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2 :うーちゃんとさーちゃん・1:2008/06/06(金) 21:31:44 ID:ugFi2NQM0

うーちゃんの喉が声変わりを起こした頃、僕はうーちゃんから離れざるをえなくなった。

「あ、あ、あ」
クラスメートの羊の前で喉仏をさわりながら低い声を出すうーちゃんを僕は遠くから見つめている。
うーちゃんに話しかけるのは僕じゃなくて、隣の席になった羊の役目。
「何食ったらそんな図体でかくなるんだよ。牡牛」
「普通にいろいろ食べてる。考えたことない」
「毎日真剣に牛乳飲んでるのに伸びない俺の身にもなれよ」
僕らは高校一年の冬を迎えていた。うーちゃんは小学校時代からの僕の友達で、動きがとろかったから男子の中では結構いじめられていた。
僕はとろくても優しいうーちゃんが好きで、うーちゃんがしょげているとよく隣にいたものだ。
小学校三年のとき、クラスでサッカー大会があって、キーパーになったうーちゃんは敵のシュートを三回も捕り損ねて
その時クラスにいた獅子に面と向かって「馬鹿」って罵られたことがあった。
いじめられても滅多に泣かなかったうーちゃんが泣いたのはその試合が終わった後の夕方だった。
クラスのみんなが帰っちゃった後の校庭の隅で、段差に腰掛けて何かに耐えるように泣いていた。
──うーちゃん。
うーちゃんは横に座った僕に「さーちゃん」と言った。いつもの優しい声で。それから、ぐずって「勝てなくてごめんね」と言った。
僕はうーちゃんの悔しさがわかって何もいえなかった。
それから、試合が終わったあとに仲間に入れてもらえなかったうーちゃんの寂しさも。
だから、泣いてるうーちゃんの手に自分の手を重ねたんだ。
「いいよ、別に」
うーちゃんはもどかしそうに僕の手から自分の手を退けた。恥ずかしかったんだと思う。
うーちゃんに嫌がられた数少ない思い出を、僕はなんでか高校生になっても覚えていた。