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 双子はニヤニヤしながら、俺の顔に顔を近づけてきた。
「信用できないなら証明してやるよ。ちょうど近い未来を読んできたところだ。もうすぐこの居間に、一人の男が入ってくる」
 低くささやくような声。楽しそうな、愉快そうな、けどなんか……不謹慎な感じのする響き。
 俺は眉をしかめたが、双子は面白がるような目つきのままだった。
「その男の名前は天秤。いままで戦ってた。天秤は勝ってる。天秤のからだには傷ひとつ無ぇけど、相手は血まみれ」
「……」
「天秤はいま、家の前に居る。表情は険しい。だけどつくり笑顔をこしらえて、なんてことのない様子を取り戻そうとしてる。そして決意して歩き出す。いま帰ってきた。
部屋に入ってきた。おかえり天秤」
 双子は下を見た。つられて俺も下を見た。
 俺の、足と足のあいだの床から、手が生えていた。
 俺は絶叫しつつ椅子ごとひっくり返った。
 外せない視線の先で、手は床をさぐり、手のひらをつくと、プールからあがるみたいに、ずるっと体を持ち上げた。
 そして俺の前には、降ってわいたように……というか上がってわいたように、全裸の男が立ったのだった。
 双子がゲラゲラ笑っていた。
「劇的な登場になっちまったなあ。残念。誰にも見られずに部屋には帰れないぜ」
 天秤とかいうらしいやつは、一瞬、険しい顔を見せて、すぐに綺麗にほほえんだ。
「そうみたいだね。困った。双子、誰かに告げ口するかい?」
「しねえよ。する必要がないから。もうすぐ水瓶も来るし」
「ああ、彼なら大丈夫かな。蟹や乙女あたりに見られたら怒られるところだった。……ところできみ大丈夫?」
 いやそんな、そんな格好で、親しげな笑みを投げかけられても。
 ……やっぱり俺の名前は知ってるんだろうな。
 自己紹介を省略して、俺は尋ねた。
「床から生えるのがあんたの能力か?」
「いや、地面の下を移動して来たんだよ。こんな格好だし」
「マッパにならないと潜れねぇの?」
「うん。これがぼくの能力であると同時に、制限。……ああ、水瓶が来たね」