※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

 魚が溜息をついて言う。
「愛情を屈折させる必要なんて無いんだ。きみの行動は間違っている。いますぐ牡羊
を返してくれないか。でないと」
 カジキは無言で手を振る。魚の肩の釘が、さらに深く刺さる。
 魚はただ、悲しそうな顔をした。
 俺は自分の状態をさぐった。俺の力は残ってるか? 少しでいい。ほんの少しでい
いから、魚を助けるための力を。
 魚は歩き出す。俺に手をさしのべて。その手のひらに釘が刺さる。
 俺は意識を集中する。しかし駄目だった。力が発動する感覚がわいてこない。
 魚はカジキを通り過ぎ、俺のそばにたどりついた。身をかがめ、俺を抱いてくる。
「大丈夫だよ。もう大丈夫だから」
 優しい声に安堵しそうになるのを、俺は必死でこらえた。言わなきゃならないこと
がある。
「使うな。力を」
 子供に戻っちまったら逃げられなくなる。
 魚は微笑んだ。
「うん。だから、少し待っててね。すぐに倒してくる」
 言いながら魚は肩の釘を抜いた。
 抜けたあとの釘の先に、血は一滴もついておらず、魚の肩には傷ひとつ無かった。
 そして魚は立ち上がりながらくるりと振り返り、持っていた釘を、すぐ背後に居た、
カジキの胸に押し込んだのだった。
 なにか能力をふるおうとしていたらしいカジキは、驚いている。
 カジキが手をにぎりしめる。魚の顔に引っかき傷が走る。しかしその傷はすぐに消
えて、魚はもとどおりの綺麗な顔になった。
 魚は自分の手のひらをあげて、カジキに見せつけた。
 魚の手のひらに刺さっていた釘が、自然に押し出されて、落ちた。そのあとの魚の
手のひらには、やはり傷ひとつ無い。
 カジキの目に恐怖の色が浮かぶ。いまこいつは悟ったのだ。こいつがどんな攻撃を
しても、魚には効かないのだと。
 俺は考えていた。乙女の言っていた通り、俺には冷静な判断力が足りなかった。な
にを選び、どう動かすかを、素早く判断できるようにならなきゃならなかった。