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「おい泣くなって」
 いつの間にか隣に座っていた牡羊が、うろたえながら俺の頭にそっと手を置いた。
照れているのか、足の指をもぞもぞと動かしている。
 ふう、と大きく息をついて呼吸を整えると、俺はその水色のカードを手にとってじっくりと見つめた。
「あの時以来さ、カードとか渡したことなかったじゃん。
最近あんまり会えてないから、たまにはいいかなって」
 そう言って優しく笑った牡羊は、俺の肩に頭をあずけてきた。
牡羊が、覚えているわけがない。
あの時のあのカードに何が書かれていたかなんて、何度も読み返した俺しか覚えていないはずだ。
それなのに…。
「俺の、今の気持ちってやつ?すっげえ悩んで書いたわりに普通になっちゃったけど」
 早口に言葉を紡ぐ牡羊の頭に自分の頭を寄せて、俺はそっと目を閉じる。
まぶたの奥で、今手にしているカードと、
一字一句同じ文章がひらがなで書かれたカードが重なった。
「ありがとう牡羊。すごく嬉しい」
 あの頃とちっとも変わらない、でも、少しだけ大人になった牡羊に、俺はもう
一度恋をした。


『誕生日おめでとう 
これからもずっと一緒にいてください
大好きな蟹へ  牡羊』

おわり