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201 :やぎの夏休み(地図をつくる):2008/09/25(木) 21:15:06 ID:???0
超能力SS姐さん乙です!連投みたいな形になってすみません。失礼します。
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神社の中、近所のそば屋、お土産屋、移動青果店。
少ない道路沿いにひとりで歩ける領域を広げていきながら、山羊はまだ森の中を歩いた
ことがなかった。土地勘がない上に森歩きというものがどういうものかよくわかっていな
かったのだ。チラシの裏に今まで歩いたところの地図を描いてみると、広範に広がっている
未開の領域をただ「森」という一文字で済ませるしかない。山羊はテーブルにもたれながら
森を示す斜線部分に思いを広げるのだった。
「おじさん。森って入っちゃだめ?」
仕事を終えて居間で座椅子に座っていた乙女にたずねると、乙女は首を横に振った。
「だめ」
「どうして?」
「迷ったらどうするんだ。お前は都会っ子でその辺の勘がないだろう。そういうのはな、
森を歩いたことがある大人とか、年上の子と一緒に歩いてなじんでいくのがいいんだ」
「じゃあおじさん一緒に歩こう……」
「ん……。おじさんは日が昇ってる間はお仕事がある」
「夜でもいいよ」
「夜歩く森と昼歩く森も別物だよ。すまんな」
山羊は、サインペンを持ちながら悲しそうな顔になって黙り込んでしまった。
へそを曲げてしまったかなと乙女は思ったが放っておいた。山羊にはこの夏で多くのこと
を学んで欲しいと思っていたが、それも自分の目の届く範囲で育てたいと思うのが伯父心だ。
なにせこの少年は大事な弟の一人息子なのだから。
「……今度、また休みがとれたらどこか一緒に行こうか。山羊?」
「それっていつ」
「一週間ぐらいかかるかな」
「わかった。どこかつれてって。でも、僕はおじさんが休みになる前に自分でもどこか行か
なくちゃいけないんだ」
──おとなを待って一人で座ってるのは、もうしないって決めたんだ。
黙っている山羊の中で何かが彼をせきたてた。待っていれば一週間がまるまる不毛に終わる。
だってだれも来ないから。そんな期待をするのはもうやめたのだった。
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