※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

 俺は黙った。そのあと、大声を出した。
「その手があったか!」
「弾丸のすべてを停止させて、正面から殴りに行ったそうだな」
「うん」
「馬鹿にも程がある」
 返す言葉もねえ。
 みんなの哀れみに満ちた視線の中で、ゆいいつ暖かかったのが射手の視線だった。
 射手は言った。
「面白いなぁおまえ」
 なにがだ。なにが。
 射手は面白がる目をしたまま、ひょいっと顔を捕虜のほうに向けた。
「おまえを自由にしたら、乙女を殺すか?」
 ぞっとするほどストレートな質問だ。
 しかしそいつは黙るかわりに、初めて言葉を発した。
「あたりまえだろう」
「おまえ名前は」
「牡牛」
「俺ら、おまえをどうすればいいんだろ」
「殺せばいいんじゃないか?」
 ぎょっとするほどストレートな答え。
 牡牛は低い声で、淡々と言葉を続けた。
「乙女というやつを殺さなければ、俺の母親が死ぬ。俺を殺さなければ、乙女というやつが死ぬ。誰かが死ななきゃならん。俺はもう決めてある。あんたらはあんたらで選べばいいだろう」
 ごくごく単純な図を描いてみせやがった。単純で頑丈な図。壊すのが難しいほど、しっかりと出来てる。
 水瓶が唸った。
「歴史に干渉するのは主義に反するが、すべてをひっくり返すことは出来る」
 そりゃそうだ。水瓶の力は最弱で最強だ。あらかじめ牡牛の親に警告しに行って、歴史を変えちまえばいいんだ。
 蠍が言った。
「乙女を守ることだけなら出来る。この牡牛に、乙女を忘れてもらえばいい」
 ああ、催眠で、乙女に関する記憶を消しちまうのか。その手もあるか。