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 牡牛の先祖は武士だった。たくさんの武功をたてて、褒美として、殿様に、この刀
を貰ったんだそうだ。
 しかしその刀は、敵の武将の遺品でもあった。
 刀は血を求め、牡牛の先祖にとり付き、牡牛の先祖を狂わせた。
「先祖はある日、この刀を持って、家中の人間を惨殺したのだという。それ以来、俺
の一族に武士はいなくなった。みな農民として暮らした。そうすると刀は一族を呪わ
なくなった」
 じゃあこの刀は、いま現在は、別に呪いグッズでもないわけだ。
 俺がそう言うと、牡牛はうなずいた。
「今は武士の居ない世の中だし、刀が価値のある品物だということは間違いない。だ
から鑑定はいらない」
 しかし、山羊が言った。
「牡牛がこれから、一度も戦わないということは、あり得るんだろうか」
 俺らは黙った。
 武士ってのは、殿様のために戦う人だ。
 うちには別に殿様はいねえけど、俺、戦いなら何度かやってる。
 もしも牡牛が襲われたら、俺は牡牛のために戦うだろうし、牡牛だって自分のため
に戦うだろう。
 実際に牡牛は、俺といちど戦ってるんだ。脅されての戦いだったけど。
 俺は山羊に言った。
「読むか?」
 山羊は頷いた。
 そういうわけで、山羊はまた、呪いグッズの鑑定に、これも文字通り手を出したの
だった。
 俺はといえば、怖さに対抗する気持ちと、ちょっとした好奇心とで、胸を熱くして
いた。
 今度の言い伝えには期待して良いんだろうか。本物の凄さを。
 山羊の沈黙は長かった。刀が生きてきた長い年月のせいだろうか。
 やがて語り出した。
「これは凄いな。侍が見える。大きな部屋に侍が立っている。侍の前には、大勢の使
用人たちが平伏している」
 山羊の脳内の大河ドラマを想像しつつ、俺はおおっと声をあげた。本物だ。