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 俺は黙った。そのあと、大声を出した。 「その手があったか!」 「弾丸のすべてを停止させて、正面から殴りに行ったそうだな」 「うん」 「馬鹿にも程がある」  返す言葉もねえ。  みんなの哀れみに満ちた視線の中で、ゆいいつ暖かかったのが射手の視線だった。  射手は言った。 「面白いなぁおまえ」  なにがだ。なにが。  射手は面白がる目をしたまま、ひょいっと顔を捕虜のほうに向けた。 「おまえを自由にしたら、乙女を殺すか?」  ぞっとするほどストレートな質問だ。  しかしそいつは黙るかわりに、初めて言葉を発した。 「あたりまえだろう」 「おまえ名前は」 「牡牛」 「俺ら、おまえをどうすればいいんだろ」 「殺せばいいんじゃないか?」  ぎょっとするほどストレートな答え。  牡牛は低い声で、淡々と言葉を続けた。 「乙女というやつを殺さなければ、俺の母親が死ぬ。俺を殺さなければ、乙女という やつが死ぬ。誰かが死ななきゃならん。俺はもう決めてある。あんたらはあんたらで 選べばいいだろう」  ごくごく単純な図を描いてみせやがった。単純で頑丈な図。壊すのが難しいほど、 しっかりと出来てる。  水瓶が唸った。 「歴史に干渉するのは主義に反するが、すべてをひっくり返すことは出来る」  そりゃそうだ。水瓶の力は最弱で最強だ。あらかじめ牡牛の親に警告しに行って、 歴史を変えちまえばいいんだ。  蠍が言った。 「乙女を守ることだけなら出来る。この牡牛に、乙女を忘れてもらえばいい」  ああ、催眠で、乙女に関する記憶を消しちまうのか。その手もあるか。 -[[続き>土10]]
 俺は黙った。そのあと、大声を出した。 「その手があったか!」 「弾丸のすべてを停止させて、正面から殴りに行ったそうだな」 「うん」 「馬鹿にも程がある」  返す言葉もねえ。  みんなの哀れみに満ちた視線の中で、ゆいいつ暖かかったのが射手の視線だった。  射手は言った。 「面白いなぁおまえ」  なにがだ。なにが。  射手は面白がる目をしたまま、ひょいっと顔を捕虜のほうに向けた。 「おまえを自由にしたら、乙女を殺すか?」  ぞっとするほどストレートな質問だ。  しかしそいつは黙るかわりに、初めて言葉を発した。 「あたりまえだろう」 「おまえ名前は」 「牡牛」 「俺ら、おまえをどうすればいいんだろ」 「殺せばいいんじゃないか?」  ぎょっとするほどストレートな答え。  牡牛は低い声で、淡々と言葉を続けた。 「乙女というやつを殺さなければ、俺の母親が死ぬ。俺を殺さなければ、乙女というやつが死ぬ。誰かが死ななきゃならん。俺はもう決めてある。あんたらはあんたらで選べばいいだろう」  ごくごく単純な図を描いてみせやがった。単純で頑丈な図。壊すのが難しいほど、しっかりと出来てる。  水瓶が唸った。 「歴史に干渉するのは主義に反するが、すべてをひっくり返すことは出来る」  そりゃそうだ。水瓶の力は最弱で最強だ。あらかじめ牡牛の親に警告しに行って、歴史を変えちまえばいいんだ。  蠍が言った。 「乙女を守ることだけなら出来る。この牡牛に、乙女を忘れてもらえばいい」  ああ、催眠で、乙女に関する記憶を消しちまうのか。その手もあるか。 -[[続き>土10]]

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