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カジノ・ロワイヤル 牡牛と羊と魚 774チップ 2007/10/04(木)05:31 6の続きです。 --------------------------------------------------------------- 射手、水瓶、羊のいずれを最初に訪ねるかと考え込んで牛が真っ先に目指したのは羊の部屋であった。 射手と水瓶はこの船内ではしょっちゅうつるんでいる上、射手に対しては一連の勝負で負けた気負いがある。 射手がもうすっかり忘れてしまっているのは見てもわかるのだが、 それでも乙女や天秤の仲立ちなしに一人で行くとなると多少の奮起が要る。 牛(今回のカジノ・ゲーム、おそらくは羊が優勝の最有力候補だろう。資産で一番遅れをとって   いるのはいただけないが、あの判断の早さは他の奴には真似できない。   蟹や山羊といったか。あの辺は不気味ではあるな。   ……双子はあの傷で本当にゲームに出る気だろうか。高額賭けで短期決戦に持ち込めば   勝機もあるだろうが、逆にこれまでより長丁場になる可能性が高い) 簡単だが変装もしているし、こっそり観客用の予想馬券を買ってみようか? そんな茶目っ気が頭に浮かびかけてひとりで首を振る。「いかんいかん」 羊の部屋をノックすると、羊はすぐに顔を出した。 昨日まで顔に痣一つなかったのに今日は朝から痣だらけの顔に氷嚢をあてている。 牛も驚いたが、羊も突然の牛の来訪に見当がつかず驚いているようだった。 羊・牛「(同時に)あの」 牛「……あ、どうぞ」 羊「あ、ああ、うん。つーか何の用?」 牛「中で話してもいいか」 羊「どうぞ」 羊はすんなりと牛を部屋に通すと、テーブルの上に広げていたトランプの クロンダイク(ソリティアの一種)を壊してカードを一息にたたんだ。出来がよくなかったらしい。 トランプと救急箱以外めぼしいものが何もないこざっぱりした部屋に牛は腰を下ろす。 牛「どうした。その傷は」 羊「ケンカ。賭けと喧嘩は男の華ってな。おー痛てて」 羊は喧嘩っ早いことで有名だった。ここ数年は流石に落ち着いてきたのか大分回数も減ったが、 元来気が短いらしく素面でもかっとなるとすぐに手が出る。 牛自身も酔っていたときに下らない理由で殴り合いになったことがある。僅差で負けた。 血の気の多い羊にとって勝負三昧で、且つ勝利のために冷静さを鍛えられるギャンブラーは まさに天職だったのだろう。 牛「もしかして、それもマフィアか何かとかか」 氷嚢をあてる羊の顔がぴたりと止まり、鋭い目が牛に据えられる。 羊「どういうことだ」 牛「うむ。決勝前だが相談してもいいか」 羊「中途半端に話を曇らせるな。ぱーっと全部言え」 牛「弟が船倉で麻薬を見つけた。マフィア絡みの可能性がある」 羊に迫られても要点をすぐ言えるように、部屋に来る前から言う台詞を決めていた。 ゆっくりとした穏やかな口調だが重い牛の言葉に、羊はしばらく黙る。 少しの間思考を重ねたかと思うと彼は軽快なフットワークで立ち上がる。 羊「魚って奴覚えてるか。プレイヤーの中にいた」 牛「(そういえばテレビに映ってたな)……一応顔だけは」 羊「そいつがマフィアを追ってる。呼んでくるから待ってろ」 自分の引きのよさに驚く牛を尻目に羊は部屋を出る。あくまで決勝戦に向け、氷嚢は顔にあてたままだ。 決勝戦を夜に控え、魚を含めた警察の面々は薬物取引の現場を押さえようと焦っていた。 魚自身も当然部屋にはいない。何かあったら無線を持ってる仲間を使って呼び出してほしいと 言い残し、魚は銃を携帯して朝早く部屋を出て行った。 羊が魚の仲間に声をかけ、魚に無線を入れてもらってほどなくすると魚は羊の部屋に現れた。 廊下で羊を待っていたかと思いきや、羊が現れるなり人気のないことをいいことに接吻する。 羊「……(赤くなった顔をそらしながら魚の顔を押しのける)……外でやんな」 魚「へへ。だって羊とは昨日一緒に寝なかったから」 羊「大事な勝負の前はやんねえの。やると体力も気合も落ちるだろ」 魚「俺まだ腰痛い」 羊「知るかっ!!」 魚「羊、顔すごい赤いよ。腫れまだ引かないのかなあ」 二人して部屋に入ると、牛にも「顔が赤いぞ」と指摘された。 牛に他意はなかったのだが茹でダコのように赤くなった羊の顔が元に戻るまでしばらくかかった。 -[[続き>カジロワ63_08]]
