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 腕を掴もうとすると、乙女は顔を真っ赤にして、身をひいてよけた。  俺のほうも、照れも手伝って、大声で怒鳴りつけてしまった。 「そこで意識すんなよっ!」 「……俺はただ、これは性格だから、気にするなと言いたかっただけなんだ」  妙に弱弱しい声だった。俺は戸惑った。  乙女はそっぽを向いたまま、小声で、早口で語る。 「べつに牡羊が嫌いなわけでも、怒っているわけでもないから、気にするな、と」 「う、うん。わかってる」 「……」 「……なんも気にしてねえよ、俺」 「部屋に戻る。一人で大丈夫だ」  言いながら乙女はふらっと立った。危なっかしい足取りで歩いて、階段を上がって いった。  俺は後を追えない雰囲気になっちまって、その背中を見送った。  それから視線を上にあげて、二階の手すりから身を乗り出してこちらを覗きこんで いる山羊の姿に気づいた。  山羊は乙女が自室に入るのを見届けてから、階段を降りてきて、俺の目の前に立っ た。  そして、言った。 「乙女にあれはシャレにならないぞ」  見てたのか。  顔に血が上った。たぶん、さっきの乙女みたいな顔になってたと思う。 「あれはただ、びっくりさせてやろうと思って」 「それはいいんだ。そのあとだ。意識するなというのは酷い」  えーと。  ちょっと意味がわからねえんだが。 「俺、謝ったほうがいいのか?」  山羊は渋いものでも食べたみたいな顔をした。 「これ以上、残酷なことをするな」 「な、なにが。わかんねーよ。教えてくれ」 「乙女には俺がついてる。牡羊は牡牛でも手伝ってろ」  なんで山羊は怒ってるんだ。 -[[続き>土3_10]]

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