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大正ネタ、警官乙女と探偵射手 名無し三十郎 2006/05/10(水)17:13 衝動的に書いてしまいました。大正ネタ、警官乙女と探偵射手 ※※※※※※※※※※※※※※※  犯人を追い詰めた。住宅街の奥、見知った一本道に、敵を追い込んだのだ。  乙女は警戒しつつ歩を進めた。  大正の吸血鬼、稀代の連続殺人鬼と、エログロ雑誌の表紙を賑わせた、緋襦袢の男を逮捕する。そのことへの緊張と興奮が、ふだん鋭敏な乙女の勘を狂わせていた。  背後から蛇のように延びてきた二本の腕に、乙女は気づかなかった。腕は乙女の首にからみ、その細さには吊り合わぬほどの強さで、乙女の喉を締め上げてきたのだ。  完全に背中を取られてしまった。抵抗が殺される。鼻先に甘ったるい香のにおいがする。目に霞がかかる。乙女は焦った。焦りながら呆れた。死とはこんなにもあっけなく訪れるものかとさえ考えた。  そのとき、聞きなれた大声が、乙女の鼓膜をゆらした。 「乙女さんを放せー!」  ふいに首のいましめが緩む。  乙女は咳き込みながら、ぶれていた目の焦点をあわせ、上方を見た。  射手はあざやかな満月を背負い、煙突の上に立っていた。  全裸で。 「乙女さん、もう大丈夫だ! とおっ!」  射手は飛び上がり、空中で華麗に身をひねった。彼の鍛えられた僧坊筋、しなやかな後背筋、引き締まった尻、その下の見事なものまで、あますところなく乙女は見てしまった。  地に降り立つ射手に、乙女は恐慌を起こしつつ言った。 「な、な、な、なん、なん、なんでっ」 「家の風呂が壊れたので、そこの銭湯に来ていたのです。すると湯殿の窓から乙女さんの姿が見えたので、慌てて出てきました。いやあ、危ないところだった」  腰に両手を当てて堂々と語る射手に、乙女はわめいた。 「ええい何か着ろこの変態め! あいつは、あいつはどこだ」 「大丈夫です。悪者は退散しましたよ」  背後を振り返っても、どこを見てみても、あの殺人鬼のすがたは影も形もなかった。  取り逃がしたのだ。  がっくりと膝をつく乙女にむかって、射手は手を差しのべた。 「お助けできて良かったです乙女さん。なあにお礼などいりません。キッスのひとつでもくだされば」  乙女は気持ち悪さに鳥肌を立てた。だが、自分は非常に危ないところだったのだということもわかっていた。  もしも射手があらわれなければ、自分はくびり殺されていただろう。あの白い二本の腕に。  乙女の背中を冷たい汗がつたい降りる。目の前の手を払いのけて立ち上がり、ふと思いついて尋ねた。 「犯人の姿を見ただろう」 「はいもちろん」 「あれの姿を見た男はみな狂うのだそうだ。射手は平気なのか」 「うーん、乙女さんに背中からくっついてハアハアするなんて、なんてうらやましいやつだとは思ったけど」 「……もういい。聞いた僕が馬鹿だった」 「ありゃ山の手の華族の人じゃないかな。歩き方が上品だった」  襦袢ひとつで町をうろつく華族。男の身で男を誘う華族。女郎蜘蛛のように、情をかわした相手を殺す華族。  有り得ないと思い、乙女は首を横に振った。

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