カジノ・ロワイヤル 牡牛と羊と魚 774チップ 2007/10/04(木)05:31 続きです。 --------------------------------------------------------------- 射手、水瓶、羊のいずれを最初に訪ねるかと考え込んで牛が真っ先に目指したのは羊の部屋であった。 射手と水瓶はこの船内ではしょっちゅうつるんでいる上、射手に対しては一連の勝負で負けた気負いがある。 射手がもうすっかり忘れてしまっているのは見てもわかるのだが、 それでも乙女や天秤の仲立ちなしに一人で行くとなると多少の奮起が要る。 牛(今回のカジノ・ゲーム、おそらくは羊が優勝の最有力候補だろう。資産で一番遅れをとって   いるのはいただけないが、あの判断の早さは他の奴には真似できない。   蟹や山羊といったか。あの辺は不気味ではあるな。   ……双子はあの傷で本当にゲームに出る気だろうか。高額賭けで短期決戦に持ち込めば   勝機もあるだろうが、逆にこれまでより長丁場になる可能性が高い) 簡単だが変装もしているし、こっそり観客用の予想馬券を買ってみようか? そんな茶目っ気が頭に浮かびかけてひとりで首を振る。「いかんいかん」 羊の部屋をノックすると、羊はすぐに顔を出した。 昨日まで顔に痣一つなかったのに今日は朝から痣だらけの顔に氷嚢をあてている。 牛も驚いたが、羊も突然の牛の来訪に見当がつかず驚いているようだった。 羊・牛「(同時に)あの」 牛「……あ、どうぞ」 羊「あ、ああ、うん。つーか何の用?」 牛「中で話してもいいか」 羊「どうぞ」 羊はすんなりと牛を部屋に通すと、テーブルの上に広げていたトランプの クロンダイク(ソリティアの一種)を壊してカードを一息にたたんだ。出来がよくなかったらしい。 トランプと救急箱以外めぼしいものが何もないこざっぱりした部屋に牛は腰を下ろす。 牛「どうした。その傷は」 羊「ケンカ。賭けと喧嘩は男の華ってな。おー痛てて」 羊は喧嘩っ早いことで有名だった。ここ数年は流石に落ち着いてきたのか大分回数も減ったが、 元来気が短いらしく素面でもかっとなるとすぐに手が出る。 牛自身も酔っていたときに下らない理由で殴り合いになったことがある。僅差で負けた。 血の気の多い羊にとって勝負三昧で、且つ勝利のために冷静さを鍛えられるギャンブラーは まさに天職だったのだろう。 牛「もしかして、それもマフィアか何かとかか」 氷嚢をあてる羊の顔がぴたりと止まり、鋭い目が牛に据えられる。 羊「どういうことだ」 牛「うむ。決勝前だが相談してもいいか」 羊「中途半端に話を曇らせるな。ぱーっと全部言え」 牛「弟が船倉で麻薬を見つけた。マフィア絡みの可能性がある」 羊に迫られても要点をすぐ言えるように、部屋に来る前から言う台詞を決めていた。 ゆっくりとした穏やかな口調だが重い牛の言葉に、羊はしばらく黙る。 少しの間思考を重ねたかと思うと彼は軽快なフットワークで立ち上がる。 羊「魚って奴覚えてるか。プレイヤーの中にいた」 牛「(そういえばテレビに映ってたな)……一応顔だけは」 羊「そいつがマフィアを追ってる。呼んでくるから待ってろ」 自分の引きのよさに驚く牛を尻目に羊は部屋を出る。あくまで決勝戦に向け、氷嚢は顔にあてたままだ。 決勝戦を夜に控え、魚を含めた警察の面々は薬物取引の現場を押さえようと焦っていた。 魚自身も当然部屋にはいない。何かあったら無線を持ってる仲間を使って呼び出してほしいと 言い残し、魚は銃を携帯して朝早く部屋を出て行った。 羊が魚の仲間に声をかけ、魚に無線を入れてもらってほどなくすると魚は羊の部屋に現れた。 廊下で羊を待っていたかと思いきや、羊が現れるなり人気のないことをいいことに接吻する。 羊「……(赤くなった顔をそらしながら魚の顔を押しのける)……外でやんな」 魚「へへ。だって羊とは昨日一緒に寝なかったから」 羊「大事な勝負の前はやんねえの。やると体力も気合も落ちるだろ」 魚「俺まだ腰痛い」 羊「知るかっ!!」 魚「羊、顔すごい赤いよ。腫れまだ引かないのかなあ」 二人して部屋に入ると、牛にも「顔が赤いぞ」と指摘された。 牛に他意はなかったのだが茹でダコのように赤くなった羊の顔が元に戻るまでしばらくかかった。 -[[続き>カジロワ63_08]]

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