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カジノ・ロワイヤル 乙女と射手(+牛) 774チップ 2007/09/27(木)19:14 80の続きです。 --------------------------------------------------------------- それぞれがそれぞれの行動をとる中、 射手は油性マジックを片手に片耳でラジオを聞いていた。乙女の部屋だ。 目の前には眠っている牡牛がいる。危機を察知したのかうなされているようだ。 ぐずぐずしてはいられない。勝負は一瞬で決する。 一番大事なのは額に「肉」と書くべきか「オー○ービーフ」と書くべきかそこのところだ。 乙「おい」 後ろから乙女のツっこむ声がしてひゃっと身体が跳ねた。 乙「お前何か書こうとしてたろ」 射「ち、チガウヨー。ほら、手にオッズ書こうとシテタンダヨー」 乙「そんなあからさまなポジションに座って言い訳がきくかっ! お前本当に目が離せん奴だな!」 射「ダッテ、ダッテヒマナンダヨー(涙)」 乙「そのカタコト言葉やめいっ!」 乙女と牡牛と天秤と。そんな暗くなりがちな組み合わせのところに 戦線脱落した射手が暇つぶしにしけこんできたのだった。 まな板ショーのショックが抜け切れていない乙女たちのために、賭博場の様子はラジオで 状況を聞いた射手が教えてくれる。同じ経験者でも立ち直りの早さが違うようだ。 射「魚って人が負けたって。倒したのはサソリン」 乙「……そうか」 射「うん。あとさ、これ新情報なんだけど」 乙「うん?」 射「この戦い、プレイヤーが四人にまで減ったら一旦締めるって。卓をポーカー一台に絞って   四人で決勝戦て形にするらしい。それで競馬みたいに誰が勝つか、オッズ形式で   観客がプレイヤーに賭けられるようにするんだとさ」 乙「主催者側の資金回収の手段としてはありがちだな」 射「プロレスみたいに入場アナウンスつくのかな♪」 乙「俺はそういう演出は嫌いだ。競馬のファンファーレ程度なら許せるが」 射手が来てくれたお陰で乙女と天秤は息抜きをすることができている。 感謝していた。天秤は帽子や眼鏡程度の簡単な変装をして自室に荷物をとりに行っている。 射「なぁ、誰が勝つと思う? 俺はフタが堅いと思うけど。対抗馬はガメで」 乙「蠍や羊は入れてやらんのか」 射「ヒツはいま獅子って人と戦ってるみたいだから、それの結果見てからかな。   サソリンはね~……なんちゅうか、一回破産してるせいか必死に飛ばしすぎてると思う。   息切れしそう。何日も集中力がもつかどうか、そこがカギだな」 乙「今トップなのは?」 射「ああ、それはね、ヤギさん。俺が牛相手に取ったチップまで全部流れちゃったからね」 あの男が、自分の味わった苦痛を味あわずに勝ち抜けるということがあるのだろうか。 乙女はぼんやりと考える。今は想像できない。あの影と一体化したような存在感が、 他の誰かに負けるということが。 だがもし仮にどこかで負けるとして──あの男が自分と同じ目に遭ったとき……。 射「オト?」 乙「(はっとする)……ああ、何でもない。オッズか。そうだな、じゃあ俺はお前のから外して   羊と蠍にしておこうか」 あの時から、片時もあの男の存在を忘れたことはない。 洋上という逃げ場のない環境を乙女はひどくうらめしく思った。 -[[続き>カジロワ38_82]]

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