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カジノ・ロワイヤル 牡牛と天秤と乙女 774チップ 2007/10/04(木)00:54 続きです。第八ターンに入ります。 --------------------------------------------------------------- 各地では火花を散らせながらどうにか一日が終わり、 牡牛と天秤はまた乙女の部屋で床を借りていた。乙女は自分の居ぬ間に勝手に外出した牡牛と 外出先からなかなか帰ってこない天秤に口うるさかったが、何やかやと真相をはぐらかす兄弟の前に ついにことの実際を訊くのをあきらめた。乙女自身蟹との遭遇で疲弊していたし、 兄弟に説教をすることでそれが幾分かまぎれたというのもあるのかもしれない。 深夜、隣ですやすやと寝息をたてる天秤を起こさないように 牡牛は半身を起こしたまま部屋の壁にもたれ、ずっと考え事をしていた。 それもこれも双子の治療中に天秤が喋った内容が原因だ。天秤はどうしてあの場所に行ったのかと 訊ねられ、ついに腹をきめて兄にだけは自分の見たものを話した。 天『兄さん。あのね──』 絢爛豪華なカジノ・ゲームの下で、もう一つの陰謀がうごめいている。 船はゲームの決着と共に港に着くだろう。そうなる前に、まだもう一悶着あるとしたら。 朝になってからが勝負だ。自分たちがどうするか、起きたらすぐに決断しなければならない。 決勝戦までに長い時間を控えた朝が来る。 ゆっくりと思考を練ってから眠りについた牡牛と、 少しでも傷から早く癒えようとひたすら眠った天秤と乙女が同じ部屋で目覚める。 朝の身支度を終えたあと、天秤が部屋を出ようとする前に乙女から先制攻撃が入った。 乙「お前ら、今日はここで大人しくしてろ。あとは俺がやるから。   これ以上気苦労の種を増やされたらかなわん」 天「すみません。でももうご迷惑はおかけしませんからどうか……」 牛「……」 牛は、乙女にものを言おうとする天秤を手で制した。それから自分の決断について 天秤に確認をとる。 牛「天。乙女に船倉のことを話してもいいか」 天「え? ……あ、でも」 牛「乙女なら大丈夫だ。多分心強い味方になる。それに相談するだけだ、迷惑にはさせない」 乙「どういうことだ」 牛「……」 牛の先で、天秤が二人の顔を見比べる。特に乙女が信頼の置ける人物か確かめようとしている。 牛「乙女は俺たちを匿う度量がある。それにお前一人だけが勝手に動けば、お前が危険だ。   俺はそういう状態にはしておきたくない」 天「(しばらくして、うなずく)分かった」 乙「……?」 牛「(乙女の顔を見て)乙女。お前を信頼して打ち明ける。   天はおととい隠れ場所を探しに行って、船倉で麻薬を見つけたそうだ。箱単位で置いてある」 乙「──(目を瞠る)」 牛「見過ごしてもいいが、通報するなら時間が無い。船内警察が機能してないのは見ての通りだ。   どうすればいいか、信頼できる人物を集めて知恵を貸して欲しい」 乙「それなら射手と水瓶、それから羊だ。その三人なら裏でもマフィアとのつながりがない   可能性が高い。双子はコネが強いが繋がってる相手が多すぎるからひとまず保留しろ。   蠍はまだ部屋からは出ないと思うが、裏とのつながりがある。協力を仰ぐのは最後に」 乙女は即答した。傷ついてなお、その処理能力の高さは失われていない。 天秤は牛の横でうなずきながら、乙女とは別の算段を立てている。 乙女は双子が当のマフィアに襲われ負傷した事実を知らないからだ。 牛は乙女の言葉をうけるとゆっくりうなずき、次いで外出の許可を請う。 乙「わかった、その三人の部屋なら行って構わない。   ……俺は少し一人で動かせてくれないか。確かめたいことがある」 牛「ああ。気をつけろよ」 三人は一緒に部屋を出る。 乙女が先にどこかへ向けて歩き出し、廊下の先に消えたのを見送ると牛は天秤の背を叩いた。 牛「お前は双子についててやれ。何かあったら一旦部屋へ戻ってきてくれ」 天「はい。兄さんも気をつけて」 牛「(ゆっくりうなずく)」 牛と天秤もその場で別れる。先に医務室へと歩いてゆく天秤を見送ると、 牛は踵を返して今度こそ自分の目的地へ歩き出した。 -[[続き>カジロワ62_07]]

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