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「にょろ?」
「なんか黒くてにょろにょろしたやつだ。他にも進化系とか違う生態系のやつが何種類か
いるのを確認してる。そういうのを捕まえて学会に発表すると、その生物には発表者が好き
な名前をつけることができる」
 山羊の身体が固まる。水瓶は山羊がこちらを見返す視線を見るなり「君も見たか」と語調を
熱くした。
「あれ、にょろって言うんですか!」
「仮の名前だ。学会に発表するときは『ニョローリ・ニョロリーネ・ミズガメウス』という
学名で命名しようかと思っている」
 感心の声をあげながらすいかを握る山羊に水瓶は得意そうな顔で満足げにうなずいた。
それから流暢な台詞回しで
「だから君、そのすいかの代金だと思ってちょっと店番をしていてくれたまえ。簡単なアル
バイトだ。僕は少しの間そこの森に入ってフィールドワークしてくるからね」
 と繋げ、反応に困っている山羊を置いてさっさと森の中に入っていった。。山羊は結局
そこで三十分ほど椅子に座って店番をし、途中で買い物をしにきた観光客に桃を一パック
勝手に売った。
 フィールドワークから戻ってきた水瓶は特に収穫もなかったようで、研究には労力がかかる
と肩をすくめていた。山羊もこれ以上他のルートを開拓するには足がくたびれている。しば
らくトラックの陰に座って一緒に店番をした。乙女以外で初めての話し相手ができて嬉し
かったというのもあるかもしれない。
 水瓶いわく、神社に一番近いところにあるそば屋の店主が「蟹(常連とよく話してる)」、
少し遠くにある一番有名なそば屋の店主が「牡牛(忙しいらしく顔は見られなかった)」、
蟹のそば屋の近くにあるおみやげ屋の店主が「天秤(笑うと目が恵比寿さまっぽい)」、
そのまた近くにある竹細工屋の主人が「魚(暇そう)」という名前らしい。
「みんな僕より年上だ。君みたいな子供がしばらくいるってわかったら、みんな喜ぶと思うよ」
「僕と同じくらいの子供はいないの?」
「僕の知る限りではいないな。小学生がいるような家はみんな星座市の近くの町まで引っ越
してしまった。この辺は小学校自体がないんだ」