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「ぼくはいま、川田のグループに所属している。今日は指令を受けてきた。蠍を引き 抜けと」  つまり、こいつも能力者なのか。  蠍を見ると、やっぱり、作ったみたいな無表情だった。 「俺は行かない」 「ああ。しかし知っての通り、蠍を連れて行くのは簡単だ。ぼくが、ぼくの能力を使 えば」 「俺は行かない。行けるわけが無い」 「ぼくも蠍の意思を無視するのはいやだ。しかし川田には逆らえない。困ったよ実際 」  なにを言ってやがるんだこいつは。  俺のメンチを受けて、カラスは首をかしげていた。 「ぼくは所属のことを話しているだけで、蠍はこれからも、変わらずきみのものだ。 それでも不満なの?」  俺は、きっぱりと言った。 「蠍は行かねえ。あんたは手ぶらで帰る。そんだけだろ」 「いや、きみを連れて帰るという手もあるんだ。そうすれば蠍は、自分の意思でつい て来てくれるかもしれない」  はじめて蠍が動揺していた。  続いて出した声も、震えていた。 「やめてくれ」 「何度も言っている通り、きみらの関係は邪魔しない。ただ、ぼくは知っている。人 の心はとてももろい」 「やめろ。カラス、よせ」 「もろくて、もろくて、少しつついただけで壊れる。牡羊、きみはきみの意志で蠍を 裏切る。なぜならぼくはきみを、愛しているから」  俺の心臓が一回、跳ねた。  俺はうろたえた。なぜなら俺は、嬉しかったからだ。カラスに惚れられてると知っ て。  しかし、なんでだ。初対面なのに。 -[[続き>水3_05]]
「ぼくはいま、川田のグループに所属している。今日は指令を受けてきた。蠍を引き 抜けと」  つまり、こいつも能力者なのか。  蠍を見ると、やっぱり、作ったみたいな無表情だった。 「俺は行かない」 「ああ。しかし知っての通り、蠍を連れて行くのは簡単だ。ぼくが、ぼくの能力を使 えば」 「俺は行かない。行けるわけが無い」 「ぼくも蠍の意思を無視するのはいやだ。しかし川田には逆らえない。困ったよ実際」  なにを言ってやがるんだこいつは。  俺のメンチを受けて、カラスは首をかしげていた。 「ぼくは所属のことを話しているだけで、蠍はこれからも、変わらずきみのものだ。 それでも不満なの?」  俺は、きっぱりと言った。 「蠍は行かねえ。あんたは手ぶらで帰る。そんだけだろ」 「いや、きみを連れて帰るという手もあるんだ。そうすれば蠍は、自分の意思でつい て来てくれるかもしれない」  はじめて蠍が動揺していた。  続いて出した声も、震えていた。 「やめてくれ」 「何度も言っている通り、きみらの関係は邪魔しない。ただ、ぼくは知っている。人 の心はとてももろい」 「やめろ。カラス、よせ」 「もろくて、もろくて、少しつついただけで壊れる。牡羊、きみはきみの意志で蠍を 裏切る。なぜならぼくはきみを、愛しているから」  俺の心臓が一回、跳ねた。  俺はうろたえた。なぜなら俺は、嬉しかったからだ。カラスに惚れられてると知っ て。  しかし、なんでだ。初対面なのに。 -[[続き>水3_05]]

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