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「獅子は火を使ったあと、体にひどい痛みが発生するんだ。使った能力の量にもよる けど、きみをここに連れてきたあとも、部屋に閉じこもって暴れていたから、たぶん 相当な力を使ったんだろうねえ。  あと、射手にも会ったよね? 射手は空間を飛び越えて移動する能力を持っている んだけど、そのかわりに肉体の麻痺という制限を持ってる。能力の使い方によって、 麻痺の箇所や時間が変化するらしい。  こんなふうに僕らは制限を持ってるから、力におぼれたりせずに、ふつうの人間と して生活しなければならないんだ。これは大切なことだよ。だからきみも、能力を持 っているからといって、やたらと力を振り回してはいけないよ」  俺はなんとなく、ヒビが入ってると知らずに振った野球のバットが、まっぷたつに 折れたときのことを思い出していた。 「力を振り回す前に教えて欲しかったなあ、それ」 「そうだねえ。まあ、獅子に射手じゃあねえ……。説明なんてするはずがないか」 「しろよ! すげえ怖かったよ! 死ぬかと思ったよ!」 「気の毒に。ああ、あと、さっきの魚もそうなんだ。彼はヒーラーなんだけど、能力 を使ったあとは、持っている年齢を失ってしまう。ひどいときには赤ちゃんになっち ゃう。でも普段はふつうの大人の人なんだよ」  耳の中に声がよみがえる。大丈夫だからね。すぐに治してあげる……。  すごく落ち着いた、大人の男の声だったと思う。 「俺に力を使ったから、ガキになっちまったのか」 「うん。そしてきみの制限は『疲労』みたいだね」 「よくわかんね。で、あんたも能力者?」 「もちろん。だけど、やたらと使っちゃいけない力なんだ。いまきみに見せるわけに はいかない」 「なんで」 「信用を失うからさ。きみはこれから、僕の家族になるかもしれない人なわけだから。 嫌われたくないんだよ」  なんて言った? 聞きなれない単語を聞いたような。 -[[続き>水4]]
「獅子は火を使ったあと、体にひどい痛みが発生するんだ。使った能力の量にもよるけど、きみをここに連れてきたあとも、部屋に閉じこもって暴れていたから、たぶん相当な力を使ったんだろうねえ。  あと、射手にも会ったよね? 射手は空間を飛び越えて移動する能力を持っているんだけど、そのかわりに肉体の麻痺という制限を持ってる。能力の使い方によって、麻痺の箇所や時間が変化するらしい。  こんなふうに僕らは制限を持ってるから、力におぼれたりせずに、ふつうの人間として生活しなければならないんだ。これは大切なことだよ。だからきみも、能力を持っているからといって、やたらと力を振り回してはいけないよ」  俺はなんとなく、ヒビが入ってると知らずに振った野球のバットが、まっぷたつに折れたときのことを思い出していた。 「力を振り回す前に教えて欲しかったなあ、それ」 「そうだねえ。まあ、獅子に射手じゃあねえ……。説明なんてするはずがないか」 「しろよ! すげえ怖かったよ! 死ぬかと思ったよ!」 「気の毒に。ああ、あと、さっきの魚もそうなんだ。彼はヒーラーなんだけど、能力を使ったあとは、持っている年齢を失ってしまう。ひどいときには赤ちゃんになっちゃう。でも普段はふつうの大人の人なんだよ」  耳の中に声がよみがえる。大丈夫だからね。すぐに治してあげる……。  すごく落ち着いた、大人の男の声だったと思う。 「俺に力を使ったから、ガキになっちまったのか」 「うん。そしてきみの制限は『疲労』みたいだね」 「よくわかんね。で、あんたも能力者?」 「もちろん。だけど、やたらと使っちゃいけない力なんだ。いまきみに見せるわけにはいかない」 「なんで」 「信用を失うからさ。きみはこれから、僕の家族になるかもしれない人なわけだから。 嫌われたくないんだよ」  なんて言った? 聞きなれない単語を聞いたような。 -[[続き>水4]]

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