。ここは――!

「――思い出したかな? キミは番長グループとの戦いで瀕死の重傷を負った。朦朧としながらも妄想を語る君の前に現れたのが、この僕。そうだろ? ね、――夢見崎アルパ君」

 その瞬間、夢見崎アルパは全てを理解した。
 自分はまた、ここに。
 希望崎学園に還ってきたのだと――

 ――いやだ! こんなところは……、こんな学園には、もう帰りたくない! 僕を、夢見崎学園に戻してくれ! 僕をもう一度、両性院男女に――。

 アルパの右手に暖かいものが触れる。血だ。己の腹から流れる大量の血―ー

 ――いやだ、こんなところで死ぬのはいやだ。せめて、死ぬなら、夢見崎学園で……。いやだ、こんな狂った学園で死にたくない! いやだ、いやだ、い、や、だ……

「……さて。最後に自己紹介をしておこう。僕の名はユキミ。本物の転校生だ。能力は『有無』。魔人の能力の影響範囲を拡大・縮小する力を持っている。君の能力、『キミとボクの二人の世界』を縮小し、『ボク一人の世界』へと変えた。自己愛の無限循環の中で作り上げられた君の学園。なかなかの見物だったよ。どうだい、――キミもいい夢見れたかい?」

 アルパはもう答えない。

「露払いもそろそろ終わるだろう。ダンゲロス・ハルマゲドンもいよいよ本戦。僕の役目もこれで終わり。後の仕事は彼に引き継ぐことにしよう。――メトロちゃん、君に会えなかったことは心残りだが……。フフッ……、君のお兄さんはとても強くなっているよ。僕なんかより、ずっと、ずっとね。君が生きていれば、すぐに会えるだろう。お兄さんの到着を震えながら待っているといい……。フフッ……、フフフ…………」


 さつばつ♪恋愛学園ダンゲロス -Dead or Love- 終了。
 第三次ダンゲロス・ハルマゲドンへ続く。





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