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 俺は激しく食いながら、疑問に思っていたことを尋ねた。
「あんた仕事なにしてんの? けっこう金持ってるみたいだけど」
「なんだと思う?」
「俺が聞いてんだよ」
「ちょっと言いにくい職業なんだ。まあ、肉体労働かな」
 意外だ。ツルハシで穴でも掘ってるんだろうか。
 俺は野菜類には目もくれず、ひたすら肉を食い続けた。
 やっと腹が満足したので、デザートでも食おうかな、と思ったところで、事件が起
こった。
 俺らは四人がけのテーブルに二人で座っていたのだが、俺の横の椅子と、天秤の横
の椅子に、とつぜん、二人の男が座ったのだ。
 二人とも手に皿を持っていて、そこにはケーキがぽつんと一個乗ってた。明らかに
食う気が無いような皿の様子だった。
 天秤の横に座った、やたらと尖ったかんじの男が、天秤にこう言った。
「やっと見つけたぜ、天秤」
 それから、俺のとなりの真面目そうな男が、天秤にこう言った。
「もう逃げられないぞ、天秤」
 敵か? のわりには、天秤の様子は落ち着いていた。ゆっくりと紅茶をすすり、に
こやかに二人に笑みかける。
「ひさしぶりだね三角、レチクル」
「今までのことは問わねえ。戻って来い。川田さんも待ってる」
 天秤はむかし、川田の仲間だったんだよな。
 ひょっとして今、俺ら、ものすげえピンチなのかもしれない。
 だけど天秤があまりにもおだやかなんで、俺もなんかボーっとしてた。
 天秤は、散歩をねだって興奮してる犬に、マテを命じるみたいな口調で言った。
「食事中なんだ。そういう話はよしてくれ」
 三角とレチクルはしかし、天秤とは反対の様子で、急いでるみたいに交互に喋りだ
した。
「どこだろうと、なにをしている最中だろうと同じじゃねぇか」
「おまえはすぐに逃げるからな。だからさっさと話しておく。戻れ。タダでとは言わ
ない」