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 そしてその瞳のまま、乙女は黙った。
 俺がなにかを問おうとする直前、乙女は、語りだした。
「指と、引き金。ああ近すぎるな。……金色の、銃。綺麗な装飾だ。宝石が埋め込ま
れている。……長い腕。黒い上着。学生服かこれは?……学生服を着た男が、腕に銃
を持っている。銃を持って、空を背景に立っている……」
「それ、敵のことか?」
「看板。看板がある。ぎらぎらとしたネオンが光っている。……ネオンサインの横に
男。空の見える屋上のような場所に、男が立って、銃を握っている……」
 これが乙女の能力か。なんかこう、距離を変えつつ、ばちっと何かが見られる力、
というのか。
 俺は車の周囲を見渡した。このへんはもう駅に近いから、建物は色々と立っている。
 しかしネオンサインのある建物なんて無い。あたりまえだ。まだ昼なんだからネオ
ンの必要が無いのだ。
 待て待て待て。俺はこのへんには詳しい。あるだろ、そういった建物。
 また銃が鳴る。思考が乱れる。ちくしょう考えろ。なんで見えない? ネオンサイ
ンのある建物が……
 見えないってことは、目に見えるところには無いってことだ。
 ということは、見えないところにある。俺の背中。車の反対側はたしか、パチンコ
屋の壁。
「わかったぜ乙女。待ってろ、倒してくる」
「ああ。行け」
 俺は息を吸い、吐いた。
 次の銃声が鳴るのを待ってから、走り出した。
 パチンコ屋に飛び込む。年齢がアウトだが仕方がねー。
 通路を走る。客の積んでいる箱のいっこに蹴つまづいて転んだ。ざらざら飛び散る
パチンコ玉。邪魔だよクソ! 俺は店員の一人の胸蔵つかまえて屋上への道を聞く。
返事を聞くと同時に裏口へダッシュ。出口のそばに非常階段。駆け上がる。駆け上が
る。屋上にたどり着く。
 空の見える屋上の、ネオンサインの横に、男が立って、銃を握っていた。