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 射手は欠落していると誰かが言ったらしい。
 欠落の意味はわからない。けどなんとなく、ぼんやりとした意味が、感じられるよ
うな気がした。
「止まった心臓は魚が動かしたの?」
「いや、俺が痛みを気力でねじ伏せて、人口呼吸と心臓マッサージで動かした」
「よく復活したなあ。あぶねぇ」
「ああ危ない。あのとき思ったんだ。射手の欠落というやつを埋められる人間が必要
だと」
「どういうやつ?」
「わからん。だか俺でないことは確かだ。だから、おまえかもしれない」
 俺?
 それは……違うんじゃないか?
「俺どっちかというと、あんたがピンチだったら、射手と似たような行動取ると思う
ぞ」
 死んでも助けなきゃならねぇヤツだったら、死んだって助けるだろ普通。
 獅子は、眉をしかめた。
「大きな世話だ。あのときは特別だ。おまえに助けられる俺じゃない」
「うるせー。ぜったい助けるぞ。助けられたくなかったら、助けられたくなくなって
みろ」
 ビールひとくちで酔ったらしく、自分でも、なに言ってんだか分からなくなってき
てたんだが、獅子はなぜか、照れたみたいに焦りつつ「黙れ」と言った。
 俺はさらに何か言いかけ、別のことを思い出した。
「射手、いつまで泳いでるんだ」
 はっと獅子が顔をあげる。
 瞬時に俺も悟る。海に飛んだ射手。まさか心臓が。
 立ち上がった俺たちの背後、海と反対側にある木立の方で、がさがさと音がした。
 振り返ると、木立の茂みに射手が立ってた。片手を麻痺でぶらぶらさせて、片手に
コンビニの袋を持って。
「アイス買ってきた。食うだろ?」