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 矛盾していると思う。  だから俺は、思ったままのことを言った。 「嫌なことを、無理にやるこたねーだろ」 「……」 「嫌だったから川田ん所を抜けてきたんだろ。嫌ならもうやるなよ。あんた本当は優 しいんだから、向いてないことするなよ」  天秤は服を着おえて、しばらく黙っていた。  それから、ふいに俺を抱きしめてきた。  天秤の動きはそつがなく、手の動きは優しかった。続いて聞こえてきた声も、本当 に優しかった。 「優しいのはきみだ。きみが家族になってくれてよかった。本当に」  天秤の声は震えている。その震えを隠すために、天秤は俺を抱き続けた。  俺は天秤を抱き返した。天秤とはぜんぜん違う、強い力で。  ※※※  家に帰りついたとき、双子は驚いていた。天秤を見てこう言った。 「おまえ、どういう心境の変化だよ」  俺のために買われた、動きやすくて、シンプルで、気軽なかんじの服を、天秤が着 ていたからだ。  天秤は、いかにも楽しげな様子を、完ぺきにこしらえていた。 「牡羊が選んでくれた服だよ。似合うかな」 「そうだな。俺、まえのイメージの方が好きかな」  似合わねぇ、と、素直に言わないのが双子らしい。  天秤は今度は、がっかりした様子を、完ぺきにこしらえていた。 「ちょっと冒険しすぎたかもしれないなあ。着替えてくるよ」 「似合わないことはないんだぜ? けどイメージがさ」 「うん。これは牡羊にあげることにする。またあとで」  完ぺきな嘘をこしらえあげて、天秤は部屋に戻って行った。  俺も眠かったので、さっさと部屋に戻ろうとした。  そのとき、二階から水瓶が降りてきたのだ。 -[[続き>風2_08]]

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