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第0.5話 「信頼と絆と、うる最初の事件へ」


  • いわゆるメンバー紹介的な話にて候。書き手は七星子です、ちょっと長いよ><


「防衛隊のメンバーですかぁ?」
「ええ、顧問となるからにはいろいろ知っておきたいと思いまして」

校長室の応接ソファには、校長の月水ともと、新しく防衛隊の顧問となった鳳うるが向かい合って座っていた。

「そうですねぇ、まず当麻まあとちゃん。この子は、いわゆる見えないはずのものが見える子なんですよ」
「え?見えない…ものですか…?」
「ええ、いわゆる心霊的なものですわね。お化けとか妖怪とか」
「は、はぁ…」
校長の言葉にうるは戸惑いが隠せない。
確かに防衛隊はそういった類の事柄を扱うこともあるとは聞いていたが、
学園のトップの人物から改めて聞かされた衝撃は大きい。

「それでね、そういった見えない者たちの絵を描くのが好きなんです」
「そういえば、いつもスケッチブックを持ち歩いてますね」
「それはもう、命よりも大切だそうですわ」
そう言いながらともは少し笑っていた。

「お友達なんですって、その子たちとお話も出来るそうなんです」
「そ、そうなんですか…」
「まあとちゃんを、いろいろ助けてくれるようです。だからお礼に似顔絵を」
これが校長の話でなければとても信じられなかった。
いや、それでも半信半疑である。
内心の焦りを隠すかのように、うるはテーブルの上のお茶に手を伸ばした。
白く薄い茶碗からは中国茶の香りが漂っていた。

「そうそう、そのお茶はゆっくちゃんのお土産なんです」
「ゆっく…えっと、確か留学生の子でしたよね」
「ええ、まだ日本語が上手く使えないらしくて、話の最中に”ゆっくり言って”と何度も言うからあだ名がゆっくに」
「本名は…劉九龍(りゅうくーろん)ですね。」
なんだか本名の語呂もゆっくっぽいとうるは思った。

「ゆっくちゃんは電脳関係が凄く得意なんです。うる先生も持ってる携帯端末、あれの開発にはゆっくちゃんも関わっているんですよ」
この人工島での生活には欠かせない携帯端末。
通話、メール、インターネットはもとより、クレジット機能、自宅から各公共施設の出入り、電車やバスの搭乗
ビデオのレンタル、ファーストフードのクーポン…などありとあらゆる機能が搭載されている。
これだけ高機能なものに学生が関わっているとは…

「情報工学に関しては、すでに博士号も海外の大学でとっているとか」
ゆっくに関する資料に目を通しながらうるは言った
「プログラミングとかソフトウェア開発とかそういった方面も強いみたいですわね、ゆっくちゃんは」
「ワタシでも聞いたことのある名前が並んでます…」
うるは思わずためいきをついた。自分にはない能力をゆっくは持っているからであった。
うるはこういった電脳方面の情報には疎かった。
メールやインターネットもほとんど携帯端末で行う。
自宅のPCはもう何日も起ち上げていなかったのを思い出した。

「それに中国拳法も出来るとかで、ときどき修行しているみたいですわ」
ともは、あちょーと言いながらそれっぽいポーズを取っている。
うるは思わず吹き出しそうになるのを堪えた


「その修行によくつきあってるのが静流ちゃんですわ」
「えっと、雫静流(しずくしずる)…スポーツの成績がダントツですね」
手元の資料を見てうるが言った。

「とにかく元気な子。いつも大きな声で挨拶してくれるの」
そういえば見かけるときはいつも走っているか大声で叫んでいるかであった…気がする

「それにね、静流ちゃんは忍者の末裔だそうよ」
「に、忍者ですか…?」
またもやうるの想像を超えた単語が出てきた。

「とにかく身軽でね、窓から出入りしたりするの。危ないわよーって注意するんだけど…」
「ところで…この注意事項の食べ物の取り扱い…っていうのは」
「ああ、静流ちゃんねもの凄くたくさん食べるの。でもすぐにお腹空いちゃって…で、時々食べ物のことになると我を忘れちゃって」
そういえば見かけるときはいつも何かを食べていた…気がする

「なんでも常人の20倍のカロリーを摂取するとか一日10万キロカロリー消費するとか…」
「いや、ないない。それはない」
うるは思わず突っ込みを入れてしまった。

「そうなの…? 怪我をしてもステーキを食べればその日のうちに治るって本人は言ってたけど…」
「な、ないと思いますが…」
そう言いながらも防衛隊メンバーならあるかも知れない…とうるは思っていた。

