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 俺は力を解除したあと、こう条件をつけた。 「下に降りるだけ。作るのは俺がやる」 「牡羊が?」 「できるよ。まえの家では、おばちゃんの手伝いでよくやってたんだ」 「……」 「あんたは見てるだけだ。嫌だっつーんならもう、俺が疲労でぶっ倒れるまで、あん たをベッドにくっつけといてやる」  乙女は考えていたが、やがて溜息をついた。 「どうせ眼鏡が無いと、うまく動けないから……、牡羊にまかせる」  俺は乙女と連れ立って移動した。乙女は眼鏡が無いせいで、階段も怖そうだったが、 俺に手を貸されることは嫌がった。  すげえ意地っ張りだ。俺もそういうとこあるけど、ここまで酷くない。  で、台所に行くと、牡牛が居た。エプロンしめて、冷蔵庫から材料を取り出して、 作業台に並べていた。  俺たちに気づくと、こう言った。 「乙女がやるって聞いたから、かわりにやってやろうと思って」 「俺も手伝う。乙女は見てるだけだから」  乙女は壁にもたれて、不満いっぱいの目でこちらを睨んでいた。  俺は気づかないフリをしつつ、牡牛を見上げた。 「なに作るんだ?」 「蟹がメモを置いてあって、煮物って書いてあるんだけど。今から煮物なんか作って 間に合うのかな」  牡牛は首をひねりつつ、包丁を手にとって、芋を剥き始めた。  俺は大鍋を取り出して、コンロに置いた。  牡牛が剥いた芋を刻んではボウルに入れる。やがてボウルの中身が山盛りになった ので、鍋の中にあけた。  すかさず乙女の声が飛んできた。 「面取り」 「ん?」 「角を取るんだ。芋の角を丸くしないと、煮たときに崩れるんだ」 -[[続き>土3_06]]

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