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 すげえを連発する俺に牡牛は言った。
「もうここは、俺の家じゃない」
「売っちまったの? もったいねーな」
「あまり好きじゃないんだ、この家。幽霊が出るから」
 山羊は建築関係の仕事をしてるので、この家が面白いらしくって、あちこちに視線
を飛ばしていた。
 その視線をすっと牡牛に向けた。
「その話は、買い主も知っているのか?」
 牡牛はうなずく。
「知ってる。だから、安く買い叩かれた」
 山羊は、なにかが気に入らなさそうな、納得できないような顔をしていた。
 俺のほうは普通に、嫌だなあと思っていた。
 だって幽霊って、サイコキネシスのプロだよな? 物を飛ばしたり壊したりする。
勝てるのかよ。
 牡牛は、俺らの放つ雰囲気に戸惑っていた。
「俺も非科学的だとは思うけど、そういう話が出るだけの理由があるし……、そうい
う話がある以上は、売り値が下がっても仕方が無いと思うんだが」
 山羊はなんか、切なそうだった。
「仕方が無い? それは違う。それは申し訳ないが傲慢な意見だと思う。この家には
設計者の技術と、信念と、経た年月の重みが刻まれている。安く扱って良いものじゃ
ない。それは作り主に失礼だ」
 俺は真っ当な意見を言った。
「こえーからさっさと帰ろうぜ」
 牡牛は俺の意見に賛成し、部屋に案内してくれた。
 ただ牡牛は、自分の好きなものは、あらかたすでに、新しい家に取り寄せていた。
 だから運ぶのは、牡牛にとってどうでもいいものばかりだった。勉強机とか、古い
パソコンとか、そんなもんだ。
 そういうデカいものは俺が能力で運び、細かいものは山羊がダンボールに詰めて、
作業は意外とあっさり終わった。
 最後に牡牛が言った。
「実は、持って行こうかどうか、迷っているものがあるんだ」