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 乙女おじさんはそんな山羊の姿を悲しそうな顔で見つめていた。 「何でそんなに自分をいじめるような決め付け方をするんだ?」  それが第一声だった。乙女はうつむく山羊の前にしゃがみこみ、少しでも山羊に自分の声を 届かせようと下から山羊の顔を覗き込んだ。 「おとうさんは心配してたよ。お前のかたくなさを。話をしたいけどできないって悩んでた」  山羊は眉間に眉を寄せたまま黙っていた。双子は自分の兄に嘘をついた。本当の双子は話を したいといいながらいつもご機嫌とりばっかりで、本当に大事なことは一度も話そうとして くれなかった。 「本当の親子だから、いろいろ上手くいかないこともあるんだろうとおじさんは思う。おじ さんは山羊のお父さんがまだ話してないことがあると思ってるけど、聞き出すには時間が なかったからとりあえず山羊をうちで預かることにした。  山羊が、本当に困ったときいつでも逃げてこれるもう一個の家に、ここがなればいいなと 思ってる」  骨ばった手がそっと山羊の肩に乗せられる。ひかえめな温かさと重さが山羊の身をほぐした。 山羊はわずかに顔を上げながら、黒目がちな澄んだ目で乙女の顔を見返す。乙女は双子ほど 器用ではなかった。笑顔を作るかわりに素っ気無い真顔で山羊の頭をまた撫でた。 「お父さんは捨てるために山羊をうちに預けたんじゃない。それはおじさんが保証する」  山羊はあんまり頭を撫でてもらったことがないので、こんなとき「ありがとう」と言って いいのかどうかもわからなくて、やっぱり黙っていた。  声も出さずにこくこくうなずくと乙女おじさんはうなずきを返して立ち上がり、夕飯を 作りに廊下を別室へと歩いていった。 -[[続き>晩ごはん03]]

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