17 :超能力SS:2008/06/30(月) 23:44:17 ID:o56+fdok0

 なにがなんだかわからない。
 俺はただ、いつものように、学校行って、授業寝て、弁当食って、クラブやって。
 クラブ終わって、チャリ置き場行ったら、チャリのタイヤがパンクしてたから、歩いて帰ろうと思って。
 近道して。山に入って。
 山ン中には川があって、川には橋があって、そこを渡れば家への近道なんだ。
 なんで、橋が燃えてるんだ?
 いやそれはいい。それはまだわかる。なんか橋に雷でも落ちたのかもしれない。今日は晴れてるけど。
 なんで橋の炎が、地面を走って、俺のほうに伸びてきて、俺を取り囲んでるんだ?
 煙がからい。咳き込みながら辺りに目をやる。
 河原に誰か立ってる。男だ。腕を組み、じっと俺を見据えてる。
 俺は男に向かって、助けてくれって言おうとして、やめた。
 男が笑ってるのが見えてからだ。
 キャンプファイヤーでも見てるみたいに、楽しそうに。俺がいま、その焚き火のマキになっちまおうとしていることを、喜んでるみたいに。
 俺が戸惑ってるとそいつは言った。
「そのままでは焼け死ぬが、どうする?」
 どうするって。どうすりゃいいんだよ!
 橋に放火したのはあいつか? でもって、たぶん河原に円形にガソリンでも撒いてあったのだろう。俺が罠にかかるのを待って、ライターかなんかで火をつけた……。
 変態か。人が焼けるサマを見たいのか。俺が苦しいのが嬉しいのか。
 ……腹が立った。
 苦しかったし、熱かったが、腹が立った。
 炎の輪が俺のほうに縮まってきて、火柱が俺に火の粉をふりかける中、俺は怖がりながら、怒っていた。
 やがて火の先が俺の制服を舐めた瞬間、俺の恐怖と怒りは爆発した。

最終更新:2008年12月07日 22:57