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続き あんまり御題に沿えて無くてすいません 前スレ950ですが 2006/04/16(日)14:53

   汗?
気付いた途端、見計らったかのように、勢いよく手が振り解かれた。
あ。
ぽっかりと何処かに穴が空いて、空気が抜けてしまったかのような錯覚に陥る。寂しい。
その言葉が頭に過ぎり、一瞬で別の感情に取って代わられる。
恥ずかしい。
今、自分は何をしたのだろうか。手を、握った気がする。そんなこと。
駄目だ、絶対に。押さえ切らなくてはいけない。
この手を、この体を、この人間を。自分だけの物にしたかったなんて、そんな。烏滸がましいにも程がある。
獅子は、自分とは違う。こんなにも眩しい人を、堕として汚して愛情という鎖で縛ってはいけない。恨みと妬みと嫉みと曲がった欲望で溢れそうな、どろどろとした底のない膿に引きずり込んではいけない。
話すことも触れることも、同じ空間を共有することでさえ、罪の意識に苛まれるのに。どうしてそれ以上を望もうとするのだろう。

目を瞑った。何も見えないように、何も感じないように。
横で獅子が動くのが解る。出て行くのだろうか、そうであって欲しい。そうであって欲しいのに何故、頬に掌の温もりを感じたのだろう。優しく、頭を撫でられているのだろう。
髪の中に指が差し込まれ、項へと下っていく。産毛が指に巻き取られる。
肌が粟立つ。
先ほどの自分と同じような、弱々しく少しでも抵抗したら止められそうな行為。
何がしたいのだろう何でこんな事をするのだろう止めて欲しいいや自分が動けばいいのだ少しでも拒否の意志を示せばすぐに終わるのに動けない。
頭の奥がじんじんと痺れるように、熱い。左側が暑い右側が温かい真ん中が、焼き切れそうに、あつい。
指先が閉じた目の上に降りてくる。瞼を掠め、睫毛が弄ばれる。幽かな震えを愉しむかのように、目尻から目頭へ。
どうか、そのまま降りてきて。触れて欲しいこの言葉を無くした唇に。

躊躇うような、数秒の間。しかしそれは、この雰囲気を壊すには充分すぎるほどの時間だった。
驚くほど大きな音をさせて、獅子が立ち上がる。その勢いで倒された椅子が、転がり足に当たった。獅子の気配がどんどん遠ざかり、ぴしゃりと乱暴に戸が閉められる音で、完全に解らなくなった。
目を開ける。誰も居ない。転がる椅子。そろえた書類の山を机から払い落として、箍が外れたかのように泣き出しそうな声で嗤う自分。
なんて。

夕日の赤の、最後の一筋が消えていく。辺りが夜の帳に包まれる。
「俺は、馬鹿だ。」
呟いた言葉が、戸の向こう側でにもたれ掛かり、蹲る男と同じ物とは。
その時は、気付くこともなかった。


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この後、何も知らずにプリント抱えて戻ってきた牡羊が、大変気まずい思いをします、多分。

何処か別にページ作って、アドレス貼った方が良かった気も…。