静流の資料の体力測定の項目には、同年齢の生徒の平均をはるかに超える数値が並んでいる。
また各種格闘技を習得しているらしく、あらゆる武道の段位も記載されていた。
こういった優れた身体能力を見と、忍者というのも説得力がある。


「あと、ちあいちゃんね」
「本名は…落合知愛(おちあいともえ)となってますね。図書委員ですか」
おそらく、おちあいと知愛を音読みした物をかけて、ちあいというあだ名なのであろう

「ちあいちゃんは本が大好きなの、それでこの学園の図書室を実際に取り仕切っているのはちあいちゃんなの」
この学園の図書室といえばかなりの蔵書を誇る。そこをどのように取り仕切っているのかうるは気になった。

「あれだけの蔵書になると、探すのが大変ですね」
「あ、そんなときはちあいちゃんに聞けばいいのよ。何処に何があるのか全部把握しているから」
「全部…ですか?あの、確か学園の資料で蔵書は300万冊以上だったかと…」
「そうですよ、そのくらいあります。ちあいちゃんはその全ての所在を覚えていますのよ」
またもやともの口から驚くべき言葉が出た。

「ちあいちゃんは記憶能力が凄いの、なんでも覚えちゃうんですって」
ともはニコニコしながら言う

「まさか、本の中身も全て…でしょうか」
「読んだのものはそうみたいね。でも興味ある物しか読まないから蔵書全ての中身は知らないみたい」
読んだものだけ、というのでもうるには充分驚きであった

「本人に言わせると”忘れない”んじゃなくて”すぐに思い出せる”ってことみたいだけど、何か違うのかしらね?」
ともは人差し指を唇に当てながら考える仕草をした。

それにしても、この四人の特徴はにわかには信じがたかった。
超自然的な物が見える
高度な電脳技術
忍者のような身体能力
記憶能力
そういった常人を超える能力の持ち主だからこそ、防衛隊の隊員としてやっていけると言うことだろうか。
ならば、この四人のリーダーにはどのような能力があるのだろうか。

「では群咲(むらさき)しゃんどぅといった生徒は…」
うるは恐る恐る訪ねた。もうどんなことでも驚かない心づもりだ。

「しゃんどぅ君は、特別どうといった能力はないですわ。お昼寝が好きみたい」
うるは拍子抜けして椅子から滑り落ちそうになった

「えっと、そうなんですか。ワタシは隊長であるだけに何かあるのかと…」
「しゃんどぅ君はそういった力はないわ、けれど情報を分析することと状況判断が優れていますわね」
「どういった意味なんでしょう?」
「たしかにちあいちゃんの記憶能力も静流ちゃんの身体能力も優れています。けれど、それだけではことが起きたときに対処しきれないんですの」
ともは応接ソファから立ち上がり、窓際の校長用の椅子に座り直した

「どんなに優れた能力でも、使い方が分からなかったり、使い道がなければどうしようもないの」
「おっしゃる通りかも知れません」
「しゃんどぅ君は、そういったみんなの個性を最大限に活かすことが出来るの。何かが起きたとき、誰が何をすれば一番良いかをすぐに判断するわ」
「それがリーダーとして何よりの能力ですか」
「そうね、そしてしゃんどぅ君はみんなを信頼しているわ。信頼して全てを任せる、だからみんなもそれに必死で応えようとするの」
「なかなか出来ることじゃないですね」
「ええ、そんなしゃんどぅ君だから安心して防衛隊の隊長を任せられるんですの」
ともは優しく微笑んだ。とももまた、しゃんどぅのことを信頼しているのだろう、うるは感じた。


「えーっと、防衛隊員はこの五人で全員ですね」
うるが資料をめくりながら言った

「あっ、そうそう、忘れる所でしたわ。実はもうひと…」
うるの言葉を遮るように、ともの携帯端末が鳴り出した。

「あらあら…ちょっと待ってねうる先生…はい、もしもし、ともですが…え、事件ですか?分かりました。では集合ですね」
ともは携帯端末も通話を終えると

「うる先生、どうやら防衛隊の出番が来たようですわ」
と真剣なまなざしをうるに向けた

「えっ!!はい、分かりました。作戦室に向かいます!!」
うるは急ぎ資料をまとめると、慌てて駆けだした。

作戦室へ向かう道すがら、うるは
そういえば、校長先生が最後に何か言いかけてたわね
と思い出していたが、今はそれどころではない。

これから自分は五人の隊員とともに事件に立ち向かわなければいけない。
無事に解決できるであろうか
不安が胸によぎる
けれど、信頼してみようと思う。
愛すべき生徒たちを、そして群咲しゃんどぅの隊長としての資質を。

いつか、自分にも隊員たちのような確かな絆が生まれるように願って。




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