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 だから、射手を怒鳴りつけて部屋に駆け戻った俺は、たぶん最悪に失礼なやつだ。 最低だ。  だけど俺の中で、悲しいのとか悔しいのとか、いろんな感情がごたまぜになってて、 どうしようもなかった。  ずっと布団にもぐってた。ドアには鍵をかけてた。途中で蟹とか魚とかが、部屋の ドアをノックしてきたけど、無視した。  それで、夜中になって、さすがに腹が減って、そろそろ下に降りようかなあと思い だしたところで、気配がわいた。  射手が部屋の真ん中に立ってた。  俺を見ると、ぱっと笑顔を作って、手を差し出してきた。 「遊びに行こう」  ハイとかイイエとか、そんな言葉を思いつく暇もなかった。  射手の手が俺の腕に触れ、それと同時に俺は、知らない場所に居た。  視界いっぱいに広がる海と、ものすごい星空。耳には波音。鼻には潮の香り。  誰も居ない海辺は、ただそこに在った。砂浜に俺と射手というアクセントをつけて。  射手を見ると、両手をあげて伸びをしていた。それから自慢げにこう言った。 「すごいだろ。誰も居ない」  驚きの感覚が過ぎると、バツの悪さが戻ってきた。  射手になんて言ったら良いのかわからなくて、どうでも良いことを言った。 「靴、はいてねー」 「取ってくる。ついでに何か持って来るわ。五分待っててくれ」  また、おうとも何とも言う前に、射手は消えちまった。  忙しい男だなあ。  しばらく、海を眺めた。広くて遠い、なにも無い世界に居ると、俺の気持ちも解放 されてきた。  俺がなにを悩んだとことで、世界は広いんだよな。  射手が帰ってきた。いっぱい荷物を持ってた。片手には袋入りの飲み物。片手には 獅子をつれている。  それはいいんだが、獅子は全裸だった。髪も体も濡れていて石鹸の泡まみれだった。  獅子のポーズは、少し屈みこんで、差し上げた手でシャワーを掴んで、頭を流そう としつつ、背後の射手を振り返った、みたいな感じだった。どうやら風呂に入ってた ところを拉致られたらしい。 -[[続き>火2_03]]

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