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 ……そのとき俺の脳裏に、ある光景が浮かび上がった。
 ガキのころ。暑い夏の昼下がり。公園。ベンチに腰かけてアイス食ってる兄ちゃん。
「僕はこの双子や天秤と違って、誘惑のための交渉というやつが苦手で……」
 兄ちゃんが羨ましかった。なにせ暑かった。それに、うすいビスケットにアイスを挟んだそれは、高級品だった。
「成人女子にキスをねだるのは問題だが、まあ子供だし、男の子だから良いかと。そしてふだん魚を見ているから、子供にはおやつが……」
 ――にーちゃんいいな。それうまそうだな。
 ――いいよ、あげるよ。……ぼくが口にくわえてるやつなら。
 俺はコノヤローとわめきつつ水瓶に殴りかかった。俺にはその権利があった。俺の人生最初のキスは、文字通り大人の都合で奪われていたわけだ。俺には怒る権利があった。周囲の家具も俺に答えてくれた。
 舞い飛ぶ家具の中を、天秤がすいすいと移動していくのが見えた。双子が部屋のすみでゲラ笑いしてた。

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