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[22-20] 水月2-3 ななし 2008/03/31(月)15:57 手繰り寄せてもまだ深い井戸。許されて闇に触れる快楽。 隠された本性ほど美しいものはない。どれだけ痛みを伴おうとも僕はそれを見たい。 だから僕はお前を見捨てられないでいる。 「やらせろよ」 口調と裏腹に、痛みを堪えるような双子を真っ直ぐに見る。 視線はかち合う瞬間逸らされた。睫毛が微かに震えている。 「後悔するよ」 そっと頬を撫でる。怖がることはないと伝えたかった。 僕は味方、いや、お前の虜なのだと。離れることはないのだと。 独りにはしない。だから気付け。お前が僕を欲しがるのは愛でも恋でもない。 「双子、僕はお前が好きだけどね」 「じゃあ」 「寝てしまったら、お前は僕を疑うだろ?」 顔をしかめた双子がそもそも誰も信じていないことは、この際触れずにいてやる。 僕と双子との間にあるのは、甘えと油断。勝手な思い込み。 温かいものはない。全て信じるに足りないが、他によすがを持てずにいる双子が悪い。 「ねぇ、獅子とはどうなったの?お前にいたくご執心だったけど」 踏み込んだ疑問をぶつけると、一切の表情が消えた。そろりと気配を探る。 固く冷たい吐息が切れ切れに頬に触れる。 「別に」 これで終いだと言外に滲ませてきた。その態度が核心に近いことを教える。 だがいつものように飲み込ませるつもりもなかった。もう少し。 もう少しだけ核心に迫らせろ。そのために誂えた夜だろう。 「何かあったの?」 沈黙と、ひりつく緊張。押さえられた肩がギリギリと軋む。 唇を薄く開き、言葉を発しようか迷っている双子を静かに待つ。 一分もなかったが、鉛を孕んだ時間の進みは遅かった。 「獅子じゃない、獅子は関係ない」 すっ、と目の光が消え、きっぱりと言い切る。 髪を掻き上げて微笑む闇が深くなり、 見詰めていると重油に犯されたように身動きが取れなくなった。 冷たい指に頬を撫でられ、悟る。 ――僕は失敗した。 「双子」 「お前には関係ない」 貝の口は固く閉じた。また踏み込めなかった。 やるせなさと敗北感で胸が千切れそうなまま、双子の冷たい口付けを受け入れる。 僕には夜を壊せなかった。 *** 「ねぇ、どっか旅行行こうか」 緊張が切れ、くたりと落ちて来る身体に提案する。 遠くへお前を連れて行きたい。あらゆる雑音からお前を守りたい。 お前の目を、耳を塞いで、お前を深い眠りに落としたい。 羊水に漂うようにだらしない安楽の中に溺れるお前が見たい。 「……面倒臭い」 髪を撫でても逃げない。されるがままの双子を横に寝かせる。 乱れた服を調えてやると、自分でやれると手を除けられる。 「行こうよ、二人で。海外が気楽でいいと思うけど」 のろのろとシャツのボタンを止める手を握る。気怠そうな吐息。 目は合わせなかった。 「……冬の日本海なら行っても良い」 「ああ、魚がおいしいもんね」 「お前が手配して」 「うん」 「朝ちゃんと迎えに来て」 「うん」 「おやつも買って」 「うん」 徐々に消えて行く声が震えていた。 「人目につかない静かなところに行きたいね」 「……」 「目を閉じるだけでも違うよ。お前は目が良過ぎる。なんでも観察するなよ」 「うっさい」 「双子。いつだってお前が僕を置いて行くんじゃないか」 「……ついてこないくせに」 「僕はちゃんとこの部屋で待ってるだろう。  ドアは開けて行くよ。見える位置に必ずいるから」 そこでようやく双子は諦めの溜め息を吐き、頭まで布団を被った。 手だけで僕に出て行けという。 広いベッドの隅で、双子の細い体が小さく丸まっている。 僕はドアを開けたまま書斎へ出て行った。 ――俺と一緒に死んでくれよ 冗談めかして漏らした願望。 僕が応えられないことを知っていて、お前は何度でも試す。 そして如才ない臆病な僕に、お前は小さく安堵し、同じだけ失望する。 バカだ。本当にバカだ。 明け渡せないお前も、受け止められない僕も。 *** 以上です 乙女はただ仕事にまじめなだけなのに、双子に嫌われて申し訳 蠍猟奇ネタが発端なのに蠍出て(ry
