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 大正浪漫ネタ・蟹×蠍(襲い受けエロあり) 2006/05/07(日)19:52 
  
 本スレ354-356のネタで。
 蟹×蠍(襲い受け、エロあり)です。長いので3つに分けます。
 (※3つのスレを合わせて掲載しました/wiki編集人)
 
 ++++++++++++++
 
 『逃避行』
 風が強い夜だった。
 川沿いの土手の上、蟹は前後左右の気配に用心しながら歩いていた。他人に見咎められてはならないし、追っ手に見つかればもっと厄介だ。
 「若様…もうすぐです。もうすぐ着きますから」
 後ろを振り返り、低く抑えた声で蟹は呼びかけた。蠍は何も答えない。幼子のようにおとなしく、手を引かれるまま自分についてくる。
 襦袢がはだけた胸元や、裾から見える脛に、つい視線が向かってしまう。
 湯屋などで他人の体を見る機会は少なくない。なのに、同性でありながら、赤い長襦袢から覗く蠍の肌は、まったく別種の生き物のような艶めかしさで、目に迫ってくる。
 「くっ…」
 蟹は首の骨が音を立てそうな勢いで前を向き、湧き上がりかけた不埒な思いを、押しつぶした。そんなつもりで、蠍を侯爵家の屋敷から連れ出したのではない。
 蠍の存在を一度は抹消し、息子は死んだものと世間に広めておきながら、今になって、忌まわしい連続殺人の犯人に仕立て上げようとする、侯爵のやり方に我慢ができなくなったのだ。
 しばしば訪ねてくる川田という客と、侯爵の密談を漏れ聞いて知った。連続殺人の裏側には、大がかりな疑獄事件がからんでいるらしい。それを隠すため、蠍を身元の知れない男娼、性格異常の殺人鬼に仕立てて、世間の目をくらまそうとしている。
 (親子でありながら、なぜこのような…川田という男に、若様を与えたりして…)
 古参の使用人の間では、侯爵は死んだ先の奥方への憎悪を、そのまま息子へ向けているという噂だった。先の奥方と侯爵の間に何があったのかは、わからない。
 ずっと従ってきたが、これ以上は耐えきれない。
 蟹は決意を固め、蠍を連れて屋敷を脱走した。もっと目立たない衣服に着替えさせたかったが、蠍が激しく拒んだため、やむなく赤い襦袢のまま連れ出した。
 この襦袢は、侯爵が大変に機嫌がよかった日、蠍の衣服がみすぼらしくなってきたと自分が進言したところ、何でもよかろうという返事とともに、与えられたものだ。女物の襦袢をよこす底意地の悪さに蟹は憤怒を覚えたが、主人には逆らえなかった。
 川田の与える薬のせいか、その頃の蠍はすでに、言葉をほとんど発さず無表情になっていた。が、蟹が襦袢を「父上様からです」と渡すと、近年見たこともなかったほど晴れやかな顔で、微笑んだ。自分を憎む父親を慕い、その手からもらった襦袢に執着する蠍の心中を思うと、哀れでならなかった。
 「もうすぐです、若様。友人は口の堅い男ですから、何も心配はありません」
 蟹が目指しているのは、旧知の山羊の家だった。あの男はきっと自分達を匿ってくれる。いつまでもというわけにはいかないだろうが、数日間なら…。
 そこまで考えた時、道の前方から人声が聞こえてきた。
 「若様、こちらへ…!」
 急いで蠍の手を引き、道を外れて土手の草むらへもぐり、身を伏せた。丈高く伸びた夏草が、二人の姿を隠してくれるはずだ。
 「若様、じっとして。動いたり声を出したりなさらぬように」
 雛を翼の下に入れてかばう親鳥のように、蟹は蠍の体をしっかりと抱えた。蠍は夢の中にいる者のように、ぼんやりとしたうつろな瞳のままだ。
 「…ってのが、嬶ァの言い分よ。ふざけンねいって言ってやったんだ、俺ぁよ」
 「おお、言ってやれ。女ってのは、昔のことをいつまでも…」
 酔った職人の二人連れらしかった。大声でわめき散らしながら、土手の上の道をふらふらと歩いていく。蟹は息を詰めて、草の間からその姿を見守った。
 二人は土手の斜面へ目を向けることさえなく、歩き去っていった。
 気をゆるめた蟹の口から、大きな息が漏れた。
 その時だった。しなやかな細い指が、蟹の襟元からすべり込み、胸肌をまさぐった。
 「わ、若…!?」
 最後まで名を呼ぶことはできなかった。片腕を自分の首に巻き付けて、蠍が顔を重ねてくる。唇が触れ合った。舌先で歯を舐められた瞬間、甘いしびれが体を走り抜けた。 
 
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