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土3_08」(2008/10/02 (木) 22:54:30) の最新版変更点

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 乙女と呼びかける俺の声を、乙女は無視した。 「これは能力なのだと聞いて安堵した。俺は頭がおかしいわけじゃなかったんだ」 「ええと、よくわからねえが、だから納得したって話なのか?」 「納得は……、実は今でもできない。はっきりと思い出せるからだ。あのとき幻覚だ と思っていたものを」 「……乙女?」 「トラックが横転する。その横腹に突っ込んでいく乗用車。ぶつかって潰れてゆく車。 ガラスが割れる。座席にある二つの体が、揺れる。ぶつかる。不自然に首が折れる。 侵入してくるトラックの荷物。鉄骨だ。それがあっという間に、からだを貫いて……」  俺は乙女の肩を掴んで揺さぶっていた。  乙女はいま、能力を使っているわけじゃない。しかし、なにかの映像に捕らわれて いる。  山羊の言っていた通りだった。乙女は、自分で自分を傷つけ始めている。体をとい う意味でではなく。  どうしよう、どうすればいい何をすれば。俺には蠍や蟹の力は無い。どうやって乙 女を戻せばいいんだ!?  やがて乙女の瞳は、現実への焦点を結んだ。  目の前の俺の顔を眺めている。ぼんやりと。やがて瞳の色ががく然としたものに変 わる。  俺も焦りつつ、目で笑ってやる。……どうやら、悪戯が成功したみたいだ。  乙女ってたぶん、頭と体があべこべなんだ。俺みたいに脳みそ筋肉って意味じゃな くて、脳がからだ全体に詰まってる感じ。  なにかを感じてなきゃおかしくなるんなら、おそらく、怒ってるときの乙女が、い ちばんまともだ。  で、ちゅーされた唇をぬぐうこともせずに固まってる乙女に、俺は言った。 「い、いたずらだからな。いたずらだぞ!」 「……お、羊。おまえ」 「まだ変なもん見えるか? ああ?」 「今、今これ以上は無いというくらい変なものを見せておいて、なにを言ってるんだ!」 「よーし。あんたはこれから部屋に戻って寝るんだよ。移動だ移動」 -[[続き>土3_09]]

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