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 で、今登場した、頭がおかしくないほうの男が、ドアを指しながらこう言った。
「ではお医者さんにご褒美です。台所に、僕の作ったカップケーキがあるから、行って食べてきましょう」
「はぁい。やったあ。ぼく蟹のおかしだいすき」
 魚は椅子から跳ねるように下りると、ばたばたと部屋を駆け出て行った。
 残されたほうは(蟹というのか?)、魚の背中を見送ったあと、はあっと息をついた。
「わりと知能が残されてるってことは、きみのそれは、そう複雑な制限でもなかったんだ。たぶん単純な疲労だよ」
 また出たぞ。意味不明のセリフ。
 うんざりしている俺に蟹は微笑みかける。
「良かったね。ただの疲労なら、魚が完璧に治してくれたと思うから」
「お医者さんには見えなかったぜ……」
「だけど魚の能力はお医者さんよりも凄い。そのかわりに、ああいう制限が出てしまうわけだけど」
「制限ってなんだよ」
 俺は単純に聞いただけなんだが、蟹は目を丸くしていた。
「獅子はきみに何も説明しなかったのか?」
「いきなり燃やされた」
「ええっ!?」
「あいつ、俺をいきなり燃やして、すっごく嬉しそうだった」
 蟹はぐったりとして、ベッドのふちに手を置きつつ、言った。
「その……、彼は悪い人じゃないんだよ。あれでも普通の人間なんだ。火を使えるってだけで」
「普通の人間は、いきなり俺を燃やさねえだろ」
「ううん、そうなんだけど、彼はあの能力と引き換えに、「痛み」という制限を持ってる」
 だから制限ってなんだ。何回も聞いた言葉だ。
 俺は黙って、蟹の言葉の続きを待った。
 蟹はうなずいて、説明を始めた。