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「よー牡羊。どうした、こんなところで」
「先輩こそどうしたんすか。今日はクラブは?」
「部員のほとんどが腹痛で倒れてな。休みになった」
 大丈夫かよ! 試合はあさってだぞ!?
 俺がそのことを尋ねると、先輩は暗い顔になった。
「まあ負けるだろうなあ。向こうの野球部、強ぇしなあ」
「弱気っすね」
「おまえ助っ人で試合出ねぇ? おまえが居りゃ勝てると思うんだが」
「あー……、無理っす」
「なんで」
 俺は嘘ってやつが苦手だし嫌いだ。けど今は嘘をつかなきゃならない。
「よ、用事があって」
「そもそもおまえ、なんでクラブ辞めたんだよ。期待してたのに」
 つらい。俺だって辞めたくなかったんだ。けどそれは言えない。
「なんか俺、病気らしくって。野球やめなきゃ死ぬらしいんで」
「どんな病気だそりゃ。どう見たって元気じゃねえかおまえ」
「いやもう駄目です。毎日ボロボロです。あちこち怪我してるし」
 それは本当のことなんだが、先輩は変な顔をした。
「俺は戻るべきだと思うけどな」
 ああ辛ぇ。俺は黙って頭をぶんぶん横に振った。必死だった。
 先輩はバットをかつぐと、あご先で例の大岩を指した。
「ところで話は変わるけど、あの岩、あんなところにあったっけ?」
 違います。俺が動かしたんです。
「なんかサイズも変わってるよな。縮んでる」
 特訓してるうちに欠けちまったんです。
「橋も燃えちまったし、なんか変だよな、ここ」
 そりゃ獅子って名前の馬鹿が燃やしたんです。
 駄目だ心臓に悪い。今日はもう帰るべきか。どのみちこの人が居たんじゃ特訓でき
ない。
 俺が帰宅することをつげると、先輩は俺を止めた。
「帰る前にちょっと手伝ってくれ。ボールを捜してるんだ。さっきフォームの練習し
てて落とした」