蟹は獅子のほうを振り向く。きくまでもなく、蟹自身も同じ内容の短冊を書いて吊るした。
獅子は照れてそっぽをむきながら、しかめっ面で小さく鼻先を掻いていた。
「獅子。俺が今日一日どれだけお前のことを好きだったか、もう一回話してもいい?」
「どうぞどうぞ」
「できればお前の隣で」
「ああどうぞどうぞ」
あしらうふりをして玄関に座る獅子の肩が、ほっと緩むのが見えた。隣に座って一緒に
廊下の七夕飾りを鑑賞する。何から話しはじめようかと蟹が幸せな顔で黙っていると、
横から顔が迫ってきて獅子とキスする形になった。
「今日はもうちょっと先へ行こうか」
「お前の話を聞いてからな」
二人で苦笑して、軒先で手をつなぐ。
一日怖かったことも哀しかったことも、全部埋めてもらえるとわかって蟹は幸せだった。
おしまい
書きながらの長文投下で失礼しました。ありがとうございました!
最終更新:2008年08月16日 20:36