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土2_04」(2008/08/23 (土) 19:59:28) の最新版変更点

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 牡牛は、嬉しそうだった。 「じいさんは絵が上手かったらしい」 「なるほど。ご祖父も出来に納得したような表情をしている。それからご祖父は、脇 から箱を取り出した。漆塗りの綺麗な箱だ。両手で捧げ持ち、ふたを開いた。箱の中 身は、……あ」  あ?  山羊は急に屏風から手を離して、虚脱した。  牡牛が動揺している。 「なんだ。なにがあった。何事だ」  牡牛は山羊をがくがくと揺すぶるが、山羊はボーっとしちまって答えない。  俺たちは待った。山羊が読み取りに使った5分ほどの時間が、山羊の腑抜け時間に なるはずだ。  そして5分後、山羊は腑抜けモードから回復し、大きく息を吐いた。 「ああ、驚いた。あれはいったい何だったんだろう」  牡牛が当然のことを尋ねる。 「何を見たんだ、山羊」 「いや、暗すぎてよく見えなかった。たぶん俺の勘違いだと思う」  なんだそりゃ。  牡牛はものすごい目で山羊を睨みつけていた。 「見てくれ。もういちど見ろ。なにがあったか確認しろ」 「なぜか気が乗らないんだ。不思議だ」 「山羊!」 「わかっている。いちど引き受けた仕事は、最後までやり遂げる。……少し待て」  山羊は眉間を揉んだあと、片手をあげて、ぴたりと屏風に触った。  今度はすぐに見えたようだった。 「箱の中身は、大量の人物画だ。浮世絵だな。春画……、ちょっと未成年には説明し にくい内容の絵だ。ご祖父はその一枚一枚を取り出して、明かりに差し出しては丹念 に眺めている。いちいち納得してはうなずく。そしてこの屏風に貼り付けていく。… …今、すべてを貼り付け終えた。ご祖父は屏風を眺めながら、決意した目をした。足 をくずし、手を……。その、こ、これは。男として当然の行為を」  山羊は慌てたように屏風から手を離し、そのまま文字通り、魂をどこかに飛ばして いた。 -[[続き>土2_05]]

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