SS > 七星子 > 第3話 「約束と青春と」 その2 対決


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第3話 「約束と青春と」

その2 対決



しゃんどぅと静流は校長室の前にいた。
静流が扉に耳を当てて中の様子を探っている。

「だめ、なーんの音もしない」
「だろうな、仲良くメシ食ってるわけにもいかんだろうし」
「メシ!!!!」
とたんに静流の目がきらきらと輝き出す

「あほか!! 例えだよ」
静流ががっくりと肩を落とす

「それで、どんな作戦で行くの?」
「ないよ、そんなもん。俺が先に入って、てきとーにあいつらの気を引くから隙をついてお前がドンだ」
「いししし、私そういうの得意」
静流がけらけらと笑っている。

「そうだ、おい、静流ちょっと耳を貸せ」
しゃんどぅはそう言って、静流の耳元で一言二言囁いた

「ん、いいけど。なんで?」
「ちょっと、な。保険みたいなもんかな」
「ふーん」
静流は納得できない表情だ。

「いいか、いくぜ。突入のタイミングは任せるからよ」
「おう」
しゃんどぅは校長室のドアを開けて中に入った。

「誰だお前は!!」
黒ずくめの犯人の一人がしゃんどぅに銃を向ける。

「あ、ども通りすがりの学生です」
しゃんどぅが惚けた顔でそう言いながら臆することなく男に距離を詰める。

「動くな」
男が充の引き金にかけた指に力を込めたのが分かる。

「へいへい」
しゃんどぅは歩みを止め、わざとらしく両手を上に上げる。
そして視線の端で部屋の様子を探る。
状況は変わらず、一人がともの側に、もう一人が代議士の鬼頭の側にいて銃を構えている。
ブラインドのかかった窓際に置かれていた花瓶もやはり粉々に砕けて床に散らばっている。
しゃんどぅは男たちの持つ拳銃に注目した。リボルバー形式の拳銃だ。
そして、校長のともも、代議士の鬼頭もパニックを起こすこともなくおちついているようであった。

「あーえーとなんだ、おい無駄な抵抗はやめろ!! みたいな」
しゃんどぅがふざけた口調で告げる。

「何を言っているんだガキが、何しに来やがった!!」
「決まってんだろ、この茶番劇を終わらせにだよ」
「きさま…われわれの決起を茶番というか…」
男の表情はサングラスで分かりにくいが、怒っているのは間違いなかった。

「当たり前だ、こんなとこ立て籠もって何になる。アホだろJK」
しゃんどぅはなおも挑発を続けた。

「おのれ…死ぬがいい!!」
男の引き金が切られそうになったその時

校長室の窓枠にぶら下がりながら、ガラスを外から蹴破って静流が突入してきた。
ガラスの割れる大きな音に男たちは驚き、一斉に静流を見た。
男たちの銃口が、人質から外れたことを確認した静流は、まずすぐ近くのともの側の男を目指し低い態勢で突進する。

「なんだと…!!」
男が慌てて銃口を静流に向けたときにはすでに、静流の肘が男のみぞおちに打ち込まれていた。

「うぐぅ…」
男が苦しみの声を上げながら手から銃を落とした。
そこへ間髪入れず静流の回し蹴りが男の頭部に命中する。
その一撃で男の意識は飛び、膝から崩れ落ちた。

「き、きさまっ!!」
鬼頭の側の男が静流に銃を向けた。
銃口が静流に合わさるよりも早く、静流は男に飛びかかり中段後ろ蹴りで踵を突き刺すかのように腹部にたたき込む。

「ぐ…がっ」
男の体がくの字に折れ曲がり、垂れ下がった顎を目掛けて静流は拳を下から突き上げる。

「ダメだよ、攻撃するときはしゃべっちゃ」
男は意識を失いながら仰向けに倒れた

「くっ、な、なんだと言うのだおまえらは!!」
しゃんどぅの前にいる最後の一人が叫んだ

「何って、単なる高校生だよ」
「ぬうぅぅ!!」
男がしゃんどぅの心臓目掛けて銃を向けた。
静流が突撃するには距離がありすぎた。

「死ねよぉぉぉ!!!!しゃんどぅっっ!!!!」
男の指が引きしぼられた

だが、弾丸は発射されなかった。

しゃんどぅの手が男の拳銃に被されていた。
その手は撃鉄と銃本体の間に差し込まれ、撃鉄が弾丸の雷管を叩けないようにしていたのだ。
リボルバー形式の拳銃だからこそ出来る芸当であった

「な、なんだと…」
男があっけにとられている隙を静流は見逃さなかった。
静流は跳躍して一気に距離を詰めると同時に、男の頭頂部目掛けてカカトを振り落とした。
鈍く重い音がした。
そして男が崩れ落ちるより早く、静流は腰を落とし背中から体重を乗せた体当たりを繰り出す。
大柄でもない静流の体当たりにも関わらず、男は激しく吹き飛び壁に叩き付けられた。
意識は完全に失っているようであった

「ひゅー鉄山靠(てつざんこう)かよ」
しゃんどぅが口笛を吹きながら言った。
鉄山靠とは、八極拳にて至近距離から使われる背面体当たりのことであった。

「ああ!!大丈夫!!打たれなかったよね!?」
静流の大声が響く。

「んあ?余裕よゆーってね」
しゃんどぅは落ちていた拳銃を拾い上げ、片手でシリンダーラッチを操作して弾丸を排出させた。
落ちた弾丸を見て、しゃんどぅは
「ふん」
と鼻を鳴らした。

「校長先生はっ!!怪我ない!?」
静流が校長の側に駆け寄る。

「ええ、どこにも。お二人とも、ご苦労様でした」
ともはそう言って、にっこりと微笑んだ。

「そっちのオジサンは!!痛い所ない!?」
「あ、ああ、無事だよ」
代議士の鬼頭は、この僅かな時間に繰り広げられた戦闘劇に驚きを隠せないでいた。

ふいにしゃんどぅの携帯端末が鳴り出した。
ちあいからの着信であった。
「おう、俺おれ」
「しゃんどぅ君!!無事で良かったです…!!」
ちあいの声は涙ぐんでいるようであった。

「心配すんなって言ったろ?」
「でも…でも…」
「すぐにそっち戻るから、うる先生にも伝えてくれよ」
「はい、分かりました」
しゃんどぅは通話を終え、ともに向かって
「んじゃ、後始末はてきとーに」
そう言って手をひらひらと振った。

部屋を出る直前、しゃんどぅは止まり振り向いた。
「ああ、そうそう。割ったガラス代金は静流に直接請求ってことで」
「はあ!?なんでよ!! ひじょー事態じゃん!!」
「あのな、わざわざ窓蹴破って出てこなくてもいいだろが…」
「そんなことない!!あれ重要!!」
静流が胸を張って力説する。

「猿かおめーはっ、いつもいつも窓から出入りしやがって」
「なんだとーーー!!!!」
静流が怒り出したのを見て、しゃんどぅは慌てて駆け出す

「わたしから逃げ切れるとおもうなよ!!」
静流がしゃんどぅを追いかけて行った。

そういった無邪気なやり取りが、先ほどまでの緊張感を何処かへと払い飛ばしていた



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