足に激痛が走った。見ると、太ももに釘が刺さっていた。
抜いて投げ捨てた。その腕に、ぐさりと釘が刺さった。
蜂にまとわりつかれるみたいに、俺は次々に釘に刺された。
きりがねえ。俺は視線をめぐらせる。目についた障害物を次々と除けていく。燃え
残りの橋の残骸を吹き飛ばし、河原の流木をへし折り、あの大岩まで持ち上げて、カ
ジキをさがした。
そうこうするうちに、息が苦しくなった。
俺は両手でのどをかばった。しかし意味が無かった。目に見えない力は俺の手ごと、
喉に圧迫をくわえている。
とことん窒息目当てらしい。卑怯なやつだ。どこだ。どこに隠れた?
河原のあらゆるものを除け終え、俺はやっと悟った。
今出てきた水の中、か。
のろのろと頭をまわす。カジキが川から上がってくるところだった。
喉の拘束がゆるんだ。俺は息を吸い、吐いて、そのまま倒れた。
制限による疲労だけじゃないせいで、意識はまだハッキリとしている。
カジキが上から俺の顔をのぞきこんでいる。むかつく笑顔をさらす。
「牡羊。すげえな。やっぱすげえわ。サイコキネシスっていうのか?」
そして両手を開いて、俺に見せつける。
「俺のはテレキネシスだ。なんでも掴めるんだよ。だけどおまえの力のほうが断然す
げえわな。パワーが違う」
制限は無いんだろうか。
俺の思いを読んだらしく、カジキはうなずいた。
「おまえみたく、動けなくなるほど疲労したりはしねえよ。だがしばらくは、両手の
感覚がにぶくなる。ものに触った感触とかが、よくわからなくなるんだ」
その程度か。うらやましい。俺はぜんぜん動けねえ。
息をするだけの存在になった俺に、カジキは満足そうだった。
「なあ牡羊。クラブに戻る気ねえの?」
しつこいぞ。
「いやか。じゃあクラブじゃなくて、別のところに行かないか。川田んところ」
やっぱそっちか。
疲労のきわみにあった俺は、最後の力を振り絞って、片手を持ち上げた。でもって
中指を立てた。
これですべての体力はゼロだ。ちくしょう。短かったな俺の人生。
最終更新:2008年08月23日 19:42