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 牡牛は俺らを別の場所に案内した。  そこは、蔵だった。中はほぼ空っぽで、あらかたの荷物は売られちまっていたが、 ただ一個、へんなものがあった。  屏風だ。天女の絵が描いてあった。  牡牛は説明する。 「幽霊だ。これを夜中に見に来ると、天女が絵から抜け出て動き出すらしい。そうい うものなので、売れなかった」  俺は、ビビってる俺を隠そうと必死だった。 「この女の人が踊ってくれるのか? だったら面白れえじゃん」 「踊ってくれるついでに、とり殺してもくれるから、夜中に見てはいけないと言われ た」  山羊は、首を横に振った。 「そんな理由で売られないなんて、そんな馬鹿な話があるものか」 「鑑定にも出してない。ていうか、鑑定の人もチラ見しただけで通り過ぎてた」 「鑑定か」  そこで山羊は、手袋を脱いだ。 「俺が鑑定する」  くそ真面目な男だなあと、俺は思っていた。ヤバいものが見えたらどうするんだよ。  牡牛のほうは、ちょっと興味を持っているっぽかった。度胸のあるやつだ。  山羊は屏風に触れて、目を彼方に向けた。  しばらく黙り、やがて言った。 「屏風の記憶は、くらい。なにも見えない」 「それは暗いだろう。蔵だから」 「いや……、明かりが見えた。ロウソクの明かりだ。ロウソクの明かりの中に、軍服 を着た男が座っている。男の顔は牡牛に似ているが、丸眼鏡をかけている」 「ああ」と牡牛が言った。「じいさんだ」  山羊はしばらく目を細めて、俺には見えない、暗がりに灯るロウソクの明かりの中 を、じっと見つめているようだった。 「ご祖父は背筋を伸ばして正座している。その前にすずりと和紙。和紙には天女の絵。 どうやらこの絵は、牡牛のご祖父が書いたようだ」 -[[続き>土2_04]]

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