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 俺は襲われた。俺は危機に陥った。俺は魚に救われた。俺は殺した。
 さすがに犯されかけたことは省略したけど、まあ大切なことはすべて話したと思う。
 あとは周りにまかせて、俺はおもいきり気絶した。
 眠って、眠って、目覚めたら二日経ってて、俺は盛大な空腹をかかえていた。
 台所に駆け下りた。
「蟹! メシ!」
 台所に居た蟹はぽかんとしていたが、あわてて俺に駆け寄ってくると、俺の両肩を
掴んだ。
「大丈夫なのか牡羊! もうダメージは残ってない?」
「大丈夫じゃねえよ最悪だよ腹が減って死ぬ! 蟹メシくれ!」
 蟹が腕まくりして冷蔵庫に向かうのを見てから、俺は箸をつかんでロビーに行き、
テーブルについた。
 テーブルには蠍も居て、コーヒーを飲んでいた。俺を見もせずに言った。
「カラ元気だな」
 ぐさっと来た。
 俺はテーブルに体を投げ出し、頬をクロスにくっつけて、白い布地に箸でうずまき
線を描いた。
「なにも考えたくねえ……」
「無理だろう」
「魚、どうしてる」
「10代まで戻った。いま水瓶と遊びに行ってる」
「河原は」
「死体が消えた。たぶん敵の仲間が処理した」
「俺、先輩を殺しちまった」
「苦しいなら記憶を消してやるが?」
 俺は断った。それは、しちゃいけないことだと思うんだ。なんとなく。
 蟹が色々運んできた。おにぎりと、焼き鮭と、味噌汁と、漬物だった。
 行儀悪くむさぼる俺を蟹は怒らなかった。俺の正面に腰かけ、俺の食事をじっと見
守っている。
 やがて食い終えた俺に、蟹は言った。
「あのね牡羊。きみはなにも悪くないよ」