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 俺は蟹を見た。
 蟹は、きっぱりと言い切った。
「きみは悪くない。僕にはわかっている。きみは短気で乱暴なところもあるけど、根
は優しいし真面目だし、正義感にあふれている。そんなきみが命を奪うほどのことを
した。たぶん説明してくれた以上に、ひどい目にあったんだろう。可哀想に」
 蟹にはかなわない。俺は涙目になった。
「ああするしかなかったんだ」
「わかっているさ。きみはなにも悪くない。僕はきみの味方だ」
 本気で泣きそうになったので、あわててお茶を飲んだ。両手をあわせてごちそうさ
まを言う。
「ちょっと出かけてくる」
「えっ。どこへ行くの?」
「特訓」
 俺はやっぱり強くならなきゃならねー。あんな目にあわずに済むように。魚を泣か
せずに済むように。
 蟹が俺を止めた。
「無茶だよ! もう少し休まなきゃ。魚の力は肉体を癒すけれど、精神には作用しな
いんだから」
「大丈夫だって。おれ馬鹿だし。心も馬鹿だからもう治ってるよ」
 本当は、体を動かして忘れたいと思ったのだ。いろんな思いを。
 だから蟹の手を振り切って、強引に外に走り出ようとした。
 蠍が言った。
「止まれ」
 俺は止まらなきゃならない。何があっても止まらなきゃならない。止まるぞ!
 くっそー、分かってるのに歩けない。