[22-20] 水月2-3 ななし 2008/03/31(月)15:57 手繰り寄せてもまだ深い井戸。許されて闇に触れる快楽。 隠された本性ほど美しいものはない。どれだけ痛みを伴おうとも僕はそれを見たい。 だから僕はお前を見捨てられないでいる。 「やらせろよ」 口調と裏腹に、痛みを堪えるような双子を真っ直ぐに見る。 視線はかち合う瞬間逸らされた。睫毛が微かに震えている。 「後悔するよ」 そっと頬を撫でる。怖がることはないと伝えたかった。 僕は味方、いや、お前の虜なのだと。離れることはないのだと。 独りにはしない。だから気付け。お前が僕を欲しがるのは愛でも恋でもない。 「双子、僕はお前が好きだけどね」 「じゃあ」 「寝てしまったら、お前は僕を疑うだろ?」 顔をしかめた双子がそもそも誰も信じていないことは、この際触れずにいてやる。 僕と双子との間にあるのは、甘えと油断。勝手な思い込み。 温かいものはない。全て信じるに足りないが、他によすがを持てずにいる双子が悪い。 「ねぇ、獅子とはどうなったの?お前にいたくご執心だったけど」 踏み込んだ疑問をぶつけると、一切の表情が消えた。そろりと気配を探る。 固く冷たい吐息が切れ切れに頬に触れる。 「別に」 これで終いだと言外に滲ませてきた。その態度が核心に近いことを教える。 だがいつものように飲み込ませるつもりもなかった。もう少し。 もう少しだけ核心に迫らせろ。そのために誂えた夜だろう。 「何かあったの?」 沈黙と、ひりつく緊張。押さえられた肩がギリギリと軋む。 唇を薄く開き、言葉を発しようか迷っている双子を静かに待つ。 一分もなかったが、鉛を孕んだ時間の進みは遅かった。 「獅子じゃない、獅子は関係ない」 すっ、と目の光が消え、きっぱりと言い切る。 髪を掻き上げて微笑む闇が深くなり、 見詰めていると重油に犯されたように身動きが取れなくなった。 冷たい指に頬を撫でられ、悟る。 ――僕は失敗した。 「双子」 「お前には関係ない」 貝の口は固く閉じた。また踏み込めなかった。 やるせなさと敗北感で胸が千切れそうなまま、双子の冷たい口付けを受け入れる。 僕には夜を壊せなかった。 *** 「ねぇ、どっか旅行行こうか」 緊張が切れ、くたりと落ちて来る身体に提案する。 遠くへお前を連れて行きたい。あらゆる雑音からお前を守りたい。 お前の目を、耳を塞いで、お前を深い眠りに落としたい。 羊水に漂うようにだらしない安楽の中に溺れるお前が見たい。 「……面倒臭い」 髪を撫でても逃げない。されるがままの双子を横に寝かせる。 乱れた服を調えてやると、自分でやれると手を除けられる。 「行こうよ、二人で。海外が気楽でいいと思うけど」 のろのろとシャツのボタンを止める手を握る。気怠そうな吐息。 目は合わせなかった。 「……冬の日本海なら行っても良い」 「ああ、魚がおいしいもんね」 「お前が手配して」 「うん」 「朝ちゃんと迎えに来て」 「うん」 「おやつも買って」 「うん」 徐々に消えて行く声が震えていた。 「人目につかない静かなところに行きたいね」 「……」 「目を閉じるだけでも違うよ。お前は目が良過ぎる。なんでも観察するなよ」 「うっさい」 「双子。いつだってお前が僕を置いて行くんじゃないか」 「……ついてこないくせに」 「僕はちゃんとこの部屋で待ってるだろう。  ドアは開けて行くよ。見える位置に必ずいるから」 そこでようやく双子は諦めの溜め息を吐き、頭まで布団を被った。 手だけで僕に出て行けという。 広いベッドの隅で、双子の細い体が小さく丸まっている。 僕はドアを開けたまま書斎へ出て行った。 ――俺と一緒に死んでくれよ 冗談めかして漏らした願望。 僕が応えられないことを知っていて、お前は何度でも試す。 そして如才ない臆病な僕に、お前は小さく安堵し、同じだけ失望する。 バカだ。本当にバカだ。 明け渡せないお前も、受け止められない僕も。 *** 以上です 乙女はただ仕事にまじめなだけなのに、双子に嫌われて申し訳 蠍猟奇ネタが発端なのに蠍出て(ry -[[小説メニューへ>小説]]

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