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第3話 「約束と青春と」

その3 約束と青春と



事件から数時間後、日は暮れ始めていた。
校長のともは、うるから事件に関するレポートを読んでいた
唐突に、ノックもなく校長室のドアが開けられた。部屋に入ってきたのは、しゃんどぅであった。

「あら、しゃんどぅ君どうかしました?」
ともがいつもの笑顔で言った。

「で、テストはあれで良かった、校長センセ?」
しゃんどぅがともの目を見据えて言った。

「テスト…ですかぁ?」
「とぼけんなよ、あのヤラセ芝居の立て篭もりだよ。おおかた武器を持った相手に対するSDFの有用性とかのテストなんだろ」
しゃんどぅが睨むような目つきでともを見る。ともは眉一つ動かさない。

「この事件、おかしいことだらけだったろ?」
「どこが…ですの…?」
「まず、気になったのは、一通り防犯ビデオを見たとき。いくらなんでもあんたら二人が最初から落ち着きすぎだったこと」
「あら、あたしもそれなりに武道の心得があるからかしらねぇ…冷静でいられたのは」

「なるほど校長センセはいいとして、あの代議士のオッサンまで終始冷静なのは引っかかった」
「ああ、鬼頭先生も武道をなさってますから」
「ほう、いきなりの身内の裏切りでも焦らないってか?」
ほんの少しだけ、ともの表情がかげったのをしゃんどぅは見逃さなかった。

「信頼して身辺の警護を任せていたヤツがいきなり牙を剥く。誰だって焦るだろーぜ?」
ともは無言であった

「その次は、犯人の素性があまりに簡単に分かったこと。」
「それはちあいちゃんのお手柄ですわ。ハッキングなんて、お行儀は良くないですけれど」
「ちあいはあまりハッキングが得意じゃないんだぜ、にも関わらず高いセキュリティを突破した」
「んー偶然なのかしらねぇ」
ともは頬に手を当てながら、考える仕草をする

「わざとセキュリティのランク落としてたんだろ?」
「なんのために…ですの?」
「情報を自分たちで掴ませるために。苦労してゲットした情報なら書いてあることを鵜呑みしやすい」
「単純な心理テクニック…ってところですの?」
「まあな。ついでに書かれていた情報が犯人の不幸な過去。アホの静流ならともかく、繊細なちあいは動揺した」
しゃんどぅの静流に対する物言いを聞いてともは少し吹き出した。
それを見たしゃんどうもニカッと笑う。
だがそれもつかの間、すぐにもとの突き刺すような強い視線をともに向けた

「ちあいがいざ犯人と直接対峙したときに、不幸な過去を知ってたら攻撃するのをためらっちゃったかもしれないよな」
しゃんどぅの言葉を聞いても、ともはなおも微笑んでいた。しかし、それは口元だけであった。

「だからアイツは現場へ連れて行かなかった」
「そうでしたの」
「他にもあるぜ、犯人が俺の名前を知っていたこと」
「それは、静流ちゃんが呼んでいたのを聞いたからでは?」
「いや、それはない。突入する前に静流に俺の名前は呼ぶなと言い含めておいた」
「なら、もしかしてワタシが呼んでしまったのかもしれませんわね」
「それもない。俺は覚えているが校長ゼンセは一度も俺の名前を呼ばなかったよ。なんなら防犯カメラで確認するかい?」

ともは一つ大きな深呼吸をするとガラスの割れた窓のブラインドを開いた。
傾きかけた日差しが室内を赤く照らす。
ともは外の景色をじっと見ている。
「それでも、なぜアレがお芝居でテストだったといえるの?」

「拳銃に入っていたのは空砲だった」
「どうしてそう思うの?」
「分かるよそれくらい。音が違う。実弾なら弾頭が空気を切り裂く音がする。あの防犯カメラの音声で何度も確認した、いずれも空砲と判断した」
「でも、実際に花瓶は割れましたわよ、空砲でそんなことが出来るかしら」
「映画なんかで使うのじゃなくて、本物の空砲ならかなりの衝撃が発生する。缶ジュースに穴を開けるくらいのね。密着させれば花瓶くらいわけないさ」
「そして、最後に拳銃を拾い上げて確認した…ってことね?」

しゃんどぅが来客用のソファにどかっと腰を降ろした。そして大げさに足を組んでみせる。
「空砲使うなら、そりゃお芝居しかないでしょ校長センセ」

しゃんどぅと、ともの間に重い沈黙が生まれた。
どのくらいの時間、しゃんどぅは座ったまま、ともは窓の外を眺めながら、二人は身動き一つしなかっただろう。
その沈黙を破ったのはしゃんどぅだった。

「校長センセ、あの代議士のオッサンにも伝えておくれよ。約束はきちんと守るからって」
ともが振り返りしゃんどぅを見た。
しゃんどぅは立ち上がり、ドアに向けて歩き出した。
「あんたの親父さんの遺志は守るよ。あの人は俺にとっても親父みたいなものだし、それに師匠だからさ」
しゃんどぅは背を向けたまま照れくさそう言った。

「しゃんどぅ君、ありがとう」
ともはそう言って笑いかけた。普段見せるとても優しい笑顔だ。
それをちらりと見てしゃんどぅは、軽く手を振って校長室の扉を開けて出て行った。


しゃんどぅの背中を見送ったともは携帯端末を手に取るとどこかへ連絡をした。

「鬼頭の叔父様ですか? ええ、そうです。はい、ええ何もかもですわ。ふふ、さすがお父様の見込んだ生徒です。」
ともは先ほどのしゃんどぅとの会話をありのまま伝えた

「ええ、彼ならきっと。そうですわね。そのための学園防衛隊、SDFですから。ふふ、はい、それでは失礼します」
ともは静かに受話器を置いた。その顔にとても爽やかな笑みを浮かべていた。



「あーー!!やっと出てきた!!遅いぞしゃんどぅ!!!!」
校門を出たしゃんどぅを静流とちあいが出迎えた。

「なんだよ、先に帰りゃいいのによ」
「これから打ち上げですよ、しゃんどぅ君」
ちあいがニコニコしながら言った

「無事解決した打ち上げ!! さあ行くぞ!! 肉が私を待っている!!」
静流が待ちきれないといった風に、その場で足踏みをする。

「肉だぁ?お前、どんだけ食うつもりだよ?」
「まずは五人前!!それから五人前!!」
「…どっかおかしいんじゃねえのか、その食欲」
「うるさーーー!!乙女はお腹が空くの!!」
二人のやり取りを聞いてちあいが笑い出す

「たっく、どこが乙女だよ」
しゃんどぅは、やれやれといった感じでわざとらしく頭を抱える

「ほら、さっさと行くよ!!」
静流が強引にしゃんどぅの手を掴み引っ張り出す

「おわっ!!ちょ、おま…だああっ!!」
体勢を崩し半ば引きずられるような形でしゃんどぅは走り出す。

「あ、待って下さいよ、わたしも行きますから」
置いて行かれそうになったちあいも慌てて駆け出す。

危うく転びそうになりながらもしゃんどぅは
こんな青春っぽいのも悪くないかもな
そう思った。



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