「水3_06」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

水3_06」(2008/09/15 (月) 17:17:17) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

 やがて俺の様子を見つつ、カラスが言った。 「限界だね、彼」  蠍がカラスに、厳しい目を向けた。 「無駄だ、カラス。俺は牡羊を守る。なんど魔法をかけても打ち消す」 「そうだね。このままじゃ、きりがない。……仕方が無い」  二人はにらみ合った。  俺には長い沈黙に思えた。しかし実際には、ほんの数秒だろう。  二人は同時に言った。 「ぼくは蠍を愛してる」 「カラスは牡羊を愛してる」  たった一文に込められた二人の作戦を、俺は疲労した頭で考えた。  カラスのみりょーで、いま、蠍はカラスに惚れた。  蠍の催眠で、いま、カラスは俺に……ええっ!?  カラスがサングラスを外した。熱っぽい目で俺を見ている。  そしてそんなカラスを蠍が、湿度の高い目で見つめている。  なんなんだこりゃ。誰かカエルで蛇でナメクジなんだ。  俺は言った。 「みんな嘘だって! なんだよこりゃ、やめろよ気持ちの悪い」  カラスはまあ、そこは認めてもいいだろってかんじの、格好よい笑顔を見せた。 「参ったな、こう来るとは思わなかった」  俺は必死で訴えた。 「嘘だからな、それ、嘘だから。今あんたが、俺になにか感じてても」 「ぼくにはそもそも、嘘の心と、本当の心の区別がつかない。だから、そこに境界は 無いんじゃないかと思ってる。今だってそうだ。蠍の催眠のせいだとはわかっている けど、それでもぼくは牡羊を」  蠍が手を伸ばして、カラスの口をふさいだ。  おかげで能力の発動条件らしい「愛してる」の言葉は消され、俺は助かったんだが。  蠍の苦しそうな顔が、俺を弱らせた。  蠍、と声をかけると、蠍は黙って首を横に振った。 「魅了じゃない。魅了は関係ない。俺はカラスを忘れたことなんて無かった」  カラスは黙って蠍の手を取りはずし、同じように首を横に振った。 -[[続き>水3_07]]

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: