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続きです。絵板[115]姐さん、ありがとうございます。がんがります。



医務室に担ぎ込まれて数時間後、双子は医務室のベッドで目を覚ます。
局所麻酔がかかっているのか下半身が膨れた水袋のように重かった。
横で、天秤がスツールに座ってこちらを見ていた。

双「……」
天「大丈夫ですか?」
双「……ああ、大丈夫だ少年。今何時だ?」
天「夜の11時です。すみません。僕のせいで(涙ぐむ)」
双「……本当に手のかかるガキだよ。いいよ、もう。それより医者を呼んできてくれ。
  俺の体はどうなってる」
牛「内臓は奇跡的に傷ついてなかったそうだ。血管と肉を縫合しただけだから動かないほうがいい」

双子が声のほうを見ると、牛がパーティションの脇からこちらへ入ってきた。医者の姿はない。

牛「弟を庇ってくれたこと、礼を言う」
双「(自嘲して)高くついた。これ本当に明日までに歩けるようになるんだろうな?」
天「双子さん! 無理ですよ」
双「アーきこえなーいきこえなーい。それより医者の口が心配なんだ。とっ捕まえて黙らせてくれよ」
牛「金は握らせた。少なくとも決勝が終わるまでは黙ってるはずだ」
双「素晴らしい……! さすが金持ちは金の使いどころをわかってらっしゃる」

双子は精一杯毒舌をつくとまたベッドの上に伸びかえる。
どうしようもない疲労が襲ってきて、兄弟から顔をそむけた。

双「帰ってくれ」
天「双子さん」
双「帰れ。……俺に喚かせたいか」
牛「……。天、帰るぞ」
天「兄さん」
牛「邪魔をした。後でまた来る」

天秤は牛に連れられてそっと医務室を出る。牛は離れてやるのが情けだと思ったようだ。
しかし天秤はそう思わなかったようで、兄の服を掴んで歩きながら何度も後ろを振り返っている。
しばらく歩いてから牛は歩みを止める。天秤が、兄の顔色をうかがうように顔をあげる。

天秤が医務室まで戻ってそっと中の様子を窺う。パーティションで双子の様子が見えない。
音を立てないようにほんの少し医務室のドアを開けると、闇にまぎれて双子のすすり泣く声が聞こえた。
独り身の不安と悔し泣きの入り混じる声だと、天秤にもわかった。
慰めたくて中に入る許可を牛に請うたが、牛は首を横に振るばかり。天秤はやむなく、
胸の潰れそうな気持ちを抱えてまた音のしないようにドアを閉じた。

牛は、天秤を連れて医務室から遠ざかるまで無言だった。かなり遠ざかってやっと弟に声をかけた。

牛「天。あれは、きっとお前だけには聞かれたくない声だったはずだ。
  明日また様子を見に行こう。でもさっきの声は……わかるな?」
天「……(うなずいて)わかった。言わないよ。忘れなくちゃいけないんだね」
牛「そうだ」

悪魔でも泣くことがあるのかと、天秤は思う。第一印象がよほど強かったのか
天秤のイメージの双子はいつも理知的でシニカルで、強いままだ。
テレビの予想番組に映る彼は他の誰よりも華やかな笑顔を浮かべている。
それでいて、どこか同類じみたものを感じる。自分には兄がおり、双子には誰も居ないけれど。