SS > shando > 小六の春:分岐A


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平穏ルート

  • これでも平穏なんです。
  • 平穏というか無難。
  • 無難というか、起伏が無い。



 ドキドキしながら図書館に向う。
 返事は来ているだろうか。
 答えは書いてあるだろうか。
 今までこんなに緊張したことがあるだろうか、と思いながら、パソコンの前で暫くじっとしていた。
 なんとなく恐いのはどうしてだろう。

 パソコンを起動し、いつものようにウェブメールにログインする。
 新着メールがあったことに心臓が飛び跳ねる。
 返事が来たんだという安堵と、そこに何が書かれているかの不安。
 1つの壁を越えたと思ったら、また聳える壁を作り出す心理に笑い出しそうになりながら、文面を確認すべくクリックする。
 そこに記された文字に、一瞬綻んだ口元が急激に固まる。
(どこかで……)
 どこかで見た覚えのある文字だった。
 そう。
 ここ最近、頻繁に、何度も。
 検索窓にタイプする。
 両親と祖父の名前を。
 そして、一番最初に記されたリンクを開いて、そこに記載されている情報に素早く目を走らせる。
(あった……)
 同じ名前。
 ロンが示してきたのは学校の名前としてだったが、経歴に書かれているものは施設としての名称だった。
 関連性があるのか……。
 続いて、その文字を検索にかけて、最初に示されたリンクにアクセスする。
 広大な海に浮ぶ島の画像が大きく配置され、紹介文が書かれたサイトは、いかにも教育関連を連想させるデザインだった。
 その内容をざっと眺め、中等部から大学までの一貫エスカレータ式で全寮制の学園であることに、マウスを操作していた手が止まる。
(……あまりにも出来過ぎてないか?)
 両親と自分の関係。
 弟の誕生。
 祖父の誕生日での出会い。
 中学受験の話。
 それらが奇妙な繋りをもって、自分を誘っているように感じるのは、自意識過剰なのだろうか。
 全てが罠であると考えたほうが自然では無いのか?
 しかし、罠であったとしても、今の自分に都合の良い展開なのではないか? と自問する。
 今の自分が負っている、どうしようも無い不自由さから脱却することが可能なのでは無いか……。

 閉館の案内が流れる中、パソコンの電源を落しながら同じ言葉を胸の中で反芻する。
 帰宅したら、両親に言うつもりの言葉を。
 どう説得するかを。
 ロンへの返事を、現実のものとするために。

END