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 首を絞められたレチクルは、ピンで留められた虫みたいにもがく。
 じたばたした動き。痙攣。やがて停止。
 どさりと落ちたレチクルを見ながら、俺はいやな感じを味わっていた。
 どうも、慣れない。仕方の無いことだとわかってはいても。
 壁に生えていた腕は、そのまますうっと一階まで移動した。
 そして壁から抜け出てきた裸の天秤に、俺は尋ねた。
「ここまでやる必要あんのかな。俺らどう見ても楽勝だったじゃん」
 三角はすでに気絶している。天秤は三角に向かってかがみこみ、ただ、手を振った。
 天秤の手の先が三角の頭部をすり抜けた。同時に三角は頭の中をつぶされた。鼻か
ら血を垂らしつつ三角は死んだ。
 俺はまた尋ねた。
「たとえば牡牛のときみたいに、生かして連れて帰って、いろいろ聞き出すとかでき
たんじゃねえの?」
 天秤は手をぬぐっている。死体の服で。
 俺は尋ねた。叫ぶみたいな声で。
「あんたら、仲間だったんじゃねえのかよ!?」
 天秤ははじめて、強い表情を見せた。きっと俺を睨んだのだ。
 すぐにその表情は消えた。おだやかな、優しい顔で天秤は言った。
「きみは変わってるね。きみを殺そうとした男たちを、なぜ気づかうんだい」
「そうじゃねえ。俺が大事なのはこいつらじゃねえ。あんただ」
 天秤は、ちょっと驚いたみたいだった。
「……それは嬉しいな。だったらもっと、僕の判断を信用してくれ」
 あっさりした口調で言いながら天秤は、俺の荷物を開けていた。シャツを取り出し
て着込みだす。
「この二人はね、今ぼくが彼らにしたような事を、何人もの人間に対してやってきた
んだ。そしてその行為が今後は、僕らの家族に対してもなされる。そんなことになる
くらいだったら、僕は何度でもこいつらを、こうする。何度でも」
「昔の仲間でもか?」
「昔の仲間だからこそさ。僕は今の仲間を気に入っている。今の生活がとても好きだ。
昔のことなんか、思い出したくもなくなるくらいに」