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『雪の山荘』サウンドノベル風・羊視点3 ななす 2008/01/14(月)13:15

せっかくだから、パイを食おう。(※ 蟹の好感度が上がった!)
パイ生地で隠れて、中身はわからない。俺は度胸を決めてかぶりついた。……お? チリソース? ピリ辛で、おいし……
羊「……ぎぃああああ!! なんじゃこりゃあぁ!?」
蟹「ダメですか」
羊「からいー! からいからい、痛いー!! 水くれ、水!! 何入れたんだよ、これ!?」
蟹「青唐辛子を強めに利かせてみたんです」
羊「利かせすぎだっつの! あとからガァンと来るんだよ!!」
普段蟹が作る物はすげー美味いのに、時々こんな凶器ができあがるのはなぜだ……。
口直しとして蟹は、味噌と醤油の焼きおにぎりを用意してくれた。こっちは美味い、うん。焦げた醤油と味噌の風味、サイコー。
蟹「坊ちゃん。ご飯粒が付いてますよ」
羊「え?」
蟹「こっち側。子供の頃と変わりませんね。行儀が悪いって、いつも天秤坊ちゃんに注意されていたでしょう」
苦笑して蟹が手を伸ばし、俺の口元に付いた飯粒を取った。自分の口へ入れる。『米一粒に七人の神様がいるから粗末にするな』って言ったのは蟹だっけ、オヤジだったっけ?
満腹してキッチンを出ようとした俺を、蟹が呼び止めた。
蟹「試食のお礼です。飲み物に入れると、疲れが取れますよ」
ペットシュガーかと思ったら違った。ポリエチレンのスティック容器に入った蜂蜜だ。シャツの胸ポケットへ押し込み、俺はキッチンを出た。

(中略:全員が別荘へ集まったあと、猛吹雪で交通、通信が途絶。
夜になって、川田が庭の日時計に串刺しにされて死んでいるのが発見される。焼け残りのメモから、川田が誰かを恐喝していたことが判明。ある人物を疑った羊は……)

羊「この中に人殺しがいるんだぞ! 信用できるもんか、俺は部屋にこもる!!」
魚「兄さん!」
ごめん、魚。でも俺にはどうしても、こっそり確かめたいことがあるんだ。
俺は自分の部屋へ駆け込んで、ドアに鍵をかけた。
ブルゾンを着込んで窓を開ける。外はすげー吹雪だ。でも運動神経には自信がある。シーツを裂いて作ったロープを窓から垂らし、俺はそれを伝って外へ出た。
目当ては倉庫だ。ペンライト片手に、膝上まである雪を掻き分けて進む。こっちは屋敷の裏手だから、誰も俺に気づきゃしないだろう。
あの時見かけた人影。他の誰にも話せない。偶然かも知れないんだ。だけど、あれがもしも俺が考えたとおりなら、川田を殺したのは──。
羊「!?」
突然、足元の地面がなくなった。
何が起きたのかわからない。落ちていく。足に衝撃が来た。上から雪がどさどさ降ってくる。
羊「いってぇえ……なんだ、これ……」
ペンライトを拾って、あたりを見回した。土の壁? これって、まるで……。
羊「ここは……!!」
体温が下がった。
子供の頃に、夏休みにこの別荘へ来て一回落ちたから、知っている。戦争中に掘った塹壕か何かのあとだ。深くて、口が狭く奥が広がっているから、一度落ちたら登れない。危ないから板で蓋をしてあったのに、子供の俺はわざわざ剥がして、落っこちた。
でもなんで? 俺が落ちたあと、一層厳重に板で塞いだはずだ。
……雪と一緒に、穴の底に、薄っぺらいベニヤ板が落ちている。端が腐っていた。これは板が腐ったための不幸な偶然か、それともそう見せかけた罠なのか? いや、今はそんなことを考えている場合じゃない。
寒い。おまけに落ちた時、足首を捻ったみたいだ。
羊「おーい! 誰か来てくれ!! 誰かー!」
人に見つかったらやばいなんて言ってられない。このままじゃ死ぬ。
羊「助けてくれ、ここだーっ!! 聞こえないのか、おーい!!」
吹雪の音が俺の声を掻き消す。屋敷の窓はがっちり閉まってる。声が届くわけはない。
羊「助けて、くれよぉ……」
あの時は夏だったし、兄貴たちや魚がいた。
俺を助けようとして飛び降りてきた獅子ニィが、「大丈夫だ、大丈夫だ」って言って、俺をぎゅうってしてくれた。……俺も獅子ニィも泥だらけで、ちっとも大丈夫じゃなかったけど。天秤ニィは泣きじゃくる魚をなだめて、二人で大人を呼びに行ってくれた。
でも今は俺一人だ。寒い。寒い。なんで俺は、カイロの一つも持たずに外へ出たんだ?
羊「助けて……」

(※ 蟹にもらった蜂蜜か、蠍にもらったヨーグルトを持っていますか? 持っていない場合は、人生走馬燈状態から凍死ENDへ直行)