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俺は唾を飲み下し、頭の中で言葉をさがし、やっと、言った。
「なんで……」
 しかし男は俺の言葉を無視して、河原のある一箇所を指した。
 大岩があった。俺くらいのサイズの。
 男はそれを指したまま、淡々と言った。
「あれを使え。あれなら俺も避けられない。持ち上げてみろ」
「なんで。なんで? なんでだよ! なんでそんなこと言うんだよ! おまえ何モンだよ! これはいったいなんなんだよ!!」
「早くしろ。あと五秒で、俺はおまえを火ダルマにする」
 言いながら男は人差し指をたてた。その指先に、ロウソクみたいな小さな火が灯った。
 俺にはなぜか、男が、時間を急いでるみたいに見えた。
 男が二本目の指を立てるころには、俺はもう焦りだして、急いで大岩に意識を向けた。
 あれを持ち上げる? どうやって。そんなことが本当にできるのか?
 男が三本目の指を立てる。……これ、本当に現実か? 現実ならなんかの撮影じゃないのか。
 四本目の指。……違う。撮影じゃない。夢でもない。この火傷の痛みは本物。
俺は殺される。
 五本目の指。
 俺の中で怒りと恐怖が爆発する。ふざけんな。こんな夢か映画か意味不明の理由で死んでたまるか。
 視界の隅で、大岩が宙に浮いていた。
 男は俺を攻撃しなかった。なぜか指から火を消し、その手で自分の肩を抱いて、身を折っていた。
 その背中に大岩が飛んでいく。男のつぶされる様を想像して、俺は自分が人殺しになるのだと知った。
 ものすごい音が鳴った。地響きが足元を揺らした。
 俺は、人をあやめてしまった恐怖に硬直していた。
 しかし次の瞬間、俺は目を疑った。
 地面にめりこんだ大岩。その上に立つ、二人の男の姿があった。
 一人は、岩の下敷きになっているべきさっきの男。もう一人は……知らない男。